【管理人の一言】

ウォール街からシリコンバレーに至る全米各地の富裕層は、トランプ前米大統領のホワイトハウスへの復帰を阻止するため、共和党候補指名を争うヘイリー元国連大使の陣営に多額の資金を献金してきました。その結果、資金力ではヘイリー候補がトランプ候補を圧倒しているのです。しかしながら、彼らが学んだ教訓は「多額の資金を献金しても、少なくともトランプ氏の対抗馬は、共和党候補指名を勝ち取れない。トランプ氏は幅広く有権者の支持を確保している」(Reuters)ということでした。

 

トランプ氏はいつから、貧困者、労働者、被抑圧者のヒーローになったのでしょうか。

 

■トランプ旋風収まらず

2016年の大統領選挙において、トランプ氏はこれらの「庶民」層から熱烈な支持を得ました。トランプ氏が貧困者、労働者、被抑圧者から支持を集める理由はいくつか考えられます。

米国の労働者や貧困者は海外の企業によってアメリカ国内の仕事や生活が脅かされていると感じています。彼ら貧困者や労働者に関心の高い問題、アメリカ企業の海外移転を阻止し、輸入課税を高くして国内雇用を守る政策、つまり反移民政策、反グローバリズムといった政策が底辺市民の支持を受けたと考えられます。さらに所得税減税などの経済政策も指摘できます。さらに、民主党など社会エリート=エスタブリッシュメントらが中心となってきた従来の政治体制に対する不満などが複合的に作用していると考えられます。

 

大企業・富裕層からすればトランプ氏の「保護貿易」「反グローバリズム」は米国の経済的世界覇権を脅かすものとして映るようです。ヘイリー候補は、国際「協調」派とされ保護主義も慎重だと考えられており、米国の大資本はヘイリー候補支持に大きく傾いてきたのでした。

 

トランプ氏は数多い訴訟を起こされていますが、こうした状況を差別され抑圧されてきた黒人の歴史になぞらえたりと、人気取りに余念がありません。しかし、もちろんこれらはマヌーバーと言うものです。偽善であり虚偽の人気取りにすぎません。彼自身が大富豪であり、エスタブリッシュメントであり、白人中心主義者であり、生活困窮者である移民の敵であることは良く知られていることです。

 米国の有権者の中で特に社会不満を高めている階層は、トランプにうまく騙されていると言わざるを得ません。

 

■経済は「悪くない」が不人気なバイデン氏

 

米国は現在では、インフレをようやく制御しつつ予想されたリセッションにも陥っていません。米国は「優等生ぶり」を示してきたと言うことです。バイデンはその実績をひっさげてそのまま大統領選の年を迎えたので当然優位か、と思いきやトランプに対して劣勢に回っているのです。ニューヨーク・タイムズの二月の世論調査では、トランプ前大統領(77)が48%を得て、バイデン大統領(81)の43%を上回りました。2人の支持率は5ポイント差で、昨年12月の前回調査(2ポイント差)と比べてかなり開きました。

 

つまり、再び吹き出したトランプ旋風は、こうした米国経済の表向きの好調さではなく経済社会の「質」の問題となります。一般大衆は、コロナ下で推進されたバイデン政権の拡大財政措置(インフレ抑制法など)で一定の恩恵を受けつつも、その後のインフレの爆発と相まって、「実質世帯収入household income」が日本と同様に下降し続けています。これは、賃金上昇が物価上昇に追いつかないのでインフレによる大衆的追加収奪(特別利潤)が発生し労働者はインフレによる所得喪失、貧困化し、ゆえに、企業や資産家たちには大いに潤ったのでした。

 

前回大統領選よりも一層「苦境の労働者の見方」「落ちぶれた社会の変革」「米国を再び偉大に」「ワシントンのエリートを叩き潰す」を叫ぶのに好都合の時代的状況が醸成され、トランプ氏に有利な展開になってきたと言えるのです。つまり、排外主義や米国中心主義、プラス、エスタブリッシュメント排撃と言うものです。そしてさらに、伝統的なキリスト教価値観を広めつつ、社会の混乱や価値観の混迷を民主党政権のせいにすることに成功しています。

 

気候危機対策や環境保護政策でも反動的立場にトランプ氏はたっています。これも大衆の遅れた意識に便乗したものです。炭素削減策実行のためには初期投資が必要となり企業の負担増となります。農民にとつては環境保全のために農薬の規制などが負担となってきた面があります。ゆえに、環境対策は決して彼らに歓迎されていません。トランプ氏は長期的歴史的な視野を投げ捨てて大衆に追随し、このような環境対策・気候危機対策推進に反対してきています。

 

■当選したら豹変?

こうしてトランプ氏は従来の「白人労働者零落層」ばかりではなく人種の区別を超えた貧困大衆の不満や怒りを既成の民主党政権に対置させて一定の人気を獲得してきています。いずれにしても、バイデンかトランプか?という選択肢の中に労働者、低所得者、被抑圧者の未来を代表し真に支持しうる候補者はいません。

今後は「トランプ優位」という事態を前にして、冒頭のような富裕階級が雪崩を打ってトランプ陣営に流れ込むことが予想されます。ましてやトランプ氏の当選がありうるとしたら「庶民・有権者向けのパフォーマンス」を転換すると考えられます。米国覇権に対する脅威である中国を強くけん制しつつも、弱まりつつあるドルを守りグローバリズムの再構成を図ることなどががむしろ予想されます。

(了)

 

 

米世論調査、際立つバイデン氏の不人気 トランプ氏がリード広げる

 (msn.com)

バイデン米大統領(左)とトランプ前大統領=AP

バイデン米大統領(左)とトランプ前大統領=AP© 朝日新聞社

 米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は2日、2月下旬に実施した最新の世論調査結果を報じた。11月の大統領選に向けた支持率では、トランプ前大統領(77)が48%を得て、バイデン大統領(81)の43%を上回った。2人の支持率は5ポイント差で、昨年12月の前回調査(2ポイント差)と比べてやや広がった。

 

 今回の調査で浮かび上がったのは、バイデン氏の不人気ぶりだ。同じ2人の対決だった2020年大統領選前の調査と比べると、バイデン氏を「好ましい」と答えた人は52%から38%に大きく減少した。これに対し、トランプ氏を「好ましい」と答えた人は43%から44%と微増だった。「トランプ氏は4年前と同様に不人気だが、それを下回るほど今のバイデン氏は不人気だ」と同紙は報じている。

 

アングル:米大統領選、多額の献金ではトランプ氏復帰を阻止できず

 | ロイター (reuters.com)

[26日 ロイター] - ウォール街からシリコンバレーに至る全米各地の富裕層は、トランプ前米大統領のホワイトハウスへの復帰を阻止するため、共和党候補指名を争うヘイリー元国連大使の陣営に多額の資金を献金してきた。

彼らが学んだ教訓は「多額の資金を献金しても、少なくともトランプ氏の対抗馬は、共和党候補指名を勝ち取れない。トランプ氏は幅広く有権者の支持を確保している」ということだ。

 

トランプ氏、3州制して8戦全勝 5日のスーパーチューズデーに弾み

 (msn.com) 

11月の米大統領選に向けた共和党候補指名争いで、中西部ミシガン州の党州大会、中西部ミズーリ、西部アイダホ両州の党員集会が2日行われ、ドナルド・トランプ前大統領(77)がいずれも得票率1位で勝利を確実にした。米メディアが報じた。党候補レースを圧倒的にリードするトランプ氏は8戦全勝で、16州・地域の予備選や党員集会が集中する5日のスーパーチューズデーに弾みをつけた。