そこには永遠の彼方の星雲
揺すってみるが
うんともすんとも言わない
どの家でも静かに立っている
魂を保存するために
言葉を氷漬けにするために
棺は
ひとのためでなく
立っている
扉を開くと
肌寒い白い海がこぼれる
氷がとけると
クスクスからから
海流の流れる声が聞こえる
きみはまだ その世界を歩いているのか
わたしは既に 星と星の間を泳いでいる
ひとりが死に
またひとりが死に
北極海から流れ去り
アトランティックの歴史を語り
八万光年離れた星を
見ている
星が冷凍されるのを見ている
鋭い視線を感じ
わたしは
わたしの言葉をビニール袋に入れる
魂をプラスティックの青い箱に入れる
棺に
きちんと置くと
扉を閉める
深夜
女が棺の扉を開けるが
わたしの声を聞くことはない
わたしの魂を揺することはない
女の手は
わたしの肉体のような
牛蒡を取り出し
薄くうすく刃で切る
最後の芯を
女は泣きながら
噛みつづける

