「春の息吹と大地の躍動、そしてランニングとチャイコフスキー」
新横浜まで走って行く途中の緑道で、
再びチャイコフスキーが聴きたくなり、
前回同様、作品35を聴き始めた。
前回よりもさらにいい感じで、
物凄く感動し、自然と両手を下げて手のひらを広げながら走っていた。
何で自分はこんな事をしてるのかな?と思ったところ、
そうか、緑道を走っているからだと気付いた。
花が咲き始め、虫が動き出し、
暖められた大地が明らかに躍動している感覚。
その感覚を受け止めたいが故の姿勢。
チャイコフスキーの音楽は北の大地で生み出されたもの。
春を待ち望む感覚は日本人よりも遥かに遥かに強く、
それは日常生活の至る所に現れる。
春が近づいている季節にアウトドアに行き、
チャイコフスキーを聴きながら走っていると、
大地の躍動を強く感じる。
春の息吹は、最初は分からないほどゆっくりと、
もしかすると永遠に来ないと思わされるほど弱く遅い。
しかしその息吹を感じた!と思った瞬間、
それは加速度を伴ってやって来る。
一気に春はやって来る。
咲き乱れる花々と飛び交う蝶と。
ランニングとは、
生身の人間が出し得る最高速度で駆け抜ける行為。
作品35のスピード、春の到来の速度、ランニングのテンポ。
これらが重なった時、
とんでもない感動に襲われた。
間も無く目的地の新横浜に到着する頃、
第3楽章、アレグロ・ヴィヴァチッシモが始まった。
思わず速度を上げる。
広大な鶴見川の河川敷に展開するスポーツ施設や遊水公園はロシアの大地にかぶる。
その先に見えるビル群の姿は、
現代のロシアの愚行ともかぶる。
それでも、いいものは、いい。
春の訪れも、ランニングのスピードも速ければ速いほどいい。
このニ長調の音楽の速度はそれに充分過ぎるほど応えてくれる。



