自分の父とのわだかまりで、もう一つ今でも時々思い出すことがあります。

小学校六年生の7月のことでした。

父が急に、中学校には公立と私立があり試験に合格すれば私立の中学に入ることができて学歴もすごくプラスになるという話を持ちかけてきました。


自分はそれまで中学校に公立と私立の二種類があることも、試験があり勉強する必要があることも全く知らず、父からも一度も知らされたことはありません。

なのに唐突にそのような話を持ちかけられ、僕が入試を希望し、残り数ヶ月を受験勉強をするようにうまく誘導するような、唆すような感じで語りかけてきました。

僕は半ば意味もわからず、入試のために勉強をすることにしました。

目標にしたのは私立のK中学でした。


父はすぐに入試用の算数の問題集を僕に当てがったのですが、あまりに難しすぎて全く進みませんでした。

結局三学期の途中まで一人で勉強したのですが、

ほとんどわかりませんでした。

そして私立の入試を受けることも断念しました。

しかしそこからの父の態度がおかしかったのです。

父はそれから、入試を断念したことを話題にして僕のことをしつこくいびるようになりました。

「お前は入試を断念したことで経歴がマイナスになったんだ(そういう意味のことを言われました。)」、「お前には入試をできる学力がない」、「入試を断念したお前は劣等生だ」など何度も言われました。


僕は、「あんな少ない期間で勉強なんてできるわけがない、なぜもっと何年も前からそういう大事なことを教えてくれなかったんだ」と父に問い詰めましたが、返ってきた返答は「そんなもの知らなかったお前が悪い」の一言でした。

明らかに最初から、僕に無理やり挫折感や劣等感を植え付けることが目的であるようでした。


それ以前もそれ以後も、父の僕に対する当たり、仕打ちは酷かったのですが、この件以降、父との亀裂は明確になっていきました。

1990年代後半のことです。