文科省「PTA会費に関する通知」を読む 資料編2(逐条解説) | まるおの雑記帳  - 加藤薫(日本語・日本文化論)のブログ -
2012-08-12 00:14:06

文科省「PTA会費に関する通知」を読む 資料編2(逐条解説)

テーマ:PTA問題の実際的解決をめざして
文科省による「PTA会費に関する通知」では、関連する法規として、地方財政法の次の三つの規定が参照されている。

<1>第四条の五(割当的寄附金等の禁止)
<2>第二十七条の三(都道府県が住民にその負担を転嫁してはならない経費)
<3>第二十七条の四(市町村が住民にその負担を転嫁してはならない経費)

このエントリでは、その逐条解説(『新版 地方財政法逐条解説』ぎょうせい、平成12年)における論点を追ってみたい。
著者は、当時の自治事務次官 二橋正弘氏と、当時の元自治事務次官、元内閣官房副長官の石原信雄氏。

この逐条解説、とっても分かりやすく、頭の整理ができたように思います。結論先取りのもの言いになってしまいますが、これを読んで、文科省の通知に対する違和感に根拠が与えられたように思っています。


以下、条文を示し、その後に『新版 地方財政法逐条解説』中の解説を抜き書き的に引用します。なお、引用部分の後に当方のコメントを付けることもあります。


<1>第四条の五(割当的寄附金等の禁止)
国(国の地方行政機関及び裁判所法 (昭和二十二年法律第五十九号)第二条 に規定する下級裁判所を含む。)は地方公共団体又はその住民に対し、地方公共団体は他の地方公共団体又は住民に対し、直接であると間接であるとを問わず、寄附金(これに相当する物品等を含む。)を割り当てて強制的に徴収(これに相当する行為を含む。)するようなことをしてはならない。

(引用1-1)
元来、寄附金は、自発的・任意的なものであるべきであるが、戦後においては、国・地方公共団体・住民の間において、寄附金の名目に隠れた負担の強制的転嫁が甚だしく、これが財政秩序を乱す重大な原因ともなるおそれがあることにかんがみ、設けられた規定である。(p.43)

まるお:「寄附金の名目に隠れた負担の強制的転嫁が甚だしく」のところに注目です。
やや脱線しますが、「本来自発的・任意的なものであるべき『寄付』が強制される」という構造は、PTAに認められる「ボランティアの強制」と瓜二つではないでしょうか。



(引用1-2)
寄附金の強制徴収は、直接又は間接を問わない。間接的徴収とは、何々後援会のごとき媒体を設けて目的を達しようとする方法を指す。(p.43)


(引用1-3)
「割り当てて強制的に徴収(これに相当することを含む。)するようなことをしてはならない。」とは、一体的な観念と解されている。すなわち、「割り当てる」ということは、当然、強制の意味を含むものであるので、本条はこの「割り当てる」行為自体を禁止し、あわせて「強制的な徴収(これに相当することを含む。)」を禁止しているのである。したがって、割り当てをしても強制的に徴収さえしなければよいと解してはならない。(p.44)

まるお:太字の部分に注目です。「PTA会費の中から学校への寄附を行う行為」は、結果として、各家庭への「割り当て」になるのではないでしょうか?


(引用1 -4)
「強制的に徴収」とは、権力関係又は公権力を利用して強圧的に寄附をさせるという意味であり、応じない場合に不利益をもたらすべきことを暗示する等社会的心理的に圧迫を加える場合も含むものである。(中略)
 しかしながら、本条は、割当的寄附金の強制徴収を禁止するにとどまり、篤志家の寄附のごとき真に自発的な寄附金を禁止するものではない。(p.44)

まるお:寄附の強制を禁止しているものなのだから、「真に自発的な寄附金を禁止するものではない」との指摘は蛇足のようですが、この注意は関連する条文の解説の中にも繰り返し出てきます。それだけ抜け落ちやすい論点ということかもしれません。


(引用1-5)
住民と地方公共団体との関係について、本法第二十七条の三及び第二十七条の四の規定があり、これらの規定に定められている経費は、割り当てて強制的に徴収する方法でなくても、住民に対して負担を求めてはならないものとされている。ただ、住民の側からする真に自発的寄付は、何ら禁止するものではないことは、先述したとおりである。(p.50)

まるお:「負担を求める」とは具体的にどのような行為を行うことなのかはつまびらかにされていませんが、「学校・行政側からの協力の要請は一切行ってはならない」という理解でよさそうに思います。では、なぜ「負担を求めてはならない」となったかは、次の引用2-1を参照。


<2>第二十七条の三(都道府県が住民にその負担を転嫁してはならない経費)
都道府県は、当該都道府県立の高等学校の施設の建設事業費について、住民に対し、直接であると間接であるとを問わず、その負担を転嫁してはならない。

(引用2-1)
住民に対する強制的寄附金等は、市町村に対する場合と同様、すでに、第四条の五において禁止されているのであるが、当該寄附金が強制的なものであるかどうかは実際の問題としてかなり判断の困難な問題であり、現に自発的な寄附金であるという理由によりかなりの負担が課されている実状であるので、このような事情を考慮し、実質的に住民に負担の転嫁となるようなものをすべて禁止することとするため本条が新設されたのである。
 ただし、特定の個人又は法人が寄附をする場合のように真に任意的な寄附金は本条規定外であると考える。(p.233~234)
(改行、引用者)

まるお:四条の五があるのに二十七条の三と四がなぜ設けられたかが説明されています。強制と任意の境目はかなり微妙なので「実質的に住民に負担の転嫁となるようなものをすべて禁止」した、とのこと(引用1-5参照)。


(引用2-2)
なお、二十七条の二では「負担させてはならない」と規定し、本条では「転嫁してはならない」と規定しているが、両者の違いは、前者は自発的なものを含めて一切の負担を禁止しようとするものであり、後者は自発的な寄附金までも排除しようとするものではないという点にある。(p.234)

まるお:条文中の文言の使い分け(「負担させてはならない」と「転嫁してはならない」)についての解説。この解説により、第二十七条の三と二十七条の四にあっても、「自発性・任意性の有無」が違法・適法の分かれ目となる重要なポイントであることが理解されます。


<3>二十七条の四 (市町村が住民にその負担を転嫁してはならない経費)
市町村は、法令の規定に基づき当該市町村の負担に属するものとされている経費で政令で定めるものについて、住民に対し、直接であると間接であるとを問わず、その負担を転嫁してはならない。

(引用3-1)
本条制定時にあっては、地方公共団体の住民が、P・T・A関係寄附金、自治会等会費、その他土木・消防等の寄附金等多額の税外負担を事実上強制される状況が多くあり、税外負担は国民負担の均衡上も、過重負担の合理化の面からも、また地方財政の構造上からも 多くの問題を含むものであり、改善が強く要請されたものであるが、その後、本条の趣旨に沿って、改善が進められてきている。(p.235)

まるお:問題にされているのは、「明々白々な強制」ではなく、「事実上の強制」であることに注目しておきたいと思います。


(引用3-2)
「直接であると間接であるとを問わず」とは、個々の住民から直接負担金、寄附金等を徴収することはもちろん、P・T・Aとか自治会等を通じて徴収することも許されないとの意である。また「負担を転嫁してはならない」と規定されているのは、本法第四条の五に地方公共団体が他の地方公共団体又はその住民に対して寄附金を割り当てて強制的に徴収してはならない旨規定し、割当的寄附金を禁止しているが、従来税外負担といわれていたものは、実質的には強制的であっても、形式的には任意的な形をとるものが多いので、第四条の五で禁止されていない形式的に任意的な形をとる税外負担について禁止しようとしているのである。(p.235)

まるお:ここにおいても、問題は、「形式的な強制性ではなく、実質的な強制性の有無」なのだと強調されています。また脱線しますが、「形式的に任意的な形をとる税外負担」というのは、PTA問題の本質を言い当てているように思います。


(引用3-3)
市町村が住民に負担を転嫁してはならない経費の範囲は、本法施行令第十六条の三に定められているところである。その内容は、
 (1) 市町村の職員の給与に要する経費
 (2) 市町村立の小学校及び中学校の建物の維持及び修繕に要する経費
とされている。
 (1) の「市町村の職員」とは、一般職の職員、特別職の職員を通じ臨時職員その他名目のいかんを問わず市町村に雇用されているものをいう。したがって、とくに税外負担で問題になっている学校関係において、学校教育法第二十八条第二項に規定する「その他必要な職員」例えば用務員、学校給食調理員、学校図書館の司書等も当然これに該当する。

 (2) の市町村立の小学校及び中学校については、建物の維持修繕に要する経費のみを禁止の対象としており、建物の建設費については禁止の対象から除外されているが本条の趣旨からみて、建物の建設費についても一般的にはこれを住民に負担転嫁することは許されないものと解すべきである。次に建物とは、校舎・屋内運動場はもとより、校地内にある校用建物(例えば別棟の学校図書館・集会場・屋内プールの上屋など)を指すものである。「維持修繕に要する経費」の概念に含まれるものとしては、まず「維持に要する経費」として、学校の建物の維持管理のための経費、すなわち、火災保険料・電灯料・水道料・管理用消耗品等の経費が考えられる。また、「修繕に要する経費」としては、通常の破損の修理とか壁の塗替え等に要する経費、修繕に要する消耗品の購入費などが考えられる。(p.236)
 


次のエントリでは、以上の逐条解説の論点を踏まえつつ、文科省の通知に対する私なりの疑問をまとめてみたいと思います。

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