コンクリート打ち放し壁に落ちる一条の光。それは闘う男の顔を横切って光を当てている。プロボクサー出身で独学で建築ということで異色の経歴がクローズアップされがちであるが、安藤建築の凄さは均整のとれたプロポーションと細部へのこだわり、ミニマリストといってもいい、に尽きると思う。コシノ氏が言うように多分居住空間の快適性とは無縁であり、居住者に空間との格闘を要求し続ける、でもそれでも手に入れたい美学的で眩惑的な空間なのだろう。ユークリッド幾何学の建築への優雅な適応といってもいい。コルのように近代建築5原則を作ったわけではなく、プログラムやシステムとはおよそ無縁な建築家だろう。そちらは伊東豊雄やSANNAに任せて置けばいい。光の教会のモックアップは感動する。ギャラ間で体験した住吉の長屋に続く原寸とディテールに触れる瞬間だった。さて「挑戦」の矛先はどこに向けられているのか。いつまでも闘う建築家としてストイックにカーンやコルのように建築家という生き方を全うして欲しいと思うのは幸いにして同時代を生きた人間としての願いである。