船堀小学校の工事停止について(江戸川区の損害額5,000万円) | 江戸川区議会議員 桝秀行のブログ

皆様こんにちは。江戸川区議会議員のます秀行です。


 
 来春、完成予定であった船堀小学校の改築工事が請負企業の破綻により、12月5日工事が一時中断となりました。


 江戸川区議会では、上程された補正予算の議案に対し、総務委員会を設置し今後の対応を含めて議論がなされました。(総務委員ではないので傍聴しました)


今回の請負企業の破綻による、区の実損額は5,000万円です。(区民が納めた税金によって穴埋めされます)


本件を踏まえ、私が考える入札制度の問題点を指摘します。


 工事は、来春を完成予定としていましたが、出来高46%の段階で、12月5日、当該企業が本工事続行不能となりました。学校の工事は、予定の春には間に合わなくなりましたが、江戸川区と議会の姿勢は、スムーズに次の話を詰め、一日でも早く完成させるという意気込みです。

 しかし、私は今回の件でも露呈した、入札時における企業選定と、公共調達入札制度そのもに対する問題点を見過ごすわけにはいきません。

 

 子ども達の事を考えればこそ、一日も早く工事を再開しなければなりませんが、それよりも先に責任の所在を明らかにするとともに、再発防止を見据えた制度改善が優先されるべきです。

 制度を改める事は、役所をあげて本気で取り組めばさほどの時間を要する作業ではないでしょう。慌てて工事の継続ばかりに目をやるのではなく、問題の本質をこの機に洗い出すべきではないでしょうか。

 また、これに伴い12月10日の第四回定例会の中で、工事を引き継ぐ企業の選定を急ぐとともに、緊急の補正予算5億円が議案として上程されました。25日の議会には、後継企業が選定され契約議案として付託される予定です。


 5億円の内訳は、履行保証で1.6億円、前払保険の2.8億円としています。計約4.5億円。残り0.5億円は区の持ち出しとなります。

 破綻した企業に対してすでに支払っている代金は、保険によって無事に回収される事になりますが、全てを補うまでには至らず、結果として江戸川区は5,000万円の被害という事になり、この分は教育基金を取り崩します。


 

ここで遡って考えてみます。


 そもそもの契約は、平成24年2月14日に落札された船堀小学校改築工事は、社会的要請型総合評価一般競争入札制度によって行われ、計3社が入札し、15億7,500万円で札を入れた当該企業が落札しました。


 私が考えるに、ここで登場した社会的要請型総合評価一般競争入札制度こそ問題があるのです。

 これは、将来にわたり20年間で、およそ2,000億円くらい掛かると言われている老朽化した小中学校の改築工事を、区内業者の育成や、貢献度が高い業者、など地域性を高めるために制定されて条例、制度です。

 → 簡単に言うと、区内業者優先の入札制度です。


江戸川区独特の入札制度はコチラです (条例制定の議決は私が議員になる前期です)


 

では、区内業者を優先させる制度のどこに問題があるのか?


◆入札に参加する業者の数が減少することによって競争性が維持できなくなるのでは?

 → これまでに一社入札という結果も散見される。

 → 狭い地域で繰り返すと、『いつもの業者』が落札する恐れがある。


◆競争性が下がることによって、落札価格が高くなるのでは?


◆区内の業者数で工事が全て請け負えるのか?

 → 業者数と工事数のバランスは適正でなければならない。

 → 例えば、学校改築の本体工事を単体で受注できる区内業者はいったい何社あるのか。


◆そもそも行政が応札業者を事細かにコントロール、介入すべきではない。経済は自由に!


◆産業振興の使命として地元業者の育成?

 → 仕事を与える事が業者の育成になるのか。経済活動の範囲を拡げる事によって成長するのが原則でしょう。地域を狭めて業者の数を限定していくような行為では、企業そのものも成長しませんよ。役所の仕事を専門に行うような会社が増えるだけではないでしょうか。




総務委員会での区の答弁に対する私の考え


◎契約時に安全な企業を選定していく

これまでは商工リサーチの資料を選定委員に提供し検討していた。今後は公認会計士等、専門家を利用し会社の財務内容等も示して頂く。


→ 一定の基準を設定すべきですよね。経営内容の審査を行政が裁量を持って行うことは危険すぎます。役所のお墨付き企業を生み出したり、落選した企業には風評被害を与えるなど負の効果まで想定されます。


◎工事が進む中で部分払いのあり方を検討していく(今回、も過払いが生じている)
工事中の企業に対する経営内容のチェックは難しい。いかに専門家を利用していくかが課題である。


→ 工事中に専門家を利用して、経営状況が悪化している事を把握しても、契約解除等の対応は難しい。とにかく契約前の選定が重要ということ。


◎今回破綻した当該企業の細かい経営内容は把握していなかった。

4回目の部分払い時に、企業の経営者、専務と会談し、資金繰りに問題はないとの回答をもらっている。


→ 当たり前でしょ。「うちは危ないです」なんて答える人はいませんよ…


◎中里委員の指摘(平成24年7月期には2億5,800万円の欠損を計上していた)に対し、商工リサーチ等外部の調査会社を通じて知っていたが、今回の公告が出たあと資金繰りが改善されたとも書いてあった。


→ 商工リサーチから同じ情報を入手してみます。24年の7月決算であれば、調査会社が資料を出すのは冬の頃。その後から今日に至るまでの短い期間で資金繰りが改善されたなどと書かれますかね?


◎三井住友に履行保証を受けるなどしているが平成24年度の債務超過を把握していたのか?

(自民党委員からの質問)に対し、債務超過は知らなかった。


→ 知っていたでしょう。少なくとも直近で事業者と話された時には分かっていたはず。答弁は、契約日より後の欠損なので、契約段階では知らなかったという意味だと解しました。

  

 


結論として

①子どもたちのためにも早急に次の業者を見つけること


②とは言え、責任の所在と、選定に失敗した理由を明確にする事が先

(時間を必要とする作業ではない)


③再発を防ぐためにも新しい制度のもとで業者選定すべき

(時間がないというのであれば現行ルールに補完するものがなければならない)


④現在の区内業者の数(本体工事を請け負える企業)は少ない。

区内業者優先の精度は論理上破綻しているため、早急な見直しが必要

*JVをどこまで評価するのか