しばらくの間、JR西日本で現在も運転されている企画列車「かにカニエクスプレス」の一派、ならびにそれ以前からの「かにシーズン列車」の運転の歴史を振りかえります。

 

 冬の日本海の味覚、かにを目当てにグルメ客向けに設定された臨時列車は京阪神エリアにお住まいの方にはおなじみと聞いております。そして、今回は、一挙に2列車を取り上げます。共に京都発着だった、かにカニきのさき号かにカニはしだて号の運転歴史です。

 

かにカニはしだて号

かにカニきのさき号

 両列車ともに、定期特急列車のスピンオフとして愛称を拝借し、かにシーズンのみ追加設定された列車です。しかし、両列車とも短期間の設定だったので記憶に残っていない方も多いかもしれません。

まず、天橋立、城崎という町について。天橋立は日本三景の一つとして、城崎は文豪の逗留で有名な城崎温泉があるという、両地ともあまりにも有名な観光地ではありますが、どちらも近隣にかにの水揚げがある港をひかえており、かにシーズンにはかに料理を提供するかにのメッカに変貌します。

 

 かにカニはしだて号は、2001〜02年、2002〜03年の2シーズンのみ設定されており、定期列車であるはしだて号を補完すべく京都から見たときに復路となる、天橋立発のみが運転されています。当時の時刻表を見る限り、定期列車の間隙(6号と8号)を埋めるように帰宅ピーク時間帯に出発するダイヤでした。京都口(ぐち)の線路容量の影響をうけて、天橋立〜京都間のはしだて号の所要時間は概ね2時間前後のところ、定期列車退避などが行われたためか、余計に20〜30分ほどかかっています。

 

一方、かにカニきのさき号は、わずか1シーズン(2004〜05年)設定でした。はしだて号同様、定期列車の補完として城崎発のみされ、定期列車の間隙(8号と10号)を埋めるダイヤでした。所要時間もかにカニはしだて号同様、30分ほど余計にかかって京都に到着しています。

 両列車とも、運用に就いた車両について情報は手元にないのですが、定期列車と共通運用とすれば183系電車だと推察されます。

 

 これで触れておきたい事実ですが、2004〜05年シーズンがかにシーズン列車がバラエティ豊かなだった最後だったのです。既出のかにカニ但馬号かにカニ北近畿号ともに、かにカニきのさき号は翌シーズンには未設定となり、かにカニエクスプレス一派は、かにカニはまかぜ号のみとなります。

 このブログを執筆するにあたって過去の時刻表を追っている私に降りてきた感覚として、かにカニはしだて号〜きのさき号自体に、かにシーズン列車末期の手探り感があります。

 両列車の設定された時間帯(ダイヤ)を見る限り、それ自体は帰宅客を狙った至極真っ当なダイヤだと思いますが、所要時間や料金などの面などを含めるとこのかにシーズン列車の総合的な顧客満足度は決して高くなかったのかもしれません(丹後、城崎エリアに限った話かもです)。

 インターネットもない時代ですので、瞬間的な口コミではなく、今よりも大規模な集客作戦で競合がJRから乗客を奪取したのではないかと。具体的には鉄道と並行する高速(有料)道路も年々延伸していく時代背景があり、料金も安価で現地に速達するツアーバス等が選択されたと考えるのは自然ではないかと推察します。(ツアーバスの歴史を辿れるほど知識がないため、このあたりに一家言ある方、ご意見を伺いたいところです)

 

 

  シーズンごとの運転状況

 

全シーズン共通

全車指定席

 

 列車種別と運転区間 

運行シーズン 列車種別
2001〜02年 特急 Kはしだて号 天橋立→京都 ※北近畿タンゴ鉄道経由
2002〜03年 特急 Kはしだて号 天橋立→京都 ※北近畿タンゴ鉄道経由
2003〜04年 Kはしだて号、Kきのさき号ともに設定なし
2004〜05年 特急 Kきのさき号 城崎→京都 ※山陰本線経由

※ Kはかにカニの略

 

 往復の始発・終着駅発時刻と所要時間

運行シーズン 始発・終着駅発時刻と所要時間
2001〜02年 Kはしだて号 ※12月〜3月の土休日(年末年始除く)
天橋立発15:55→ 大阪着18:19(2時間24分)
2002〜03年 Kはしだて号 ※12月〜3月の土休日(年末年始除く)
天橋立発15:54→ 大阪着18:19(2時間25分)
2003〜04年 Kはしだて号、Kきのさき号ともに設定なし
2004〜05年 Kきのさき号 ※12月〜3月の土休日(年末年始除く)と2月毎日
城崎発15:22→ 京都着18:19(2時間57分)

※城崎駅は2005年3月1日から城崎温泉駅と改称しています。

 

 使用車両・編成

運行シーズン 使用車両
2001〜02年 183系特急電車4両(または6両)と推察
2002〜03年 183系特急電車4両(または6両)と推察
2003〜04年 Kはしだて号、Kきのさき号ともに設定なし
2004〜05年 183系特急電車4両(または6両)と推察

※運転日よって編成両数の増減の可能性があります。

※使用形式については、当時の雑誌、ならびにインターネット上にアップされている写真などから判断しておりますが、運行実績をすべて網羅したものではありません。

 

本日は、以上です。

 

参考ページ:はしだて(列車)、舞鶴若狭自動車道、城崎温泉駅(いづれもWikipedia)

参考資料:JR時刻表、JTB時刻表(各年)、鉄道ダイヤ情報(臨時列車運転情報)、国鉄・JR列車名大事典 寺本光照著 中央書院、列車名変遷大事典 三宅俊彦著 ネコ・パブリッシング

写真:Frickrのリンク