チェコの作曲家、スメタナが作曲した「ブルタバ」ですが、モチーフの関連性はどうなっているのでしょうか。
この曲で重要なのは何といってもブルタバのテーマですよね。このメロディはチェコの民謡をアレンジしてできているのですが、ちょっとモチーフ分析をしてみましょう。↓
ここでは、
順次進行的(音階進行的)なモチーフA
同音連打的なモチーフB
が使用されています。
楽曲ブルタバの旋律構成は、ほぼこのモチーフAとモチーフBで説明できるのですが、「月、水の精の踊り」の部分のバイオリンの高音の旋律や「ヴィシェフラトの丘」の部分は、「我が祖国」の第1曲「ヴィシェフラト」のテーマが登場します。
重要な二つのモチーフを紹介します。
第1曲「ヴィシェフラト」の経過部分に登場する何気に重要なモチーフ
そもそも「ブルタバ」のモチーフBは「ヴィシェフラト」のモチーフDと関連性がありそうです。
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では、ちょっと分析・・・
●二つの水源
ブルタバのテーマのモチーフAが変形されています。
●森の狩り
ここでは第1曲「ヴィシェフラト」で登場するモチーフDEが使用されています。モチーフDは「ブルタバ」に登場するモチーフBとも関連がありますね。
●農民の踊り
ここでは、モチーフBとモチーフDが交錯変形して登場します。
モチーフBの「タータータター」の部分が装飾を伴って舞曲風にアレンジされてます。また、同音連打は、「ヴィシェフラト」のモチーフDの同音連打にリンクしますね。
後半部分の上行型は「ブルタバ」のテーマを連想させます。
うん、よくできているメロディです!!
●月、水の精の踊り
ここでは16分音符の細かな旋律はブルタバのテーマのモチーフAですね。「二つの水源」を思わせる動きです。
一方、高音バイオリンはヴィシェフラトのモチーフCを活用しています。↓
●聖ヨハネの急流
ここではモチーフD(モチーフBでもいいかな)、およびモチーフAが活用されています。
●ブルタバの広々とした流れ
ここは、いうまでもなくブルタバののテーマですね。チェコの民謡がそのまま使用されています。
●ビシェフラトの丘
ここでは、我が祖国第1曲のビシェフラトのテーマがそのまま登場します。
ということで、ブルタバは標題音楽ですから、シーンがいくつが登場するわけですが、楽曲に統一感を持たせるためか、シーンごとにまったく新しい、なんの脈絡もない音型を使うのではなく、ブルタバのテーマやヴィシェフラトのテーマを活用して楽曲を構成していますね。
思ったんですけど、川や水に関連する場面は、ブルタバのテーマやモチーフを積極的に使用、狩りや農民の踊りなど、水から少し離れた場面には「ヴィシェフラト」のモチーフを積極的に活用する傾向があるようにも感じました。
モチーフを限定して、楽曲全体の統一感を図るとともに、楽曲の繊細さ、雄大さ、もの悲しさ、陽気さ、怒りに似たような激しさ、壮大さなどの形容詞を連想させるスメタナの独創性には頭が下がる思いです。
時代はロマン派になり、民族主義になり、作曲家の主義主張はあるにしても、モチーフの関連性などのやり方は、先人が確立してきた作曲技法を脈々と受け継いでいるのですね。
スメタナ作曲「ブルタバ(モルダウ)」考察①歴史背景
https://ameblo.jp/marubach140/entry-12536123116.html
スメタナ作曲「ブルタバ(モルダウ)」考察②楽曲について
https://ameblo.jp/marubach140/entry-12536850190.html
スメタナ作曲「ブルタバ(モルダウ)」考察③標題音楽 少し絶対音楽
https://ameblo.jp/marubach140/entry-12537233344.html
もどうぞ。
ご精読ありがとうございました。