短命シリーズ、1年ぶりに復活しました。国鉄、JRの名称付き列車で、短命でおわった列車名を取り上げる企画。
45回目は、2000年前半、JR九州の筑肥線に存在していた愛称付き快速列車を取り上げます。それは、快速ふくおかライナー号、からつライナー号と、目的地別に愛称が付いた、なかなか凝った列車です。しかしながら愛称付きは丸4年で無名の快速列車となり、「発展的消滅」となります。その短命列車を前史から紐解いていきます。
福岡市営地下鉄が開業してからの筑肥線の略歴
筑肥線の歴史については、本来なら博多〜姪浜間の地上時代からたどりたいところですが、当時幼かったブログ筆者にとって記憶に残っている筑肥線は福岡市営地下鉄との相互乗り入れ以降のものなので、ご容赦いただければ幸いです。また、筑肥線は姪浜・唐津間以外にも佐賀県内山本・伊万里間も存在しますが、このブログでの筑肥線は断りが無い限り、もっぱら姪浜・唐津間(運行上は唐津線所属の西唐津も含む)を指しているとご理解ください。
さて、乗り入れ先の福岡市営地下鉄の最初の開業は1981年。天神・室見間で開業し、その後博多まで乗り入れを果たしますが、この当時の博多駅は現在よりも数百メートル北側、祇園駅寄りの位置にありました。行ったことあったのかな。ここだけ記憶に残っていませんw。その後順調に延伸を繰り返した市営地下鉄は1号線と呼ばれる空港線と2号線とよばれる箱崎線が完成し、独立した形ながら3号線(七隈線)も開業しましたね。あとから知ったのですが、3号線だけ標準軌なのですね。。
国鉄筑肥線と福岡市営地下鉄の相互乗り入れは、国鉄時代の1983年3月となります。。国鉄九州総局で唯一の直流専用電車が運行された区間(直流電化区間はすでに下関〜門司が存在)であり、使用された103系1500番代といえば、スカイブルー地色にクリーム帯のアクセントの通勤電車。下記リンク先の写真はJR化後のリバイバル編成。
細々と設定された無名の快速列車とその消滅
快速列車の話題に移ります。筑肥線地上時代にも一部駅を通過する快速的なダイヤで運行されている列車が存在していましたが、少なくとも時刻表内には快速という種別の明記はありませんでした。
その後、筑肥線と福岡市営地下鉄の相互乗り入れ開始後しばらくの間は各駅停車のみのダイヤに変えられたものの、JR化後3年たった1990年10月6日に列車種別としてはじめて快速が博多〜唐津間、午前中唐津発、日中博多発の1往復のみ新設されました。といっても実際の快速運転区間は筑前前原〜唐津間に限られていました。途中停車駅は2駅(筑前深江、浜崎)。当時の運行ダイヤは以下の通り。絶妙にラッシュ時間帯を外して設定されていることと、先発の各駅停車を途中駅で追い抜く、いわゆる緩急接続はなかったことから、当時の筑肥線ダイヤに手探り感を感じます。
1536M 唐津発 9:02 → 博多着10:11
1549M 博多発14:46 → 唐津着15:55
JTB時刻表1990年10月号より、休日の博多発着は1分繰り上げた発車、到着だった
ちなみに、筑肥線の相互乗り入れにおいて、市営地下鉄線内での快速運転はこの当時含め現在までも行われていません。
その後、2000年1月、筑肥線下山門〜筑前前原間複線化開業にともないダイヤ改正が実施。このとき、「手探り感」を10年近く引きずってきた1往復の快速列車が廃止されます。ちなみにこの改正で登場したのが303系電車でした。
土休日限定で快速列車が復活。異例の愛称付き列車に
2003年3月ダイヤ改正で快速列車が復活し、ふくおかライナー、からつライナーという愛称がつけられます。
愛称付き快速列車の新設の経緯について確定的な情報は拾えていませんが、私の推察では、沿線の環境変化を見越した需要の掘り起こしが課題だったのではないかと思います。特に2001年の並走する西九州自動車道と都市高速1号線の接続は、福岡〜唐津間の自動車移動の所要時間の飛躍的短縮に貢献しているようで、とりわけライバルの高速路線バスについては、当時から高頻度の運転本数を誇っている上に、定時運行率も向上していたに違いありません。JR九州は過去にも福北線、福岡・大分線の高速バスといった競争区間でバスにシェアを奪われた経験があったことで、この看過できない状況に遅まきながら手を打ったのではないかと。告知面でも愛称付きの列車で認知度アップを図ろうとしたのだと考えます。
さて、鳴り物入りで復活した快速列車の設定は土休日のみ。平日にこそ欲しい列車だったのですが、ラッシュ時に試験的な列車を設定する余裕がなかったのかもしれません。運転本数は唐津、博多方面それぞれ5本が設定され、行楽客の行き・帰りの足となるダイヤが組まれていました。
2点ともJTB時刻表2003年3月号より
新設当初(2003年3月)の運行時刻(始発・終着)は下記の通り。
からつライナー号 土・休日のみ運転
列車番号 | 福岡空港発 | 終着 | 所要時間(〜唐津) |
1681C | 9:23 | 唐津着10:36 | 1時間13分 |
1683C | 10:24 | 西唐津着11:36 | 1時間12分 |
1685C | 11:24 | 西唐津着12:37 | 1時間10分 |
1687C | 17:24 | 唐津着18:32 | 1時間08分 |
1689C | 18:24 | 唐津着19:32 | 1時間08分 |
はかたライナー号 土・休日のみ運転
列車番号 | 始発 | 福岡空港着 | 所要時間(唐津〜) |
1680C | 西唐津発7:52 | 9:16 | 1時間10分 |
1682C | 西唐津発9:00 | 10:16 | 1時間10分 |
1684C | 西唐津発10:00 | 11:16 | 1時間10分 |
1686C | 唐津発16:06 | 17:16 | 1時間10分 |
1688C | 唐津発17:06 | 18:16 | 1時間10分 |
途中停車駅(からつ・はかた両ライナー共通)
(福岡空港〜姪浜間は各駅停車)筑前前原、筑前深江、浜崎、東唐津、唐津
ご覧の通り、運転パターンは各方向とも朝に3本、夕刻2本の合計5本。所要時間は福岡空港〜唐津間で揃えて比較すると、時間帯によって前後はありますが、概ね1時間10分。地下鉄線内のパターンダイヤを優先した結果、おのずと福岡空港駅の始発・終着駅の時分が揃ったのでしょうが、見ていて美しいですね。
平日にも快速設定され、愛称付き列車は発展的に消滅
その後、2007年3月ダイヤ改正では、従来の土休日のみの快速列車設定が、平日にも拡大。同時に一定の役割を終えたのか、快速列車につけられた愛称、ふくおかライナー、からつライナーの名称が発展的消滅を迎えるのです。なお、そのほかこの筑肥線快速列車に生じた変更点を列挙すると、
・途中停車駅:姪浜〜筑前前原間の各駅(平日のみ)と和多田(平日・土休日とも)が加わっています。
・平日の快速は、土日より1往復少ない(4往復)で設定
・福岡空港発の平日の快速は、土休日よりも遅い時間帯(2007年当時は18時台、20時台に1本づつ)で設定
となります。このブログを執筆している2024年現在も2007年時点から発車時刻や途中停車駅等が変わっていますが、概ね運行パターンは維持されています。
参考サイト:筑肥線、福岡市営地下鉄、福岡市地下鉄空港線、福岡高速環状線、西九州自動車道(いづれもWikipedia)
参考資料:JTB時刻表