「じゃあ、とりあえず
入院前に出来る限りの検査をしておきましょう。

採血と心電図、レントゲン、それからCT。」

と、N先生。


さっき別の病院で、告知されたばかりで
しかも、総合病院のハシゴです。

普通に考えても、クタクタです。
もう、身も心もボロボロです。

声を振り絞って?
いや、勇気を振り絞って?

「先生…今日はちょっと辛いので…
入院してからじゃダメですか?」

精一杯の抵抗です。


実は、ダンナはその日、
仕事をかなり無理して調整してくれていました。
しかし、最後の重要な仕事の時間が
近づいています。

不安で不安で…。
帰って欲しくない。
でも、仕事に行かないで欲しい
とは、どうしても言えません。


「早く帰りたい」
と言ってみましたが…。

「じゃあ…ちょっとだけでも良いから、検査しましょう。」

「…分かりました…」

すると、N先生は
すべての検査のオーダーをしました。


何故?


検査待ちは、やっぱり長いです。
途中ダンナは、どこかに行ってしまいました。

もう、ため息しか出ません。

「仕事の時間、大丈夫?」

「断ってきた。」

「でも…。」

「今は、そんな事言ってる場合じゃ無いやろ!
こっちの方が大事やん!!」


謝る事しかできません。


一人で帰るのは、あまりに辛かった。
ダンナが一緒に居てくれて、本当に良かった。


だけど、心は晴れません。

検査を受けたくなかった、本当の理由。
多分…現実を飲み込めなかった…。
そして、受け入れ無かった…

<ターミナルケア「否認」>





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