最新の英語論文を紹介します。(27)

今回は、米国マサチューセッツ州からの報告です。

’ありのまま’の自分で生きる。

 

Humanistic and Economic Burden of Conversion Therapy Among LGBTQ Youths in the United States

 
方法)
転向療法(コンバージョンセラピー)とは、同性愛者やトランスジェンダー(性同一障害)に対して”矯正”、”悪魔祓い”、認知療法、ショック療法、拷問(虐待)のような様々な手段を使って、自らの性的指向/性自認を増悪するよう仕向ける行為のことを言う。
転向療法のリスクは、その効果がないことをはるかに超えており、効果のない治療に時間とお金が浪費されており、また、精神的健康の悪影響と自殺未遂率とも深く関係している。
今回の研究では、LGBTQ(性的少数者)の人に対する転向療法の効果を過去に発表された28件の研究データを基に、転向療法と有害事象との関係とともに経済的負担について、以下の3つの群で検討した。
1)転向療法を受けた人
2)何も治療を受けなかった人
3)肯定的治療(性の指向や自認を正当に認める治療)
 
結果)
LGBTQ 190695名中、12%が転向療法を受けていた。転向療法を開始された平均年齢は25歳で、治療期間は平均26カ月であった。
1)転向療法を受けた人、2)治療を受けなかった人、3)肯定的治療を受けた人の3群はそれぞれ、精神的苦痛(47% vs 34% vs 20%)、抑うつ(65% vs 27% vs 14%)、薬物乱用(67% vs 50% vs 26%)、自殺未遂(63% vs 22% vs 3%)、生涯の経済的負担(206159$ vs 108174$ vs  67844$)であった。
 
まとめ)
転向療法は差別的な性質と深刻で有害な影響があるため、LGBTQへの治療を強制的に中止すべきである。
肯定的治療は、LGBTQへの健康に有益だけではなく、経済的な効果もある。
今回の研究は、性的な転向療法は個人の負担のみだけではなく社会の経済的負担も増加することを示した。
 
一口メモ)
転向療法を受けた人の約6割が自殺未遂を起こした結果には驚きました。転向治療のプログラムの中には、自分自身に対する嫌悪や憎しみを抱かせることが目的だったものもあります。性的指向に関しても、他人に迷惑をかけない限りありのままの自分自身を受け入れて祝福されるべきだと思います。
 
性は二つではなく多様なのです。多様性を受け入れるために大切なことは、お互いを尊重することです。しかし、人は過去の人生経験やメディアの影響で無意識に偏見を持っています。偏見やイメージを取り去ることは難しく、多様性を受け入れることを阻害する要因だと言われています。偏見やイメージを捨てて、「相手と自分の違い」を尊重する努力が重要です。この論文は、多様性を認めることは、決して虐げられる少数者のためだけではなく、我々の社会の繁栄にとっても必要なことを教えてくれています。