大東建託、相次ぐ社員自殺の背景 6/29(金) 18:25 週刊金曜日 | 大家 サムの気になる話(°°;)

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大東建託、相次ぐ社員自殺の背景
6/29(金) 18:25
週刊金曜日

大東建託、相次ぐ社員自殺の背景
1兆5570億円(2018年3月期)の売上高を誇る大東建託の本社ビル(東京都港区)。
アパートを建てて一括で借り上げるという賃貸建設管理業の最大手・大東建託株式会社(本社・東京都港区、熊切直美社長)で、社員の自殺が相次いでいる。内幕を探ると、「いい部屋ネット」の宣伝文句から受ける好印象とは裏腹の陰惨な実態が浮かび上がった。
Aさんの自殺

 大東建託藤枝支店(静岡県藤枝市)の建築営業社員Aさん(享年42)が自殺したのは2007年10月のことだ。2年後の09年秋、遺族は大東建託を相手に、損害賠償を求める訴訟を静岡地裁に起こす。審理で浮き彫りにされたのは派手な広告とは似ても似つかない陰惨な職場風景だった。

 遺族側によると、Aさんは携帯電話のGPS機能で四六時中監視されながら、しばしば1日15時間を超す長時間労働を強いられ、土日もほとんど休めていなかった。

「たいていは1年で辞める。3年いたらベテランだ」と言われる職場にAさんは5年いた。亡くなるしばらく前から、不眠や口数が少なくなるなどの変化が見られた。「辞めたら」という家族の助言に「今の仕事が終わったら辞める」と話していた。その最後の仕事がトラブルとなり、疲弊した精神に致命的な打撃を与えたのだ。

 どんなトラブルだったのか。

 Aさんはある顧客に宛てて「申し訳ありませんでした」と書き残していた。この顧客と支店との間で交わされた「覚書」も発見された。覚書には、支店長と課長、Aさんの3人が、この顧客に対して約770万円を払うという内容が記載されていた。また、770万円の負担割合について、支店長と課長、Aさんの間で「合意」がなされていた。支店長と課長がおよそ各200万円、Aさんが360万円を払うというものだ。

 つまり、Aさんは上司から360万円を払えと再三求められていたのだ。会社に勤めながら360万円を払うというのだから尋常ではない。事情はこうだ。

 顧客は静岡県内の元旅館主だった。廃業した旅館を壊してアパートと一戸建ての自宅を建てる計画を、Aさんが担当となって進めた。乗り気でない旅館主を説得して契約にこぎ着けた。だが銀行融資が出ずに頓挫する。解約を嫌がる上司の要求で、計画変更をして再提案する。自宅部分をアパート棟の内部に作る案で、これなら銀行融資が得られそうだった。

 再び旅館主を口説き、工事が始まる。しかしまた暗礁に乗り上げる。アパートの工費増額に伴って自己資金が770万円増額になった。それに気づいた旅館主が「解約したい」と言い出したのだ。上司はなおも計画続行を要求、Aさんは板挟みになる。たどりついたのが、「770万円」を支店で肩代わりするという案だった。
異様な経営手法の裏で

 裁判で大東建託側は、会社に責任はないとして全面的に争っていた。だが、提訴から半年後の2010年、遺族の労働災害申請が認められて状況が変わる。亡くなる直前半年間の残業時間は月80時間から120時間に達しており、過労や仕事上の強度のストレスで鬱病を発症したと労働基準監督署は判断した。そして裁判も、11年10月、大東建託が3500万円を支払う遺族側の勝訴的和解で決着した。

 まっとうな企業であれば経営者が反省すべき場面だが、大東建託は違う。労災認定当時、筆者の取材に他人事のような口ぶりでこう回答した。

「ご遺族と労働基準監督署の問題である。したがってコメントする立場にない」(同社経営企画室)

 直後に発表された多田勝美会長の報酬は株の利益を含めて2億5800万円に達した。

 かくして、異常な長時間労働と退職強要、パワーハラスメントが横行する状況はその後も変わらず続く。多田会長は11年に持ち株を売却し、大株主は外資系ファンドになるものの、劣悪な労働環境に大きな改善はなかった。

 同社の職場の劣悪さを象徴するのが広告代理店・電通の「鬼十則」を模した「大東十則」だ。「ひとつ、取り組んだら離すな、殺されても離すな、目的完遂までは」などと毎日大声で唱和させる。

 契約が取れない社員はしばしば人格を否定される。定規で頭を叩く、長時間罵声を浴びせる、「ブタ」呼ばわりするといった憎悪表現も珍しくないという。業績不良を口実にした退職強要は当たり前。生き残るために社員は殺気立ち、朝礼中に殴り合うこともあったと、ある社員は証言する。

 社員をとことん追い詰めて業績向上を図る経営手法が不正の多発を生むのは必然だ。2012年、所沢支店と埼玉中央支店で、経費の不正請求があったとして20人以上が解雇処分された。1人は詐欺などで実刑判決を受けた。

 しかし、解雇された社員らによれば、問題にされた不正は氷山の一角だ。融資がつかないのを承知で見せかけの契約をする「テンプラ契約(架空契約)」など、より重大な不正が全国で多数あるはずなのに、見過ごされているという。

 架空契約は、親しい地主に頼んで名義を借りる「合意型」と、地主に無断で契約書をでっち上げる「無断型」がある。契約金などの諸経費は社員が立て替える。サラ金に借金がある社員は少なくないという。

 社員の自殺も続発している。複数の社員らの証言によれば、2013年から14年ごろにかけて、川口支店、高崎支店、静岡東支店で、計4人の社員(1人は退職直後か)が自殺した可能性がある。確認が取れたものでは、17年に八千代支店と赤羽支店でそれぞれ男性社員が自殺した。業績不良だとして連日、上司に詰問されていたと同僚らは証言する。詳細は不明だが、仕事上のストレスが影響していることは間違いない。
法的措置との配達証明

 大東建託は右肩上がりで営業成績を伸ばし株価も高値をつけてきた。2018年3月期の売上高は1兆5570億円、経常利益は1315億円。10年前と比較して売上高で2・4倍、経常利益で2倍の伸びだ。しかし、ここにきて急激な環境変化に見舞われている。

 アパートが供給過剰になり、金融機関が融資を渋りはじめた。新規契約・着工はかつてなく難しい。この変化に対して大東建託は、「2年間契約が取れなければ社員資格を失う」という違法性が疑われる就業規則改悪や激しい賃金カット制度を強行、力ずくで業績維持を図っている。

 こうした労働環境にもはや我慢できないと、社員らは17年春、大東建託創業以来初の労働組合「建交労東京都本部大東建託支部」を結成、使用者の違法・不当な行為に公然と異議を申し立てた。労組結成からほどなくして、会社側は労組執行委員長の古橋治人氏を懲戒処分にした。筆者の取材に応じたことが表向きの処分理由だが、労働運動の盛り上がりを警戒した「弾圧」の可能性がある。

 大東建託で起きている問題を広く世に問う必要があると感じた筆者は、『大東建託の内幕――“アパート経営商法”の闇を追う』の出版準備を進め、今年5月末、予告をした。その直後、大東建託から出版元の同時代社に配達証明郵便が届いた。名誉毀損だから出版を慎重にせよ、さもなくば刑事・民事上の法的措置をとるという。

 批判を封じようとする態度は、かつて筆者や本誌を相手に言論弾圧訴訟を起こして敗訴し、ついには経営破綻した、「ブラック企業」武富士と重なる。同社に自殺者の数などについて再度質問したが、期限までに回答はなかった。

(三宅勝久・ジャーナリスト、2018年6月22日号)

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