いい話ほどあぶない ~消えた赤報隊 を読んで | またしちのブログ

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幕末史などつれづれに…

赤報隊といえば「年貢半減令を触れ回ったために、半減令を実現出来なくなった新政府に抹殺された」というイメージが強い、というよりむしろ固定していると言って良いと思います。

ところが、赤報隊について書かれた書物の代表格と言える『相楽総三とその同志』(長谷川伸。昭和15年)には、赤報隊が偽官軍として抹殺された事は描かれていても、その理由として年貢半減令を結びつける事はしていません。

これはちょっと意外でした。では「年貢半減令の為に抹殺された」とする説の出どころは何か、と考えましたが、そもそも赤報隊について書かれた本は限られており、すぐに予想がつきました。それは野口達二の著『いい話ほどあぶない ~消えた赤報隊』(昭和49年)です。

(↓モザイク部分は地元図書館のシールです。)

赤報隊

先日、地元の図書館で借りてきて読んでみました。赤報隊について書かれている有名な書籍というのは、正直言って『相楽総三とその同志』と、この『いい話ほどあぶない』のふたつしかないと言って良いと思われます。


まあ、北方謙三の『草莽枯れ行く』もありますが、あれは……。また、今度ご紹介します(;^_^A


さて、この『いい話ほどあぶない』は「日本史の目」というシリーズの中の1冊で、全国学校図書館協議会及び日本図書館協会の選定図書だった(現在もそうなのかは不明)ようで、僕も小学校の頃だったか、図書館でこの本を見た覚えがあります。

当時は「消えた赤報隊」というサブタイトルに惹かれて手に取りかけましたが、何か他に読みたい本があったのか、結局借りずじまい、読まずじまいでした。約40年目の再会、という事になるでしょうか。


学校図書という事もあり、子供向けのわかりやすく読みやすい内容で、スラスラと読む事が出来ましたが、結果は “ビンゴ” 。まさにこの本が「年貢半減令のせいで抹殺」説の出どころだったようです。


この作品のストーリーの骨子は「抑圧された農民の姿と、四民平等の思想から農民を助け、共に立ち上がろうとする指導者(相楽総三)が、官軍(あるいは天皇)という権力によって利用され、最後は抹殺されていく悲劇」を描いたもので、これは「プロレタリア文学」そのものという印象です。


とくに厳しい年貢取り立てに苦しめられる農民たちの姿が、ことさら強調されて描かれていて、赤報隊は正にその救世主として描かれています。

この作品の中で相楽総三は、まるでレーニンか毛沢東か、はたまた張学良かというような、民衆を救うために我が身を惜しまぬ高潔な指導者として描かれていて、決して「幕末ヤンキー」などではありません(笑)


その一方で西郷隆盛や伊地知正治ら薩摩藩士は「権力側に立つ上司」という立場で、赤報隊を利用するだけ利用して、都合が悪くなると切捨ててしまうという風に、ひたすら悪く描かれています。


もちろん、「弱い立場の者達が立ち上がる話」「弱い者達を命がけで助ける英雄の話」は胸躍るものがありますが、この本が出版された当時の、「戦後の学校教育」の「左側の政党の影響力の強さ」を合わせて考えると、多少の不快感は禁じ得ない、というのが正直なところです。


ただ、おそらく『相楽総三とその同志』を下敷きにしていると思われ、『草莽枯れ行く』とは違い、一応史実を踏まえて描かれていますし、下手に「背景」を勘ぐらずに純粋に小説として読むのなら、「いい話」ではあります。


が、これが史実そのものだと思われたら「あぶない」のですが…。

赤報隊

↑なんだかこの人、僕が書いた相楽総三に、なんとなく似てる気がする…。髪型とか。