”シャッター通り商店街”を各地で見るようになって久しいです。
このようになった原因をイオンなどの大型店出店のせいにするのが一般的ですね。
私の地元の伊勢市もシャッター通り商店街が軒を並べています。
そして消費者の人たちも、イオンなどの大型店ができたから個人商店が寂れた、個人商店に行くよりイオンに行ってしまうから、と大型店出店を原因と考えているのが実情です。
はたしてそうでしょうか?
伊勢市のシャッター通り商店街にも、「虎屋のういろ」というのがあり、池袋の東武百貨店に出店していますし、ネット販売もやっています。
ほかでは味わえない食感があり。私も時々通販で買っています。
豊島区の自宅周辺にも、ぽつんぽつんと個人商店があるので、ついでの時に立ち寄っては買い物をして話を聴いています。
こういう個人商店は、歴史が長いところだと創業100年という店も珍しくないのに驚きました。
個人商店の豆腐屋さんを3つくらい訪ねましたが、一番歴史の浅い店が創業50年でした。
個人商店の肉屋さんも今のご主人の代になって30年くらい。
営々と栄えています。
肉屋さんのご主人が言っていました。
「ぼくは、30年近くの間、どうすれば美味しい肉を提供できるか、毎日毎日考えてました。今も考えています。20年くらい試行錯誤して、ようやく、これっという味を見つける事が出来たような気がします」
その店で売っていたローストビーフは、よくテレビで放送されるおかげ横丁の「伊勢肉」に勝るとも劣らない美味しさです。
昔、遠方から来た人たちを連れて何度も「伊勢肉」を食べに行きましたので、舌には自信があります。
鳥屋さんの店頭で「どれがお勧めですか?」と訪ねると、「このミンチカツを試してみて下さい。ぼくが工夫してつくった自信作です。是非、感想を聴かせて下さい」と言って、若い二代目か三代目が勧めてきました。
食べてみましたが、それほど違いがわからなかったので正直に感想を言いました。
「ぼくはまだまだぼくは未熟かな~」
と素直に反省して笑顔を見せました。
このように、生き残っている個人商店主の多くは、自分のできる範囲で”最高のサービス”を提供すべく日々悩んでは試行錯誤しています。
個人商店という限られた守備範囲内で、最高のサービスをお客様に提供する努力を欠かさないのです。
歴史の長い豆腐屋さんも、話してみるとどの店も一家言あり、商品に対する工夫と注いでいる情熱の数々を教えてくれます。
そして、どの店でも共通していることは、決して”不景気云々”を愚痴らないことです。
私にとっては驚きなのですが、どのお店の経営者も景気や大型店の影響を心配している風には見えません。
ただ、黙々と(人によっては嬉々として)、商品の質の向上を目指しているのです。
「虎屋のういろ」はシャッター通り商店街の入り口にありますが、他の商店主が大規模店出店反対に血眼になっている間も、(お付き合いはあったでしょうが)商品の品質向上を第一にしてきたように見受けられます。
商店主さんの中には、商店街の活性化を各方面に訴えてまわったり大型店の出店反対に熱意を燃やしていた人もいたようですが、自己破産という残念な結果に終わった人もいるようです。
店のサービスを向上させようという努力があったのかは不明です。
自分に与えられた守備範囲で顧客のためにできる最高のサービスを追及している店は、外部環境の変化に一喜一憂する必要がないのでしょう。
大規模店が出店してこようが景気が悪くなろうが、近隣の消費者や味を忘れられない消費者によって支えられた店はびくともしないという自信があるのかもしれません。
もちろん、街の電気屋さんのように、コモディティを扱う店はなくなっています。
そういう意味では、守備範囲内での最高のサービスができるのは、食べ物を売る店や店舗内で食べ物を提供する店に限られるのかもしれません。
もしかしたら、コモディティを扱う店であっても、品揃え等を工夫すれば”最高のサービス”を提供できるようになるのではと、期待していますが。
いずれにしても、自分の守備範囲で最高のサービスを顧客に提供するということこそが”王道”だと気づかされる今日この頃です。
出版不況、テレビ業界不況などと巷では言われていますが、読者や視聴者に最高のサービスを提供するという姿勢がなくなってしまうと、悪循環に陥るだけではないかと密かに憂いています。