二人の人が、大きなふかふかのおふとんを買いました。
 とてもふかふかで気持ちが良かったので、二人は、毎晩すやすやとねむることができました。

 ところがある晩、一人の腕にちくりとした感触がありました。

 とても小さな蜂が、どこからかおふとんの中にまよいこんでいたのです。

 びっくりした二人は、たんねんにおふとんの中をしらべました。

 そして、一人が言いました。

 「これだけ調べてなにもなかったから、もうだいじょうぶだよ。」

 もう一人がこたえました。

 「いいや、もしかしたらまだなにかいるかもしれない。僕はもうこのおふとんではねむらないよ。」

 そうして、ふたりはべつべつにねむるようになりました。


 もうだいじょうぶと思った人は、毎晩、すやすやとねむることができました。

 もう一人は、固くて古いおふとんで、あんまりきもちよくねむれませんでした。

 
 きもちよくねむれないおふとんの中で、そのひとは思いました。

 (もうひとりは、今はきもちよくねむれるかもしれないけど、いつかきっと、蜂にさされていたい思いをするにちがいない。だからぼくのほうが正しいんだ。)

 そう思いながら、いつしかそのひとは、もうひとりが蜂にさされることを願うようになりました。