アベノミクス第二ステージの無責任・厚顔ぶり
安倍首相が掲げたアベノミクス第二ステージとやら。「新三本の矢」を見て驚いた。その無責任・厚顔ぶりに開いた口がふさがらなかった。
安保法を強引に成立させた尻ぬぐいでもあるまいに、改造内閣のキャッチフレーズは再び「経済」だという。国民・有権者を舐めた新しい旗印にしようという魂胆らしいが、二匹目のドジョウなどいないと思い知らせる以外にない。
◆戦争の次は経済?
安保法を強行成立させた安倍首相。発足させた第三次改造内閣が掲げる旗印がアベノミクス第二ステージだという。普通、第二ステージというのは、第一ステージが無事に完遂した後で使われるはずの言葉だ。そのアベノミクス第一ステージの到達点はどういうものだろうか。ざっと別記の数字を眺めていただきたい。(朝日新聞)
この数字を一瞥しただけで、アベノミクスの本質が透けて見える。数字上で良くなっているのは名目GDPと日経平均だけだ。円相場は功罪相半のものだ。失業率は、団塊世代のリタイアや少子化、それに震災の復興特需などによるもので、アベノミクスの成果ではない。
一方、悪くなっているのは雇用の質や勤労者の所得などだ。安倍首相は雇用が増えたと強弁しているが、実情は正社員が不安定低処遇の非正規労働者に置き換わっているだけだ。消費者物価は横ばいだが、生鮮食料品や輸入食品などは大きく上がっている。庶民の日常生活での負担は、以前より重くなっている。
この数字には出てこないが、安倍政権がアベノミクスでこの間やってきたことは、大企業にテコ入れすることばかりだった。法人税率引き下げや派遣法改悪などだ。具体的に結果が出るものは大企業向けのものばかり、企業への賃上げ要請などは〝お願い〟に過ぎない。実際、賃上げは大企業の正社員に止まっており、実質賃金はアベノミクスの期間中もずっと下がり続けているのが実情だ。
アベノミクスで当初掲げた「三本の矢」はどうなっているのだろうか。一本目の異次元の金融緩和では、日銀による大量の国債購入などで株高を演出してはきた。その恩恵はヘッジファンドや一部の大株主・個人投資家に過ぎない。その株価も中国経済原則などもあって、このところ乱高下している。
二本目の矢だという大胆な財政支出。これも震災からの復興を名目とした国土強靱化などの大盤振る舞いにもかかわらず、国の財政赤字を増やしただけで成長には結びついていない。三本目の矢だとした成長戦略などは、どんな成果があったのか政府としてもなにもアピールできない。第一ステージがこんな有様なのに、ぬけぬけと第二ステージだと抜かす神経はなんなのだろうか。といっても、政治家たるもの、そんなつじつま合わせは関係ないらしい。大風呂敷が大事なのだ、と。
◆大風呂敷
その第二ステージの中身はどんなものか。
安倍首相が『一億総活躍社会』をめざすとして新三本の矢だとしてあげたのが
「希望を生み出す強い経済」(名目GDP600兆円達成)
「夢をつむぐ子育て支援」(希望出生率1・8の実現)
「安心につながる社会保障」(介護離職ゼロ)、50年後も人口1億人維持
歯が浮くようなキャッチフレーズには食傷気味だが、GDP600兆円という目標。名目3%、実質2%の成長率が必要になる計算だ。そんな皮算用する安倍首相だが、足元の経済はそんな楽観的な見込みを許す余地はない。現にこれまでの20年間、日本の名目成長率が3%を越えたことは一度もない。今年4~6月期の成長率はマイナス成長だ。また10月1日に日銀が発表した「短観」でも、製造業では軒並み悪化している。中国人などの爆買いなどで小売業や宿泊業者が好調なだけだ。が、それも先行きは落ち込むと見込まれている。鉱工業生産指数も7、8月と続けて下がっている。家計の消費支出も7月は前年同月を0・2%下がってしまった。600兆円という数字事態、実現するかどうかではなく、とにかく大風呂敷を拡げることが大事だということなのだ。
出生率についてもまったく同じ。永年続いてきた少子化で、現在1・4という出生率を大幅に引き上げる特効薬などない。これもとにかく大風呂敷を掲げることが重要なのだ、というものでしかない。
社会保障についても同じだ。安倍内閣はその充実を掲げながら、実際は膨らむ社会保障費を抑え続けてきた。その一方で、こんなスローガンを掲げるとは、言行不一致も甚だしい。
ざっと見てきただけだが、こんなものが三本の矢だと掲げること自体、空論そのものだろう。誰かが言っていたが、これは「矢」でも何でもなく、要は目標、大風呂敷でしかない。目標を達成するための具体策が本来の「矢」というべきなのだが、提示されたものを見る限り、そんなものはどこにもない。
第一ステージがそうであったように、第二ステージもとりあえず目先に大風呂敷を拡げながら対処療法で経済の失速を遅らせ、当面の政権浮揚の手段とするものでしかないだろう。
◆ドジョウ政権?
安保法を強行した安倍政権、明文改憲なども諦めたわけではない。が、戦争法を強引に成立させた直後の疲弊した政権にただちにそれを進める推進力はない。来年7月には参院選挙がある。猫をかぶったように一旦は経済を前面に押し出して体制を整えるしかない、そこを乗り越えた先にまた改憲を強行しようとでも夢想しているのだろう。
だが現実は甘くない。今回の戦争法で、民主党がなんとか戦争法反対の姿勢を貫いた。内部には賛成派を抱えているものの、これまでの経緯を考えれば、参院選までに急に舵を切り替えることは難しい。
そこで安倍政権が期待するのは、橋下おおさか維新の会の抱き込みということになる。橋下維新の会は、維新の党との分派抗争で多数派を確保できなかったし、戦争法案での親アベ路線を見抜かれ、一時の勢いはない。しかも今年6月に否定されたばかりの大阪都構想をぶり返して11月のダブル選挙を戦うという。橋下政治のウリだったサプライズ政治も、他に材料がないということだろう。大阪都構想を実現するためにも、安倍政権にすりよるしかない。そうした橋下おおさか維新の会に、大阪を越えて全国に拡がるような勢いはもう無い。実際、世論調査でも維新の会支持率は2~3%程度だ。
そんな維新の会を取り込むことで参院でも三分の二の勢力を確保し、国会発議にこぎ着けられると考えているのだろうか。そんな勢いはないだろし、それを許してはならない。
安倍首相は、表看板でアベノミクスを掲げながら、実際には戦争法を強行成立させた。いままた毛針やニンジンで有権者を瞞そうと目論んでいるようだが、安倍首相に二匹目のドジョウはいないことを突きつける以外にない。(廣)
「ワーカーズ10/15号」より転載
安倍首相が掲げたアベノミクス第二ステージとやら。「新三本の矢」を見て驚いた。その無責任・厚顔ぶりに開いた口がふさがらなかった。
安保法を強引に成立させた尻ぬぐいでもあるまいに、改造内閣のキャッチフレーズは再び「経済」だという。国民・有権者を舐めた新しい旗印にしようという魂胆らしいが、二匹目のドジョウなどいないと思い知らせる以外にない。
◆戦争の次は経済?
安保法を強行成立させた安倍首相。発足させた第三次改造内閣が掲げる旗印がアベノミクス第二ステージだという。普通、第二ステージというのは、第一ステージが無事に完遂した後で使われるはずの言葉だ。そのアベノミクス第一ステージの到達点はどういうものだろうか。ざっと別記の数字を眺めていただきたい。(朝日新聞)
この数字を一瞥しただけで、アベノミクスの本質が透けて見える。数字上で良くなっているのは名目GDPと日経平均だけだ。円相場は功罪相半のものだ。失業率は、団塊世代のリタイアや少子化、それに震災の復興特需などによるもので、アベノミクスの成果ではない。
一方、悪くなっているのは雇用の質や勤労者の所得などだ。安倍首相は雇用が増えたと強弁しているが、実情は正社員が不安定低処遇の非正規労働者に置き換わっているだけだ。消費者物価は横ばいだが、生鮮食料品や輸入食品などは大きく上がっている。庶民の日常生活での負担は、以前より重くなっている。
この数字には出てこないが、安倍政権がアベノミクスでこの間やってきたことは、大企業にテコ入れすることばかりだった。法人税率引き下げや派遣法改悪などだ。具体的に結果が出るものは大企業向けのものばかり、企業への賃上げ要請などは〝お願い〟に過ぎない。実際、賃上げは大企業の正社員に止まっており、実質賃金はアベノミクスの期間中もずっと下がり続けているのが実情だ。
アベノミクスで当初掲げた「三本の矢」はどうなっているのだろうか。一本目の異次元の金融緩和では、日銀による大量の国債購入などで株高を演出してはきた。その恩恵はヘッジファンドや一部の大株主・個人投資家に過ぎない。その株価も中国経済原則などもあって、このところ乱高下している。
二本目の矢だという大胆な財政支出。これも震災からの復興を名目とした国土強靱化などの大盤振る舞いにもかかわらず、国の財政赤字を増やしただけで成長には結びついていない。三本目の矢だとした成長戦略などは、どんな成果があったのか政府としてもなにもアピールできない。第一ステージがこんな有様なのに、ぬけぬけと第二ステージだと抜かす神経はなんなのだろうか。といっても、政治家たるもの、そんなつじつま合わせは関係ないらしい。大風呂敷が大事なのだ、と。
◆大風呂敷
その第二ステージの中身はどんなものか。
安倍首相が『一億総活躍社会』をめざすとして新三本の矢だとしてあげたのが
「希望を生み出す強い経済」(名目GDP600兆円達成)
「夢をつむぐ子育て支援」(希望出生率1・8の実現)
「安心につながる社会保障」(介護離職ゼロ)、50年後も人口1億人維持
歯が浮くようなキャッチフレーズには食傷気味だが、GDP600兆円という目標。名目3%、実質2%の成長率が必要になる計算だ。そんな皮算用する安倍首相だが、足元の経済はそんな楽観的な見込みを許す余地はない。現にこれまでの20年間、日本の名目成長率が3%を越えたことは一度もない。今年4~6月期の成長率はマイナス成長だ。また10月1日に日銀が発表した「短観」でも、製造業では軒並み悪化している。中国人などの爆買いなどで小売業や宿泊業者が好調なだけだ。が、それも先行きは落ち込むと見込まれている。鉱工業生産指数も7、8月と続けて下がっている。家計の消費支出も7月は前年同月を0・2%下がってしまった。600兆円という数字事態、実現するかどうかではなく、とにかく大風呂敷を拡げることが大事だということなのだ。
出生率についてもまったく同じ。永年続いてきた少子化で、現在1・4という出生率を大幅に引き上げる特効薬などない。これもとにかく大風呂敷を掲げることが重要なのだ、というものでしかない。
社会保障についても同じだ。安倍内閣はその充実を掲げながら、実際は膨らむ社会保障費を抑え続けてきた。その一方で、こんなスローガンを掲げるとは、言行不一致も甚だしい。
ざっと見てきただけだが、こんなものが三本の矢だと掲げること自体、空論そのものだろう。誰かが言っていたが、これは「矢」でも何でもなく、要は目標、大風呂敷でしかない。目標を達成するための具体策が本来の「矢」というべきなのだが、提示されたものを見る限り、そんなものはどこにもない。
第一ステージがそうであったように、第二ステージもとりあえず目先に大風呂敷を拡げながら対処療法で経済の失速を遅らせ、当面の政権浮揚の手段とするものでしかないだろう。
◆ドジョウ政権?
安保法を強行した安倍政権、明文改憲なども諦めたわけではない。が、戦争法を強引に成立させた直後の疲弊した政権にただちにそれを進める推進力はない。来年7月には参院選挙がある。猫をかぶったように一旦は経済を前面に押し出して体制を整えるしかない、そこを乗り越えた先にまた改憲を強行しようとでも夢想しているのだろう。
だが現実は甘くない。今回の戦争法で、民主党がなんとか戦争法反対の姿勢を貫いた。内部には賛成派を抱えているものの、これまでの経緯を考えれば、参院選までに急に舵を切り替えることは難しい。
そこで安倍政権が期待するのは、橋下おおさか維新の会の抱き込みということになる。橋下維新の会は、維新の党との分派抗争で多数派を確保できなかったし、戦争法案での親アベ路線を見抜かれ、一時の勢いはない。しかも今年6月に否定されたばかりの大阪都構想をぶり返して11月のダブル選挙を戦うという。橋下政治のウリだったサプライズ政治も、他に材料がないということだろう。大阪都構想を実現するためにも、安倍政権にすりよるしかない。そうした橋下おおさか維新の会に、大阪を越えて全国に拡がるような勢いはもう無い。実際、世論調査でも維新の会支持率は2~3%程度だ。
そんな維新の会を取り込むことで参院でも三分の二の勢力を確保し、国会発議にこぎ着けられると考えているのだろうか。そんな勢いはないだろし、それを許してはならない。
安倍首相は、表看板でアベノミクスを掲げながら、実際には戦争法を強行成立させた。いままた毛針やニンジンで有権者を瞞そうと目論んでいるようだが、安倍首相に二匹目のドジョウはいないことを突きつける以外にない。(廣)
「ワーカーズ10/15号」より転載