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GDP大幅減 消費税増税には厳しい数字だ

2014年08月18日(月)


内閣府は先日、4~6月期の実質国内総生産(GDP)の速報値を発表した。年率換算で前期比6.8%減。東日本大震災が起きた2011年1~3月期の6.9%減以来の大幅なマイナスとなった。

消費税増税前の駆け込み需要があった1~3月期は6.1%増。安倍晋三首相は「1~6月でならしてみると、前年の10~12月よりは成長している」と強弁するが、前回消費税率が引き上げられた1997年の3.5%減と比べて倍近い下げ幅は、深刻な数字と言わざるを得ない。
最大の理由は、約6割を占める個人消費の落ち込みだ。前期比5.0%減は、比較できる1994年以降で最大。回復の兆しも見えない。


厚生労働省が先月発表した6月の毎月勤労統計調査によると、1人当たりの現金給与総額は4カ月連続で増えた。しかし、上昇率は微々たるもの。それ以上に物価が上がったため、実質賃金指数は3.8%減。4月から3カ月連続のマイナス3%台となった。

この夏にはチーズやハムなどの食料品が一斉に値上げされた。ガソリン価格も高止まりしたまま。暮らしは厳しくなる一方で、消費者の財布のひもは緩みようがない。企業は一層の賃上げに努めるべきだ。

国際通貨基金(IMF)は日本企業が社内に積み上げている資金は「主要先進国の中で突出して多く、活用が成長の鍵になる」と指摘した。確かに、日本の上場企業の多くは昨年度、円安・株高の恩恵を受け、大幅な増収増益となった。内部留保も膨らんでいるはずだ。

加えて、安倍政権は来年度からの法人税減税を明言している。対象企業はごくわずかだが、浮いた資金を積極的な設備投資や賃金アップに回すことで、景気浮揚のけん引役を果たす義務がある。非正規社員の正社員化などで格差を減らし、女性や若者の就労支援も進めなければならない。

11月に発表される7~9月期のGDP速報値は、安倍政権にとって非常に重大な意味を持つ。消費税率を来年10月に10%に上げるかどうかを判断する最大のポイントとなるからだ。
 安倍政権は少額投資非課税制度(NISA)の非課税枠や対象年齢の拡大、年金積立金管理運用独立行政法人の株式運用拡大を掲げている。いずれも、株式市場に金を誘導する政策だ。何とか株価を維持して、消費税率アップに向けた環境を整えようという意図が見え見えだが、小手先の政策にすぎない。

必要なのは生活者重視の抜本的な改革だ。今の大企業重視の政策を続ける限り、国民は景気回復を実感できまい。現状では、消費税の再増税を許すわけにはいかない。