青山雨子「蚊」 | 新サスケと短歌と詩

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短歌と詩を公開します。

青山雨子さんの詩集「暇な喫茶店」(2010年、書肆山田・刊)より、「蚊」を転載する。


     蚊

        青山雨子


蚊を手のひらで

叩いたら

蚊の人生はそれでおわり


人間の手をよけて育った蚊は

秋の台風に

女郎蜘蛛の腹と

キリンの足をもつ


大雨が降って

軒に


なき声の

大きさと

腹の大きさが

命取りになる


手のひらに


洗面所の

白い陶器を流れる

水道水で


蚊の足

キリンの足が

きれいに

横に並んでいる