「無題」(2) | 新サスケと短歌と詩

新サスケと短歌と詩

短歌と詩を公開します。

「F高校文芸部詩集 木の芽 二号」(1967年11月・発行)より、僕の作品をアップする。


  無題 (2)

    新サスケ


最近 人類の目はみんな

とろんできたが しかし

いきいきした目もあちこちの隅にころがっている

漫画の少年や少女の目

置きものの蛙の目

人形の目

彼らの目が人類の目に取って替わり君臨しつつある

昨日も売店のさきに吊るされた

人形の眼球に出会って

一瞬、心臓が痛かった

一人の少女は驚きのあまり

トットッと二、三歩あゆみ

もう身動きもできない

そんなに大きくみいらかれた目だ

一人の少女はまぶたを垂れ

肩までの金髪とで

つながれたみたいに流される人間を

見下ろしていた

いつか人形や土の蛙だけが

いきいきした目で

世界中を

駆け回り

跳ね回るかも知れない