金魚達にビタミンをと、カボチャに味を付ける前にどんぶり一杯取り分けて置いた。

「あの方達が好きですから。」

亭主は、カボチャが嫌いなもので
「あの方達に、これで足りますか?
なんなら全部あげたらどうでしょうか?」
と言ってきた。


金魚にカボチャを塊で与えておくと、しばらく大人しいので良い。
ただ皮は残すので取り除く。

特にらんちゅうの類が、カボチャが大好きだ。


10月10日の井ノ口養魚場の販売会では、特筆すべきステラさんの桜錦が出る。

それは、是非とも購入すべき桜錦である。
なぜなら、昨年のウエーブ品評会で日本一を取った名人であるし、桜錦が肉感的で美しく可愛らしい!


うちのも井ノ口名人の桜錦を使っているのに、作品の出来がこうも違うと悔しい、ごまめの歯ぎしりをした。



しかもステラさんは、非常に人間が良いので金魚の性格も良いに違いない。
金魚の性格は、作った人に似る。
優しくって思いやりがあって、ババアにも嫌な顔一つせず付き従うの人物だからだ。


第一、ヤングでババアやジイサマを毛嫌いして関わりを持たないのはみすみすチャンスを失うと言う事だろう。
ビジネスチャンスは、その辺でメシを食っている見知らぬジイサマからって事が往々にしてある。
チャンスは、人からもたらせる訳で、このコロナの人と会うなキャンペーンでは、不景気にもなる訳だ。


とにかく、昨年ステラさんにはババアの金魚を選ぶミッションを与えて、嫌な顔一つせず付き従う姿に感銘を受け、ステラさんの桜錦買え買えキャンペーンをやろうって思った訳。

ごまめの歯ぎしりだけど、うちの桜錦よりもずっと良いぞ。


金魚を育てる人って、ヤサヤサしていて、繊細で神経質な所もあって、背中がチョイと前に傾いていて。
話をしてみると良い人が多いので人見知りが多いんだろう。


うちの金魚は、常に飼い主を見張っていて、自己主張が激しく、しつこい性格だ。
何を考えているのか一目瞭然だ。

それは私の性格に類似している。
私はアメリカ人に
「あんたは非常に理解しやすくて他の日本人とは違って付き合い安い。」
と言われ、外人に良く好かれる。

アメリカ人に理解し易いと言われ、当時は若くては気分を害したものだ。

日本で生きやすいのは、腹芸の出来るヒトね。
本音と建て前が違って当たり前。
何考えてるか腹の内を見せちゃ日本人失格だ。


だから、らんちゅうのジイサマのらんちゅうのような性格の金魚が日本人にもてはやされるんだろう。
ジイサマのはらんちゅうだって、腹の内を見せないからね。


とにかく金魚も性格が育てる人に似るから、良い人から買えって事だ。

「ライプチッヒのように、金魚を化け物にしてしまう才能があなたにはあります。」
亭主が騒いでいた。




そういやライプチッヒは、もう寿命の年だね。
たくさん子供を産んで、家を水泡楽園にしてくれたね。
もう未亡人になってずいぶん経ったねえ。
暑さ寒さに異常に強く病気になったこともない、さすがに熱帯埼玉県からお迎えしただけの事はありますわ。


自分の家よりも熱帯地方からお迎えするのもナイスアイデアだ。
とにかく、金魚をお迎えするのに飼い主の顔をしっかりと見て、人物観察も欠かさない!

「ひょっとしたら、金魚って血筋とかブリーダーとか色々すごく調べるじゃん?
あそこの家の海の王子夫妻よりも金魚の方がしっかり身元調べるじゃん?
人間がさあ、金魚以下になっちゃいけないよねえ。」
とあそこの家と比べるまででもないが、金魚は血筋、ブリーダーをしっかりと観察すべきものだと自分の意見を述べた。


それが良ければ、私のような素人でも病気にもせずに寿命を全う出来る。

ああ、ステラさんの桜錦、私も買いたいなあと大量にある舟の数を数えて、ならぬものはならぬもう増やせません!とため息をついた。