阿部 治正

 

■目下の情勢と私たちの課題

物価の高騰が暮らしを圧迫しています。政府と日銀が一体となって大企業救済策=国債大量発行と低金利政策を続けた結果のインフレです。インフレはそれ自体が民衆から富者や大企業への富の移転をもたらす収奪策でもあります。しかもインフレ政策は経済を活性化させることなく、実体経済は低迷したままで、大企業は非正規雇用やギグワークの活用を梃子に労働者全体への搾取を強めることで利益を上げています。

春闘は一部大企業の「高額回答」(ベア分3.7%)を経て後半の中小春闘へ移りました。しかしこの「高額回答」も昨年同様に物価上昇を上回る保証はなく、下請け単価引下げが強化される中では、中小春闘の厳しさは変わりません。労働者の分断を許さず、非正規やギグワーカーも含めた、物価上昇を上回る賃上げと、合わせて欧米並みの時短(週35時間)を求めて闘う必要があります。

介護、医療、年金など社会保障制度の改悪が進んでいます。子育て・教育施策を拡充するとの触れ込みで、社会保険料などへの負担増が進められています。生活保護、自立支援制度、各種の扶助制度への圧迫も続いています。とりわけ扶助制度の低水準は、労働者の低賃金構造を維持する装置ともなっており、打破していかなければなりません。

1月1日に能登半島を襲った大地震は、国や自治体の防災対策の遅れや欠陥を暴露するとともに、地震大国日本における原発の危険性を再度思い知らせました。千葉県は、東海第二原子力発電所から70㎞しか離れておらず、原発事故時には甚大な放射能被害が避けられない運命にあります。立地自他体の市民などと連携し、再稼働反対の声をさらに強く上げていく必要があります。

自民党の政治資金パーティと裏金問題は、この党が大企業などのカネで骨がらみにされた、脱法行為の常習政党であることを改めて満天下に示しました。低賃金や低収入を強いられた上、厳しい税や社会保険料の徴収に晒される労働者や庶民の激しい怒りは当然です。かかる腐敗政治は、統一教会との癒着が示した反動政治とともに、自民党のもともとの体質が安倍一強の時代にさらに肥大化したものです。自民政権の打倒を通して金権と反動の政治を葬り去らなければなりません。

ウクライナ戦争は、冷戦の敗者であるロシアによる失地回復の野望と、欧米の新自由主義の切先として「東欧のイスラエル」を目指すと豪語したウクライナの衝突から生じました。隣国との国境を侵して自国の権益拡大を図る行為は断じて許されません。他方ガザでの戦争は、「歴史的パレスチナ」全土の専一的支配を目指すイスラエルによるパレスチナ人に対する排除と抹殺の戦争であり、イスラエルの蛮行を厳しく批判し、パレスチナの民族解放闘争を支援するひつようがあります。当事国の労働者と市民の利益ためには、どちらの戦争も直ちに停戦させられなければなりません。

またウクライナ戦争などを利用して、隣国への敵愾心を煽り、軍拡や政治反動、軍事同盟の強化と拡大に走る自民党の目論見を許すわけにはいきません。防衛三文書が示した、地方自治や教育や金融や信用システムまでを軍拡目的で再編成し、軍需企業へのテコ入れを強化しようとする政府・自民党の目論見を許してはなりません。自衛隊木更津駐屯地へのオスプレイの配備、幕張メッセでの国際武器見本市に反対する県民の闘いの先頭に立ち、沖縄をはじめとする全国の反基地、反戦の闘いを推し進めます。

資本の勢力が長期停滞を脱却できずに袋小路に陥り、労働者市民の暮らしも格差と貧困の拡大で行き詰っている状態は、根本的な社会変革の必要を教えるシグナルです。遠からず火ぶたが切られる衆院選は、政権交代も視野に入れた選挙となる可能性があります。しかし、2009年の連立政権崩壊の総括がないままの政権交代は、前回よりもさらにひどいダメージを労働者市民の側にもたらします。その繰り返しを避けるためには、労働者市民が求める大胆な政策と、それを実現するための断固たる決意と戦略が求められます。今の野党にそうした備えがあるか。ありません。だからこそ、変革を可能にする政策や決意や戦略を獲得していくことこそが、私たちの現在の喫緊の課題です。