巻止車 | 吉祥寺の時計修理工房「マサズパスタイム」のスタッフブログ

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マサズパスタイムのスタッフが週替わりで日々の作業や、趣味などを綴っていきます。

皆さんお久しぶりです。佐々木です。

随分とブログの更新の方をストップしていました(笑)

 

最後に更新したのが5月だったので、もう2か月もたってしまったんですね。

親方からお目玉をもらってしばらく凹んでいましたが、、また今週から気を取り直してブログを始めていきますので宜しくお願い致します。

 

それでは今回のテーマは 「巻止め」 です。

 

 

写真は時計の香箱(1番車)です。

この中にゼンマイが入っていて、動力の元、車で言えばエンジンの役割をしている歯車です。

 

この香箱に、あんまり見慣れないパーツが2つついていますね(見慣れているという方はマニアです 笑)

これが巻止めと呼ばれる装置です。

一般的な時計では、巻止め装置は2つの部品で構成されますけど、それぞれ歯車のようなパーツをクロス、中心にある方のパーツをフィンガー(ピース)などと呼んでいます。

 

アンティーク時計に詳しい方でしたら一度は聞いたことがある名前かもしれません。

これは基本的にスイスやイギリス、ドイツあたりのハイグレードモデルによく見られる機構ですが、アメリカの時計ではあまり一般的ではありません。

 

ちなみにスイス時計でも、現行品の時計にはあまりついたもの多くないみたいです・・・

 

さて、この巻止めは、一体何の為についているか皆さんご存知でしょうか。

 

まず少しゼンマイのことを説明しておきます。

機械式の時計はゼンマイのほどける力で動く仕組みになっています。

機械式の時計を使用したことがある人なら分かりますが、リューズを巻いていると最初は軽く巻けますが最後のほうになるにつれ重くなっていくかとと思われます。ゼンマイが巻き絞られていくのでもとに戻ろうとする力がどんどん大きくなるからです。

 

これは当然といえば当然なんですが、

 

逆もまた然りで、巻いた直後のゼンマイは元の形に戻ろうとする力が強く、解ける直前は力も弱くなります。

 

この巻いた直後と解ける直前とに関してはゼンマイの力が不安定で、トルクの変動も大きくなります。

巻いた直後は極端に力が強く、解け際はヘロヘロになっちゃって、、、精度の調整も難しくなりますね。

ちなみに近年の合金ゼンマイは逆S字型の形状をしていてそのトルク変動は比較的均等化されていますが、それでも全く同じという

わけではないですね。

 

ゼンマイの力が安定している中間の部分だけを使えば時計の精度も安定してよくなるのに、、、と、そこで生み出されたのが巻止めです。

 

 

上の写真の香箱をもう一度見て下さい。

 

 

この時計の場合、ゼンマイが解けてゆくにつれて真ん中のフィンガーが時計回りに回されていってクロスの歯を送っていきますが、、、よーーく見るとクロスの歯が一つだけ他と違う形をしていますよね。

その一枚だけ違う形をしている歯がフィンガーの肩とぶつかることでゼンマイが完全に解ける前に巻止はロックされ、時計は止まるようになっています。

つまり、現状、香箱は巻止めによって完全にロックされていますが中に入っているゼンマイは完全には解けていなくて、力が残っている状態なんです。

(余談ですが、これに気づかずに一般的な時計と同じように香箱の蓋を開けると、、、ガシャっとゼンマイが飛び出しフィンガーも飛んでゆきますから要注意!)

 

 

ゼンマイを巻き上げるときも同じで、ゼンマイを巻き上げて香箱芯が4回転すると自然にフィンガーとクロスがぶつかって、そこから先に巻き上げができなくなります。

この時の感触は、もう本当に 「これ以上は絶対ダメ」 、っていう厳しい感じで、、、巻止めのない手巻き時計のような 「まだ頑張れば巻けそうだけど、もうそろそろダメだよー」 みたいな優しさ(?)はありません。

いずれにしても、これによって巻き上げきった直後の 「極端に強いトルク」 の発生を防いでいるんだから、ちょっとくらい厳しく感じても仕方ないかもですね。

中途半端な優しさはかえって相手を傷つけるって、このあいだ親方にも言われましたし、、、って、話しが完全にそれちゃいました。

 

 

さてさて、巻止めのデメリットを強いて上げるとするならば、まず一点は、稼働時間が制限されてしまうことです。

 

普通巻止めの装備されていない一般的な時計は30数時間から40時間以上動きますが、巻止めの装備された時計は平均30時間くらいに制限されています。

でも、いずれにしても一般的な時計も一日巻きであることを考えれば、30時間でも充分だとも言えますね。

 

もう一つ挙げるとするなら、部品点数が増えるので製造や修理の際に手間が増えてしまうことですかね。

作る方からすると、これがあるがために香箱の蓋には複雑な段差やネジ穴を作らなきゃいけなくなるし、クロスやフィンガーも作らなきゃいけない。

部品の寸法や形状が少しでも悪いと、クロスとフィンガーが干渉して時計が止まったりしますし。

でも無ければ、香箱の蓋は平面的なただの丸い板でいい。

だから、あるのとないのじゃ大違いです。

 

その他、整備や修理にも経験や手間が必要になりますけど、、、だからハイグレードモデルの時計だけについているんでしょうね。

(余談ですけど、今うちで開発中のパスタイム オリジナルムーブメントにも巻止めが装備されています。)

 

以上、巻止めはハイグレードモデルでもアメリカ製にはほとんどついていないですし、逆についていればどれも絶対高級っていうわけでもないみたいですが、、時計選びの際の目安の一つにはなるかもしれませんね。

 

それでは今回はこの辺で

さよならー

 

 

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