安倍内閣の無責任な軍事優先政治

 安倍政権は、戦争法案の成立に躍起になっている。が、その足元では借金頼みの財政運営を続けている。先行きの見通しをごまかしながらの後は野となれ式の糊塗策は、確かな将来像に目を背けた軍事優先政治だといわざるを得ない。

数値目標はナシ

 6月22日、政府の経済財政諮問会議は、当面の予算編成や税制改正の指針となる「経済財政運営の基本指針」(骨太の方針)の「素案」をまとめた。それによれば、見込みでは18年度までに2・4兆円程度増える社会保障費を1・5兆円程度の増額に抑え、年度単位では5000億円の増加にとどめるとの目安を示した。



 この骨太の方針は、6月末に閣議決定する予定だ。具体的には、ジェネリック薬品の使用率拡大、年金給付額の抑制、介護サービスの引き下げなどだ。これまでと同様に、財政再建の鍵は社会保障費の削減だとのペテンを前提として、削減対象は社会保障費に集中している。


 今年の「骨太の方針」の最大のテーマは、2020年度に向けた財政健全化の具体的な道筋を示すことだった。これは、安倍首相が消費税10%への引き上げを先送りする場面で表明していた「公約」でもあった。その安倍内閣は、基礎的財政収支(プライマリー・バランス=PB)を20年度に黒字化する目標を掲げているが、18年度までの中間目標として、GDP比で1%(ほぼ5兆円)の赤字に抑えるとの目安も盛り込まれている。



 この素案には、歳出総額の目安を明記するかどうかで財務省と内閣府の間でつばぜり合いが拡げられ、結局首相の意向を斟酌して銘記しないことになった。「経済再生なくして財政健全化はない」という安倍首相の意を汲んだ甘利経済再生相や民間議員が、数値目標の明記には慎重だったからだという。歳出の「天井」をつくると機動的な財政出動が出来なくなりデフレ脱却もおぼつかない、というのが理由とされた。

 結局、社会保障費については3年で1・5兆円、一般歳出は3年で1・6兆円におさえたことを「基調」としつつ、それを18年度まで継続していく、とされた。これまでの歳出抑制を「目安」として盛り込むことで妥協が図られ、歳出削減の具体的な数値目標は盛り込まれず、玉虫色の決着となったわけだ。


砂上の楼閣

 今回の「素案」を見ると、安倍政権の無責任ぶりが露骨に現れている。

 世界一の借金大国での財政運営を考える時、恒常的な赤字解消は焦眉の課題であるはずだ。ところがこの素案には、財政改革などどこ吹く風、これまでの財政垂れ流しを正当化するために出したとしか受け取れないものだ。

 たとえば政策経費を税収で賄うというプライマリー・バランスの見通しだ。政府は18年度でPBの赤字を国内総生産(GDP)の1%、20年度にPBの黒字化を目指すとしている。しかし、この見込みがまったく砂上の楼閣なのだ。

 政府が上記の目標のために前提としている経済成長率は「名目3%、実質2%以上」だ。この数字を前提とすれば、GDPが年間で100兆円増え、税収は国・地方で22兆円以上増えることになる。

しかし、この間の「失われた20年」で名目成長率が3%を超えた年はない。現在の日本の潜在成長率は1%未満とされ、現に最近10年間の実質平均成長率は0・611%でしかない。後発国の追い上げや人口減少時代の到来などで、高成長はとても見込めないにもかかわらず、高めの経済成長が前提になっているのだ。アベノミクスによる官制相場で株価上昇を演出しているとはいえ、4月の実質賃金は、対前年度でマイナスだったと修正され、中小零細企業の賃上げは72%で実施されなかったことも公表されている。現実的にみれば、目標の達成などとてもおぼつかないのが実情だ。


軍拡政治

 長年続けた放漫財政で、国の借金も膨らみ続けている。14年度末の国の借金は1053兆を超えている。1年前より28兆円も膨らんでしまい、この10年では300兆円近くも膨らんでいるのだ。

 政府は、国の借金が増え続けているのは社会保障費の増加などだ、として、消費増税を強行した。が、社会保障費の増加は、国家財政で年間1兆円程度、この3年間では年間5000億円程度に抑制されているのだ。この程度の増加では、1年間で28兆円、10年間で300兆円もの借金の増加は説明できない。むしろ景気対策だとして大盤振る舞いを続けた公共事業費などの増加による影響のほうが遥かに大きい。

 アベノミクスで目先の経済の好調を演出することと同じように、財政再建は二の次、借金が膨らんでも公共事業などの大盤振る舞いは続いている。政治家は誰も歳出カットを言い出さない。
いくら財政再建を進めても、誰からも賞賛されず、利権確保に熱心な官僚にはそっぽを向かれ、関連業界などから反感を買うだけだからだ。

 安倍首相は経済成長による財政の健全化を掲げているが、実現がおぼつかない旗を掲げつつ、逆に景気へのテコ入れと称して財政の大盤振る舞いを続けているのだ。むしろ、当面の経済を官制相場で維持しながら内閣支持率を維持したい、それによってなんとか維持している底堅い支持率を背景に自身の野望としての軍拡を進めたい、ということなのだ。

 結局、財政再建を掲げてはいるが、やる気はまったくない。ばらまくのは税金や借金で、他人のカネだ。それを節約して支持率が落ちるぐらいなら、ドンドン財政をばらまいて人気取り(支持率)を続け、自分がやりたい軍拡政治を推し進めるだけ。これが安倍政治の本性だ。そのことがまたまた露わになった今回の「素案」でもある。(廣)