問題は、私が東京(正確には横浜市)在住で、父を会社の代表にしているということだった。
問い
①なぜ、自分を代表にしないのか?
②前の会社を存続させればいいのではないか?
③親の財産が目当てではないか?
返答
①父に仕事の仕方を教わりたかったのと、父にもう一度、仕事の場に立って欲しかった。
父自慢ではないが、父は当時地元企業だったホンダに中学卒業と同時に入社し、それなりに活躍したキャリアを持つ。グローバル企業がどんなやり方をしているのか、私は就職したことがないので、組織的な運営について、少しでも教わっておきたかったんだ。
②事業内容が違うので、変更登記をするより、別法人としてやり直したかった。
(すでに廃業法人として処理されてると思うし)
③確かに援助してもらっているが、「事業は口実で実際にはやらない」のであれば、そもそも親を頼らない
実際、事業をやらないのであれば、借金するにしても生活立て直しに必要な分だけ、それよりフルタイムで働ける道を探す。つまり就職すればいいだけのこと。
私の年齢で正社員採用が難しいことは知っている。別にそんな面倒なことをしなくても、フルタイムのパート(というのは変だけど)で関東なら時給1000円×1日8時間×20日でひと月16万。私のような独り身のサバイバーであれば、十分暮らせる。
プラス、時々スタジオから編集のお仕事をいただいたり、便利屋のような感じでキャスティング業を再開してもいい。私一人なら、どうにでもできる。
何度も丁寧に説明して、公庫の担当さんにはわかってもらえたと思う。
次は、事業規模について。
『KiKEL』とは「音声が聞ける」ことを表すマークで、このKiKELマークと文字やイラストを組み合わせて個別化したKiKELマーカーを、専用の画像認識アプリで読み込むと、音声が再生できるというシステム。
KiKELマーカー
QRコードのイラスト版のようなもので、読み込む対象は音声データのみに特化している。
QRコードは見ただけでは何のデータかわからないが、KiKELは内容を表したイラストや文字で構成できるので、一目で内容がわかるんだ。
専用アプリは完成している。
そもそも融資が必要になったのは、マーカーを読み込むこのアプリの画像認識エンジンのプログラム利用料が年間370万円だったから。
アプリ開発当初、依頼したプログラマーが「テスト利用ば無料」というので、そのエンジンを使ってアプリを完成させてくれた。
私もミキサーも素人でよくわからないので、全てお任せしたんだ。まずは、机上の空論を実証しないと始まらない。
できあがってきたアプリは素晴らしく、そのままストアに公開することにした。
公開するにあたって、エンジンの利用料が年間370万円と判明。分割不可、つまり370万円が即金で払えない限り、アプリは公開できない。
私とミキサーで意見が割れた。
確かに、今の私たちにはかなりの負担。必要な経費はこれだけじゃないし、そもそもフリーアプリなので、直接お金を生む商品でもない。
だけど、このアプリは企画の大きな肝だ。自分たちで一から開発すると考えれば、はるかに安価だろう。
このアプリ無しで進めることも、QRコードを使えば、できなくはない。
けど、スタンプラリー始め、企画している内の7割は実行不可能。アニメ・声優関連は9割がたNGになる。
QRコードで小さく始めるか、KiKELで勝負をかけるか。
私は、KiKELでやれるだけやってみたかった。
それで、当初予定していた『電話応対マニュアル』(試作品は完成)では返済の見通しが立たない為、より収益性が高そうで、私の得意な「アニメと声優」分野で勝負することにした。
このアプリを使った「声優の声がキケル」シリーズとして、
・コロナ対応オリジナル企画「人気声優八福神」を全国各地で展開するスタンプラリー
・コンビニ出力「声がキケル声優ブロマイド」
・コンビニ出力「キャラの声がキケルアニメトレカ」
といった商品企画で、日本政策金融公庫に創業融資の申請をした。
『ラブライブ!サンシャイン!!』『僕のヒーローアカデミア』のアニメスタンプラリーの資料も付けた。
内訳
・画像認識エンジンプログラム利用料1年分(分割不可) 370万
・アプリリリース関連 50万
・声優の声が聞けるスタンプラリー制作費 500万
・作業用PC他ハード
・契約サーバ関連
・ファンサイト作成・運営
・通販関連 500万
で、1500万円。
決まればスタッフを募集して、人件費や作業用PCも必要になる。
実際には買掛の部分もあるので、制作費としていっきに500万出て行くわけじゃないし、スタンプラリーをイベント展開するための準備費用も含まれている。
台紙通販はアニメトレカが始まってからなので、売上と相殺しながら、返済も考えてこの金額に設定した。
担当さんは、「私はおもしろいと思います、いろんな使い道がありそうですね」と言ってくださった。
「ですが、おりるかどうかは上の者の判断なので」と続けた。
その後、コンビニ出力の取引予定証明が欲しいと言われた。
コンビニプリンタの代理店にお願いしところ、返信はなく、以降一切の連絡が途絶えた。
仕方ないので、ダメ元で私がスタジオグラッドとして取引契約を結ばせてもらっている大手代理店との契約書を送った。
部門違いなので有効ではないが、今後スタンプラリーを全国展開するにあたって代理店にご協力いただくので、代理店との取引実績は参考にしてもらえると考えたんだ。
さて、日本政策金融公庫の結果は、却下。
理由は、「実現できる感じがしない」だった。