高村光太郎「根付の國」 | 新サスケと短歌と詩

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高村光太郎の詩集「道程」より、以下の詩を紹介します。


 根付の國

   高村光太郎


頬骨が出て、唇が厚くて、眼が三角で、名人三五郎の彫った

 根付の様な顔をして

魂をぬかれた様にぽかんとして

自分を知らない、こせこせした

命のやすい

見栄坊な

小さく固まって、納まりかえった

猿の様な、狐の様な、ももんがあの様な、だぼはぜの様な、

 麦魚(めだか)の様な、鬼瓦の様な、茶碗のかけらの様な日本人

                        ―1910年12月―


底本は、岩波文庫「高村光太郎詩集」、昭和40年15刷です。