『ナラタージュ』を観てきました | mj23のブログ

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映画、音楽、アート、建築、本、演劇、ワールドサッカーなど今まで出会って来たおもしろいことや最新のものにフォーカスして自分のことばで紹介して行きます

いじめや仲間はずれからくる中高生の自殺や過労による心の病にかかって自死の道を選ぶ若者は今でも後を絶たない。社会現象として常態化しているとさえも言える。ケータイやスマホの誕生により24時間連絡を取り合うことができ、寝ている時にも周りでどんなことが囁かれているかもわからない、ままならない世の中になってしまった。ほんの10年くらい前の原作だが今とは随分と空気感が違ってウェットな感じがする。地方を舞台としているからなのかもしれないが。現代の方がドライで重く巧妙な悪意が蔓延っているような気がする。土砂降りの雨と足元の靴や裸足や海辺のシーンが特徴的な作品だ。演劇と高校の先生との出会いが死を選ばなかったヒロインに与えられた使命であり、妻の心の病を直視しようとしなかった教師に安息の日々を与える役割を担うことになる。レイプされた女子高生は最終的に死を選ぶまで追い詰められるが教師も部員やOBたちも無力でありなんの力にもなっていない。教師も主人公もお互いを巧妙に利用し、他人が踏み込めない世界を密かに作ってしまっている。それは真夜中に突然かかってくる電話のように周到であり不吉でさえもある。人は人を救うことができるのか、困っている隣人がいたら手を差し伸べなくてはならないのか。人間の心理描写や音楽を省いて沈黙が画面を支配する。このヒロイン役は難しい役所だったと思う。陳腐な恋愛映画に落ちることなく、ギリギリのところで止まっているのは抑えた演出と映像の美しさのせいなのかもしれない。映画