イギリス人アナリスト 日本の国宝を守る | 石川巧オフィシャルブログ「すべては三浦のために」Powered by Ameba

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一期一会を大切に、神奈川県議会議員石川たくみのブログです。
<私の目指す政治活動>
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 ○一人でも多くの三浦ファンを ○より身近な市政に

『イギリス人アナリスト 日本の国宝を守る』を読了しました。

日光東照宮など全国の文化財の修繕・補修を
300年以上手がける小西美術工藝社の社長を務める
イギリス人、デービッド・アトキンソンが考える
「日本の素晴らしさ」と「日本のダメさ」。



<日本の経営者には「サイエンス」が足りない>

300年続いた日本企業の改革に成功して感じたのは、
「やるべきことをやれば日本の組織は劇的に改善する」ということです。

「今、日本のリーダーに真に必要なのは、
「数字」に基づいた分析と冷静な判断、
そして不毛な議論にまどわされぬ決断力ではないでしょうか」

なぜこの国にはここまで潜在能力があるのにもかかわらず
経済が良くならないのか?

人口が減っていくこれからの日本で
経済が今より厳しい局面を迎えるのは避けられません。
それに対応するには徹底的に分析をして、
その現実へ向かっていく国策を考える必要があります。
それは抽象的で曖昧で、評論家的なアマチュア経営では不可能でしょう。
ただ、輸出入業によって経済を15%以上伸ばすことは可能です。
先進国の多くは、GDPに対する輸出額か30%なのに対して、日本は15%弱。
OECD各国のなかで下から8番目ということですから、
まだまだ"伸びしろ"があります。今後は輸入も積極的に増やしていけば、
15%の成長は夢ではありません。日本の場合、輸入を増やすという思考は
明治時代から避けられてきましたが、その価値観も見直すべきでしょう。
輸入によってインフレも促進できます。輸出を増やすためには輸入は必要ですし、
輸入に力を入れることで雇用も生み出されるので、利益も伴います。
このような輸出量の"伸びしろ"に最大限に貢献できるのものがひとつあります。
それが観光業です。


<日本は本当に「おもてなし」が得意なのか?>

「日本は観光面において他の先進国と比較すると
非常に遅れていると言わざるをえません」
「外国人が日本への旅行でどんな「おもてなし」に
感動するのかというと、日本人ひとりひとりの
個人としての「おもてなし」なのです」
「真に評価されているのは、日本人の優しさ、その心です。
ところが、「個人」ではなく
日本の会社、飲食店、ホテルなど、
いわゆる法人が提供するサービスというのは、
みなさんが思っているほど評価が高くありません」

「「一流」の(箱根)老舗旅館では
チェックインの三時までは一切のサービスを
おこなわない、つまり「客」として扱わないというのです」
「日本の旅館の関係性は、家に招いた
主(ホスト)と、招かれた客人(ゲスト)に
たとえると、わかりやすいかもしれません。…
家の主が定めたルールに従わなくてはいけませんし、
主の都合が悪くなれば「客人」は満足のいく
もてなしを受けることができません。…
つまり、日本の「おもてなし」というのは、
"客の都合"に合わせるという概念が欠如しているのです」
「海外では「おもてなし」を受けたかどうか、
評価するのは客であって、供給側が決めるものではないということ。
そして、もうひとつが、日本人が自画自賛する
「おもてなし」と、外国人観光客が評価する
「おもてなし」は違う場合があるということです」


<「文化財保護」で日本はまだまだ成長できる>

「チャールズ皇太子が総裁を務めるボランティア団体「ナショナルトラスト」、
この団体の歴史は古く1895年、歴史的建造物や自然区の保護を目的として設立されました」
「現在、「ナショナルトラスト」は現存する5000の貴族の館のうち、
1000以上を所有しているといわれています。
また、所有管理している海岸はイングランドとウェールズの海岸線の約25%に相当する
1194km、土地は7億4,700万坪に相当し、国土の1%です」
「民間、ボランティアの活動に加えて、イギリス政府としても当然、
文化財保護を行っています。…1984年に誕生した独立行政法人
「イングリッシュヘリテージ」(EH)です」
「1700年以前に建てられたものは原則すべて保護、それ以降でも
1840年までほぼ保護に指定されています。つまり、イギリスでは古い建物というものは、
すべて国が規制をしているというとです」

「イギリスに海外から訪れる観光客数は3000万人。
アンケート調査によれば、その40%が文化財を体験することが主要な動機となっており、
90%の人が、少なくとも、一ヶ所以上の文化財を観光しているという結果が出ています」
「イングランドのデータでは、地方に行けば行くほど観光産業が占める割合が高くなります。
雇用に占める比率も高くなっているわけです。
また、イギリスでは公共投資で新しいハコモノをつくるより、
文化財の修理と利活用のほうが圧倒的に経済効果があることも証明されています」
「私が最も心配しているのは、日本の文化財が単なる
「冷凍保存のハコモノ」になってしまっているという点です」
「これは二条城に限りません。日本の神社仏閣に行っても、
ほとんどが日本語表記のパンフレットしかなかったり、あっても非常に薄く、
細やかな造形美やそこに込められた精神世界の奥深さを伝えるわけでもなく、
あまり内容に富んだものではないのです。
畳は古く、ふすまや障子を外し、本来あるべき調度品も、お花もない、
中を拝観しても、そこで何がおこなわれ、
どのように使われたのか外国人にはさっぱりわかりません」

「そもそも、文化財もある意味、
テーマパークと同じで、対価に値するサービスを提供しなくてはいけません。
なぜそこに建てたのか、なぜそのような形になったのか、
ということをわかりやすく面白く来訪者に説明をしなくてはいけません。
旭山動物園が、行動展示ということで成功しましたが、文化財こそ、
人間ドラマの「展示」をしなくてはいけないのです。
もちろん、頑張っている神社もあります。
2013年、1000万人以上が訪れた伊勢神宮は、外宮に「せんぐう館」を創設し、
社殿や宝物がどういうプロセスで造られたかをレプリカで
説明するなどしていますし、内宮前の「おかげ横丁」も大人気ですが、
ほとんどの文化財はサービス精神がほぼゼロ。
「入れてやるから勝手に見学してお帰りください」
というのが主流ではないでしょうか」


「日本の特徴のひとつは、やたらと「問題」を指摘する声が多く、
その類の会話が多いことだと感じています。
そもそも、「問題」とは言ってみれば理想と現実の差がもたらすものですので、
理想を高くもつ日本社会ならではの特徴かもしれません。…
高い理想を維持しつつ、現実のギャップを縮小していく日本経済、
日本社会の取り組みに大いに期待をしております」
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