本日の論文は、Tiotropium in Early-Stage Chronic Obstructive Pulmonary Diseaseで、中国の論文です。スピリーバをGOLDの初期であるステージIとIIに使用した初めての論文であり、今日はスピリーバの効果について議論しました。
GOLD(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease)は、グローバルスタンダードでありステージがIからIVまであり、その基準は、スパイロメーターで検査されます。
I 軽度の気流閉塞 (%FEV1 > 80%)
II 中度の気流閉塞 (50% < %FEV1 < 80)
III 高度の気流閉塞 (30% < %FEV1 < 50%)
IV 極めて高度の気流閉塞 (%FEV1 < 30%)
* FEV1:1秒量(最初の1秒間で吐き出せる息の量)
*FVC:努力肺活量(思い切り息を吸ってから強く吐き出したときの息の量)
*FEV1%:1秒率(FEV1値をFVC値で割った値)
*%FEV1:対標準1秒量(性、年齢、身長から求めたFEV1の標準値に対する割合)
ちなみにCOPDが閉塞性に対し、吸気が困難な拘束性肺疾患に間質性肺炎があげられます。
まとめた図で示すと、Aが拘束性、Bが混合性、Cが正常、Dが閉塞性になり、スパイロメーターでしっかりと診断することが、正確な治療につながります。
余談が過ぎましたが、論文に入っていきます。
早速ですがPICOです。
P:GOLDのステージIとIIの患者
I:スピリーバを1日1回16μg吸入
C:プラセボを1日1回吸入
O:ベースラインから24カ月後のFEV1の減少量をプラセボと比較
次に結果です。これが非常に解読しにくいので頑張ってください。
縦軸がFEV1ですので、高いほうが、肺機能が高いです。
横軸は時間で24カ月間モニタリングしています。
検査は、ベースライン、1、6、12、18、24カ月後の6時点です。
各検査時点で、サルブタモール(β2刺激)を吸入する前後の2回の検査を行います(実線がサルブタモール吸入後、点線がサルブタモール吸入前)。なぜここでサルブタモールが出てくるかが不可解ですが、こういう試験が一般的らしいです。プライマリエンドポイントは、「吸入前」ですので、点線の赤線と青線を比べたものになります。
この結果から、吸入開始1カ月間は、スピリーバの効果が見られ、1秒率が改善していますが、その後は効果が薄れ、プラセボ同様に1秒率が低下し続けることが理解できます。
他の結果です。縦軸はCOPDの悪化を示した患者の割合を示しており、やはり最初は悪化を遅らせたものの、その後の悪化スピードはプラセボと変わりないように見えます。
この他に入院した患者の割合を示した結果もありますが、同様の結果となっております。
最初の1カ月間の効果がデータを引っ張ているので、スピリーバ群とプラセボ群の間に有意差が現れ、スピリーバの効果が如何にも有用であるように示されておりますが、ちょっとだけ呼吸を楽にするだけであると読み解けます。
それもそのはずです。COPDは肺胞に障害を来す疾患であり、気管支を拡張するスピリーバは症状を緩和するだけで、肺胞を回復させる薬ではないのですから。
残念ながら現在では、肺胞を回復させる薬はなく、スピリーバを使用しても、死亡率は一切変わらないというのが現状であり、製薬会社はこの事実をひた隠しにしています。
ではCOPDの患者にはどのようにアドバスをすべきでしょうか。
まずはCOPDを悪化させる原因を除去する。つまり禁煙です。
禁煙は近年益々推奨されており、禁煙外来では間に合わない時代が来るかもしれません。薬局で禁煙をサポートする時代がすぐそこまで来ているかもしれません。
次に食事についてです。
COPDの特徴は、酸素は吸えるが、二酸化炭素を出すことが困難な状態になっています。
つまり、二酸化炭素の体内での発生量を抑えることが重要になります。
何を節制するのか?
糖質です。
C6H12O6 + 6O2 → 6CO2 + 6H2O
糖質は代謝すると二酸化炭素を発生するからです。
糖質制限で、症状が楽になったという実例を先生が示してくれました。
薬も栄養も科学に基づいて考えていかないといけませんね。
長文になりましたが、今回学んだEBMが今後のCOPD患者に対し、一歩進んだ対応が出来るようになる、とても有意義な勉強会でした。