住民、喜びと葛藤と 大間原発建設再開へ
朝日新聞:2012年10月02日
大間原発の建設再開を表明した北村雅良・電源開発社長(左)に対し、歓迎の意向を示した金沢満春・大間町長(右奥)=1日午前、大間町役場
電源開発の北村雅良社長は1日、建設凍結中の大間原発がある大間町と、隣接する風間浦村、佐井村を訪れ、工事を再開すると伝えた。商工関係者から喜びの声が上がる一方、風間浦村が難色を示すなど懸念の声が上がった。
北村社長は、大間町議会大間原発対策特別委員会で、この日から建設工事を再開させると表明。工事準備に入り、近く、現場での作業に入る。震災前の規模で本格工事が始まるのは来春ごろの予定という。
町議は、「建設再開ありがとう」「工事関係者はいつ戻るのか? 商工業者は興味がある」と歓迎。金沢満春町長も「非常に安堵(あん・ど)している」と述べた。
町内で表立って建設反対を訴える声は少ない。この日、再開反対を訴えるデモがあったが、参加は町民2人を含む6人だった。
ただ、町民の一人としてデモに参加した「大間原発に反対する会」会長の佐藤亮一さんは、「事故後、原発反対は確実に町内に広がっている」と話す。実際に、男性漁師(59)は「うちは親戚が町職員。小さな町で立場上、声は上げられないが、原発は本当にやめてほしい。漁師仲間に聞けば、みんな大反対だよ」と打ち明けた。
国に早期再開を繰り返し求めてきた町議の間にも葛藤が生まれているようだ。町議会の石戸秀雄議長は「町の将来、財政を考えれば、今回の再開は歓迎する。しかし、それは住民の意思すべてを反映したものにはならないかもしれない」と顔を曇らせた。
次に北村社長が訪れた佐井村で、太田健一村長は「よくここまで判断してくれた」と歓迎した。
一方で、ここでは村議からは唐突な工事再開に疑問の声も出た。「一般住民、漁民は原発に不安を持っている。住民の考えを聞いた中で(工事再開の)判断をすべきではないのか」。太田村長は今月中にも住民説明会を開き、住民の理解を求めたいという。
最後に訪れた風間浦村では、飯田浩一村長は開口一番、「防災避難道、避難施設が必要だと、前から申し上げている」と北村社長に告げた。村では、原発事故時の避難道建設の道筋が見えなければ「建設再開は認めない」としてきた。
蛸島敏春議長も「道路整備の道筋がつかなくては、村民は原発再開を理解しない。3町村が(建設賛成で)まとまっていないと、原発の成功はない」。八戸義之議員は「工事は再開していいが、完成するまでの期間に、道路の具体的な話をまとめて欲しい」と訴えた。
北村社長は「避難道のご心配は理解している。事業者としてお手伝いできるところはしたい」と、従来の主張を繰り返すのみ。委員会終了後、報道陣に「建設再開を容認する姿勢か」と聞かれた飯田村長は「議会と相談し、今後の対応を決めたい」と明言を避けた。
(鈴木友里子、長野剛、加賀元)
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