【管理人の一言】

朝鮮半島の南北関係が、以前にもまして緊張しています。北のキム体制は強権体制を維持しており、ユン大統領の外交の大きな転換が深く関係していると考えられます。前任者の文ジェイン前大統領となにが異なるのか、を考えてみましょう。そしてユン大統領の不人気の一つの原因が見えてくるでしよう。朴槿恵氏のように、独断専行が過ぎれば大衆的な抗議行動が発生することも予想できるでしょう。

 

「尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の支持率が前週より1%ポイント下がった。1月第3週(16-18日)に全国満18歳以上の1002人を対象に調査を行った結果、尹大統領の国政遂行に対する支持率は32%だったと、韓国ギャラップが19日発表した。直前の調査(9-11日)に比べて1ポイント低い数値だ。 「否定的な評価」は58%だった」(中央日報日本語版)。

 

日本の岸田首相も支持率低迷時期が長いが、上記のように就任二年足らずのユン大統領も低迷が続いています。2022年5月9日の任期満了まで、前大統領文在寅(ムン・ジェイン)氏は歴代大統領の中でも稀に見る高支持率を維持し、最後まで40%を超え終始歴代最高の支持率であったのと比較しすると悲惨な状態です。理由はつぎのようです。

 

この背景には、以下の要因が挙げられます。

  • 経済の低迷
  • 対話姿勢の後退、北朝鮮の軍事挑発と対決姿勢
  • 政権の独断的な姿勢

ここでは日本ともかかわりの大きな軍事・外交問題を中心に見てみます。

上記したようユン大統領は前任の文ジェイン氏の北朝鮮や中国との対話姿勢を一転させました。

 

韓米同盟は、北朝鮮の核・ミサイル開発や、中国の台頭など、東アジアの安全保障環境の悪化を背景に、近年、強化が進んでいます。2022年5月に就任したユン錫悦大統領は、対北朝鮮強硬姿勢を掲げており、韓米同盟のさらなる強化を主張しています。尹大統領は、戦時作戦統制権(OPCON)の韓国への移管を早期に実現し、米国の軍事支援を拡大することを目指しています。

 

日本との関係では、元徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)訴訟で賠償を命じられた日本企業の資産の現金化手続きが韓国で進んでいること、元慰安婦を巡る訴訟が懸案として残っていることなどが挙げられます。そこでユン大統領が、日韓関係回復と韓日同盟の進展のために「賠償金支払い立て替え」や「日本への配慮」などで日韓の歴史問題をいい加減に扱い続けてきました。そえしたことが、韓国国民の反発と不評を受けたことは確実だと考えられます。

 

 また、在韓米軍がTHAAD(高高度ミサイル防衛システム)を配備することに対する中国の反発を受け、文在寅大統領が訪中2カ月前に「THAADを追加配備しない」「米国のミサイル防衛システム(MD)に参加しない」「日米韓軍事同盟はしない」といわゆる「三不」政策を表明したことも、日韓軍事同盟の進行に影響を与えています。文ジェイン前大統領は、日韓関係では戦前の植民地主義の安易な清算をせず、他方では中国や北朝鮮との対話や協調によって外交の基礎としてきたのです。韓国民の多くはそれに理解を示してきました。

 

他方、「尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の対応を見ると、依然として総選挙を控えて北朝鮮問題をどうやって国内政治に有利に利用するかばかりに没頭しています。南北間に衝突が起きても強く対抗し、「北朝鮮政権の崩壊」まで推し進められるという誤った判断をしている。」(ハンギョレ)。

 

ユン大統領は、ハンギョレ新聞の指摘のように国内・外交の不評を「北朝鮮」と言う脅威を利用して切り抜けようとしているように見えて仕方がありません。どの支配者も、矛盾を外敵に向けるものですし、キム北政権の挑発的態度はうってつけだろうと思います。しかし、韓国民は冷静に事態を観ていますし、その証拠にユン路線は評価を下げ続けています。ユン大統領によるこれ以上の強硬姿勢、そして米国との合同軍事演習などの挑発行動、そして、日本の反動派を勢いづける慰安婦や強制動員に対して安易な「寛容さ」を糾弾してゆきましょう。韓国の粘り強い北との対話や中国との健全な関係を期待するものです。(了)

 

 

▲北朝鮮の金正恩国務委員長が15日、最高人民会議で韓国を「徹頭徹尾第一の敵対国」と憲法に明示する内容などについて演説している/朝鮮中央テレビの画面、聯合ニュース

 

[コラム]「戦争を決心した金正恩」にどう対応するか 

: 社説・コラム : hankyoreh japan (hani.co.kr)

 

 

 北朝鮮が南北関係を完全に断絶し、韓国を「徹頭徹尾第一の敵対国」、「不変の主敵」と憲法に明示することにした。昨年は、「核先制攻撃も可能だ」という核武力法の内容もすでに憲法に明記した。「民族」、「統一」の概念は完全に消し去り、核武力が新たな国是であり宗教のように強調している。朝鮮戦争以来、朝鮮半島で起きている最も根本的な変化だ。

 

 北朝鮮の意図をめぐっては様々な解釈がある。当面の最優先の目的は、韓国による吸収統一を防止し、内部を団結させて経済発展に集中することだ。同時に核・ミサイル能力の増強と朝中ロの密着を通じて、条件が整った場合は核武力に基づいた武力統一路線も進める危険な切り札も手元に残している。核保有国として認められるため、米国と核軍縮交渉を行うことはあっても、韓国との交渉や非核化の可能性はないと、重ねて宣言した。

 

 米国内で北朝鮮政治と北朝鮮核問題に最も精通した専門家と評価されるロバート・カーリン氏とジグフリード・ハッカー氏が「金正恩は戦争をするという戦略的決定を下した」とし、今が朝鮮戦争直前のような危険な状況だと警告したことを、重く受け止めなければならない。ハンギョレ平和研究所のチョン・ウクシク所長も昨年出版された著書『これまで一度も経験したことのない新しい北朝鮮が来る』で、2019年のハノイ朝米首脳会談の失敗と板門店南北米首脳会談を起点とし、北朝鮮は朝米交渉に対する未練を完全に捨て、核武力の増強へと根本的な軌道修正を行う一方、韓国に対しては「近親憎悪」を抱くことになったため、2018年の南北首脳会談のような局面には戻れなくなったと診断した。

 

 むろん、金正恩委員長が戦争を決めたとしても、金委員長が思い描いたとおり世の中が回るわけではない。韓国と国際社会がどれほど正確かつ慎重に対応するかによって、結論は大きく変わる。だが、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の対応を見ると、依然として総選挙を控えて北朝鮮問題をどうやって国内政治に有利に利用するかばかりに没頭している。南北間に衝突が起きても強く対抗し、「北朝鮮政権の崩壊」まで推し進められるという誤った判断をしている。尹錫悦大統領とシン・ウォンシク国防部長官が大口をたたく背景には、米国の力と戦略兵器に対する期待がある。だが、米国はウクライナとガザ地区の「二つの戦線」でも苦戦を強いられている。尹錫悦政権が北朝鮮と境界地帯で危険千万な衝突を辞さず、炎が広がった場合、米国にはそれを解決する余力がない。

 

 「韓米日協力」を大々的に掲げている尹政権だが、北朝鮮核問題の解決に向けた長期ロードマップをもとに米日を説得し、北朝鮮の戦略的変化に積極的に対応する努力は見当たらない。このように北朝鮮核問題が放置されることについては、ワシントンの多くの専門家たちも懸念を抱いている。通常兵器と経済力の劣勢にもかかわらず、金委員長が韓国を核兵器で威嚇するに当たって重要な前提になるのは、ロシアと中国の支援または少なくとも黙認を得ることだ。金委員長は、朝ロとの密着を通じて戦略的利益を確保したという自信をもとに、今年は中国を訪問して「朝中ロ」の連帯の強化を目指すだろう。1950年初め、金日成(キム・イルソン)主席がソ連のスターリン書記長の同意を得た後、中国の毛沢東主席を引き入れて韓国に侵攻したのと類似した情勢を作ろうとしているのだ。韓国が今のように中国との関係を放置すれば、このような最悪のシナリオがやがて現実になるかもしれない。

 

 尹錫悦大統領流の対応が無謀なら、野党と革新勢力がより良い代案を出して世論の選択を受けなければならない。従来の「民族同士の対話と経済支援で非核化を達成するカード」がこれ以上効力を発揮できないことを、冷徹に認識すべきだ。韓国で野党「共に民主党」が政権をとり戻した場合は、あるいはドナルド・トランプ氏が米大統領の座に返り咲いた場合は、再び金正恩委員長と南北対話で問題を解決できるという誤った判断をしてはならない。トランプ氏が再選されれば、金委員長は韓国を排除して核保有を前提に談判する可能性を打診するだろうし、それが難しければ韓国に対する核の脅威や挑発の試みを強化するだろう。トランプ氏の帰還を「米国の衰退、同盟の弱体化」とみなす可能性が高いからだ。

 

一方で、韓国の強硬保守勢力はトランプ氏との取引を通じて独自の核武装に向けて本格的に進もうとするだろう。革新勢力が変化した情勢に対応し、既存の民族主義の解決策を越えて安保と外交をよりよく管理できる正確な代案を出すことができなければ、金委員長の対南圧迫と挑発がむしろ強硬保守勢力の政策を後押し、「敵対的共生」が実現することになる。革新勢力は慣性にとらわれず、幅広く専門家を集めなければならない。 

//ハンギョレ新聞社

パク・ミンヒ|論説委員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )