ひさびさの更新です。


先週と先々週に東京で試飲会があり、ちょっとドタバタしておりました。


その試飲会の会場でよく質問された内容がありました。


「もち米でお酒を造る!?珍しいですね・・」

「どうやってもち米でお酒を造るんですか?」

「もち米じゃあ、お酒は造れないんじゃないの?」 等・・・


今回だけでなく、必ずと言っていいほど、聞かれる質問です。


しかし、いつもその場の口答のみでしか回答しておりませんでしたので、弊社がもち米を使用する経緯と

どのようにしてもち米を使用するのか、もち米を入れるとどうなるのかをご説明したいと思います。


1.弊社がもち米を使用する経緯・・・

  お酒は昔から色々なお米で仕込んで造られてきました。その中で、もち米もお酒に造るために使用されてきました。特に、戦時中や戦後では、食べるお米も非常に限られていた中で、お酒を造っていたため、もち米を使用してお酒を造るところも多かったと聞いています。

  戦争も終わり、お酒を造るために特別に育てられた酒造好適米の登場で、お酒に使用する米もどんどんそちらに流れていき、さらに、もち米の特性として、もち米はうるち米とは異なり、蒸すことにより、米同士がくっつく特性があり、麹造りにはもちろん、仕込に使用する掛米に対しても、蒸したお米を冷ますために、手でいじるため、くっついてしまいお酒に仕込むのも大変だったため、もち米を使用する蔵も減少していきました。


  そして、もち米の減少に拍車がかかったのは、新潟のお酒に代表されるような「端麗辛口」のお酒です。すっきりとしたお酒を造り上げるためには、もち米のように通常の酒造好適米と違う味わいのあるお米では、どうしても複雑な味わいを感じてしまうことがあるため、なかなか世の中に受け入れてもらえなくなり、もち米でお酒を造るのはとても厳しい状態になってしまいました。


  その中でも、私の祖父が「他と同じことをやっても駄目だ。もち米を使用してお酒を造ることだけは止めるな」という遺言があり、その遺言通り弊社では、もち米をお酒に使用する造りを続けております。


2.どのようにしてもち米を使用するのか・・・

  先ほども、記述いたしましたが、もち米はお酒を使用するのに適さないといわれていますが、お米が十分になかった時代は使用していました。では、どのようにしていたのか、弊社では2つの方法があり、1つ目は技術革新によって出来上がった方法と、2つ目は今弊社の中で新しく取り入れられている方法です。

  

 1つ目 もち米四段仕込!

  *四段仕込というのは、お酒は通常1日目・添え(1段目)、2日目・踊り(休み)、3日目・仲(2段目)、4日目・留(3段目)と4日間かけて三回に分けて仕込む三段仕込という方法を取っており、四段仕込というのは、この後のモロミ期間で、さらに米を投入して仕込むことを指します。その数が増えていけば、五段、六段と増えていきます。


  この方法は、もち米を糖化酵素により甘酒にして、モロミの中に入れるという方法です。うるち米を糖化酵素で甘酒にして、モロミの中に入れるという方法が多くの蔵でも使用しておりますが、もち米を使用している蔵は少ないと思います。この方法はどちらかというと、お燗にした時に、味が薄くならないようにするために、考えられて造り上げた方法です。


 2つ目 もち米熱掛四段仕込!!

  

  名前の通り、もち米を熱いままモロミの中に放り投げる方法です。この熱いままにモロミに入れるというのが非常に重要です。熱いままモロミに入れることにより、もち米自身が溶けている状態になっているため、モロミに入れるとそのままモロミの中でもち米が勝手に溶けていくという特徴があります。


  さらに、モロミの中にはお米を糖分に変更する酵素やその糖分を栄養源としてアルコールを出す酵母が存在しています。弊社の四段仕込はモロミの終盤に行います。その頃になるとモロミの温度も低温になっているため、酵母のアルコール発酵も止まりかけている状態になっています。その中に熱いもち米を投入することで、一気に温度が上昇します。どのくらい上昇するかというと、4℃~5℃程度です。お酒造りは、温度管理が重要で大体一日かけて温度変化するのは、1℃ぐらいに留めて、さらにモロミの終盤というのは、酵母も元気がなくなってきて、急激な温度変化が起こると、お酒に悪影響を及ぼすといわれております。その中で、かなりの温度上昇があるため、お酒造りには大変勇気がいる方法ではあります。


  その温度の上昇により、モロミの中の酵母や酵素再び活性化して、アルコール発酵や糖化を始めます。その作用により、もち米も溶かされ、モロミの中に溶け込んでいくいう形になります。


  ◎熱いままもち米を入れて、溶けている状態でモロミに溶かす。

  ◎モロミの温度上昇によって、酵母や酵素が活性化して、もち米を溶かし、お酒を造る。


  この2つの要因が、もち米の味わいをお酒に浸透させてくれます。


3.もち米を入れるとどういう味わいになるのか・・・

  この手の質問は非常に困ります。


  まずは、呑んでみてください(笑)弊社に来れば、試飲も出来ます。


  これらが弊社のもち米四段仕込みともち米熱掛四段で仕込んだお酒です。


創業明治3年、丸世酒造店のホームページへようこそ。

左から順に

1.もち米四段仕込 本醸造 勢正宗 (23BY)

2.もち米四段仕込 しぼりたて生原酒 勢正宗(24BY)

3.もち米四段仕込 普通酒 勢(23BY)

4.もち米四段仕込 おり酒 旭の出乃勢正宗(24BY)

5.もち米熱掛四段仕込 純米原酒 旭の出乃勢正宗 びん燗火入(24BY)

6.もち米熱掛四段仕込 純米原酒 旭の出乃勢正宗 無ろ過生原酒(24BY)

7.もち米熱掛四段仕込 本醸造 旭の出乃勢正宗 びん燗火入24BY)


  やはり自分で体験して、もち米のお酒はこうなのかと感じ頂くのが一番だと思います。

  この質問の答えは、自分自身で探してみて下さい。私自身もまだ答えを探している途中であります。