横浜市教育委員会のPTA入会に関するスタンスへの疑問 (いじめを産み出す懸念) | まるおの雑記帳  - 加藤薫(日本語・日本文化論)のブログ -

横浜市教育委員会のPTA入会に関するスタンスへの疑問 (いじめを産み出す懸念)

(珍しく連投です…。)
横浜市教委は、PTAへの入会に関して、横浜市の保護者・市民に対して次のように述べている。

*****
<回答>
(前略)
PTA費は学校運営の中で児童全体にかかる事柄に使われ、児童個別ごとに分けることが難しいものであり、原則PTAの加入は任意ではありますが、全員加入をお願いしているところです。
(後略)
<問い合わせ先>
教育委員会事務局北部学校教育事務所指導主事室
<公表日>
2011年4月4日

「横浜市『市民の声』の公表」より
http://cgi.city.yokohama.jp/shimin/kouchou/search/data/23000503.html
(太字化、引用者。以下、同)
*****
注:なお、ここで「学校運営の中で児童全体にかかる事柄に使われ、児童個別ごとに分けることが難しい」とされる「PTA費」の具体的な使い道としては、「例えば、学校と地域が連携した活動を行う場合や運動会において全児童に配布する参加賞などで、一部PTA会費から負担されるものがあります。」と回答されている(5/6付回答)。
http://cgi.city.yokohama.jp/shimin/kouchou/search/data/23000503.html


この横浜市教委の発言にはいくつも疑問のところがある。
順に見ていきたい。

「PTA費は学校運営の中で児童全体にかかる事柄に使われ」の部分について

横浜市教委も100%同意してくれるものと思うが、PTAは教育委員会・学校とは独立した、社会教育にかかわる一「任意団体」である。このことを踏まえて言いたいが、PTAの会費の使い道を教委が【あらかじめ】限定してしまうことは、社会教育法第12条に触れないのだろうか。
※社会教育法第十二条  国及び地方公共団体は、社会教育関係団体に対し、いかなる方法によつても、不当に統制的支配を及ぼし、又はその事業に干渉を加えてはならない。

会費の使い道は、単位PTAごとに、またその年度ごとに総会等において決められるべきものであって、教委があらかじめその使い道に言及することは同法12条に言う『行政による不当な干渉』に当たると思われる。


「児童全体にかかる事柄に使われ、児童個別ごとに分けることが難しいものであり」の部分について

その具体的な使い道についての言及を見てみると、「運動会等において配布する参加賞など」とされている。「運動会の参加賞」等が義務教育上どうしても必要だと教育当局として判断するなら公費で工面するのが筋であろうし、予算の問題があるなら参加賞を配布しないという選択肢だってじゅうぶんにありうる話だ。
また、ドリルやハーモニカの類と同様、各家庭に費用負担を求めるという選択肢だってある。
どう考えたって、「運動会等の記念品」等の存在が「PTA全員参加体制」を正当化するとは思われない。


「原則PTAの加入は任意ではありますが、全員加入をお願いしているところです」について

①と②の主張を踏まえての教委としての結論部分である。

横浜市教委のロジックとしては、

イ.PTA会費は学校運営上必要な経費として使われている。
ロ.よって、全員に入ってもらわないと困る。

ということのようだ。

イの部分についての主張が説得力に欠けることは先に述べたとおりだがそこは今は横に置き、ここではロの部分に焦点を当てその問題点に触れたい。

つまり、教委が保護者・市民に対して、「PTAに入ってもらわないと困る」と明確に意思表示をすることの問題についてである。

横浜市教委のロジックによれば、

「PTAに入らない自由はあるが、PTAに入らないような保護者は学校運営に対して非協力的な人間である」

ということにならないだろうか?
こうした「価値観」は、非会員の保護者やその子どもに対するいじめや「非国民」呼ばわりにつながりかねなく、非常に「危ない」価値観だと思う。


私はなにもいたずらに自由や権利を振り回しているつもりはない。
しかし、改めて申すまでもなく、「行政による国民・市民の自由に対する制限」は、法に基づいてなされなくてはならないはずだ。
その点で、PTAへの参加・会費の支払いは、法的な根拠に基づく「給食費の支払い」とは全く異なるものであることを、今さらながらではあるが、強調しておきたい。

法律に基づくことなしに行政が国民・市民の思想・信条・行動の自由を侵そうとすることは、憲法99条違反の疑いもあるのではないだろうか。
※日本国憲法第九十九条  天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。


「全員加入をお願いしているところです」の部分について

教委が「全員に加入を要請」した場合、よく教委一般が持ち出す、「PTAと教委・学校は別団体だから、何か問題があったとしても内部で解決してください」といった言い分は通らなくなるだろう。
「入ってください。」とお願いしておいて、「何があろうと知りません」は通らないはずだ。
「お願い」には当然責任が伴うのである。

もしも、今後も、全員への加入要請をやめないと言うのなら、役職の強要等の人権侵害的な行為に対して、ぜひ責任ある対処を要請したい。


横浜市教委は、一昨年に開催された文科省後援のPTAシンポジウム(@横浜市)等を受けて、PTAへの加入が任意であることを市P連での集まりや校長会等において周知するなど、いっぽうで頭の下がる動きも見られるのだ。
※シンポの報告集は、こちら


しかし、↓に見られるような、「タテマエは任意だけれど、実質的には全員参加なのでよろしく」といった教委事務局員の言動も認められ、看過できない。

**
任意加入であるということは、正しいひとつの情報として伝えることは大切。誤解をしないでいただきたいのは、任意加入であっても全員で活動するとても重要な団体であるということには変わりない。
(発言者:横浜市教委生涯学習文化財課鈴木氏)
「横浜市PTA連絡協議会理事会報告(H22第2回)」より
http://www.pta-yokohama.gr.jp/kaigi/riji/rj2202.pdf
**


<終わりに>
今回とりあげた問題は、「市民の声」等の先進的な公聴システムの存在と横浜市民の市民意識の高さの結果として「単に横浜において表に出ているだけ」のものとも言え、実は、全国的に程度の大小はあれ存在している問題だと思われる。
全国的な問題として、文科省の担当部局もぜひ真剣に検討いただきたいと思う。