第十九話:ダブの遺跡(第二段落目) | マーロールのブログ

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左側の道はかなり狭く、複雑に入り組んでいる。ピンクの鬣の岩龍族の少女を先頭に、五人の龍戦士は左側の道を迷いながら進んでいく。くねくね道を渡り、大穴を跳び越え、五人は《アウン・ファレル》への行き方を探っている。


途中から突風が吹き始め、彼女達は吹き飛ばされそうになった。部屋を見回すと、扇風機のような飾りが何台もあり、五人の龍戦士を襲う。


「リタ達は今頃、かなり上の階にいると思うの。あたし達も急がないと」


そう言って岩龍戦士リアスは杖を大きく振り、扇風機状の飾りに向かって岩属性の魔法を放つ。


「ガイアス・ダイン(岩の押収)!」


リアスは魔法の名前を叫んだ。すると上から岩が降り、何台もあった飾りはあっという間に崩れ落ちていく。リアスは息が上がっていた。それを見ていた四人は、口をぽかんと開けた。


「凄いじゃないか、リアス。おかげで、鬱陶しい風もやんだようだね」


華龍戦士ニアロスは、リアスの肩に手を置いて言った。


「そ、そんなに叩かないでよ、ニアロス」


リアスは顔を赤くして言った。仲間達に負けじと、彼女達も二階を目指して走る。


狭い道の向こう側には扉があり、中はこの魔界各地の神殿を彷彿させるような造りになっている。水色の壁に、黄緑、金、銀の三色の仮面のような物が、天井付近に幾つも交互に飾られている。


(これも、デュラック王子とその仲間達が遺していった物なのだろうか?)


五人の脳裏に、疑問が浮かぶ。彼女達が辺りを見回していると、急に入ってきた側の扉が閉まった。ニアロスもスーザンも、一所懸命に扉を斬りつけたり叩いたりを繰り返すが、びくともしない。


(もしかして、私達はここに閉じ込められてしまったの?)


スーザンの茶色の鬣からは、大量の冷や汗が流れている。その冷や汗は雫のように地面まで流れ、ぽたぽたと落ちていくのが、他の龍戦士から見てもわかる。


「大丈夫、スーザン? 少し疲れてるんじゃない?」


心配になって風龍戦士ビオラが、金龍戦士スーザンに手を差し伸べる。


「ありがとう、ビオラ。大丈夫よ。先を急ぎましょう。あまり時間がないわ」


スーザンはビオラの手を借りて立ち上がり、黄土色の服をぱんぱんと叩いた。五人が部屋を出ようとすると、急に天井付近にかけられていたはずの仮面が目を光らせ、彼女達の方に飛んできた。それはまるで、彼女達の行く手を阻んでいるかのように見える。


五人はそれぞれの武器を構えた。彼女達は一斉に魔法を放ち、仮面達に攻撃する。すると、たくさんあった仮面は一気に消えていった。


(雑魚達め、俺達は急いでるってのに、大勢で襲いかかってきて)


ペレデイスは苛立っている。気味の悪い敵を倒し、閉ざされた扉とは反対側の扉を開け、五人は先を急ぐ。


何段も何段もあるある階段を上り、リアス達はようやく二階に到着した。


「これでやっと二階だなんて、信じられるか? ただの遺跡だってのにさ」


ニアロスは呑気そうに、リアス達に同意を求める。だが、今の彼女達にはそのような疑問に答える余裕がないことは、彼にもよくわかっていた。


その時、強い風が、五人を吹き飛ばそうとしているかのように激しく吹いた。それは生暖かく、風というよりは闇のように黒いオーラという雰囲気を醸し出している。それはまっすぐにリアス達の方に飛んでいき、扉を摺り抜けていった。


(もしかして、今のは闇龍の魂? もう去ったのかと思った)


ニアロスは呑気にも、闇のオーラはキア領主の体から抜け出して、どこかに行ったものと思っていた。だがあれこそが、闇龍――太古の昔に封印された、凶悪な龍の魂であるに違いない。少なくとも、ビオラはそう思っていた。


その時、オーラのような風が通ってきた方向から、カタカタという音が五人の耳に入った。五人は警戒して、先程しまった武器をもう一度構える。


何体も倒れたままになっている人形を見て、リアスは北端の領国に住む魔道族を思い出す。こうして人形達を見ていると、ゾンビが何体かいるように見える、とペレデイスは思った。だがそのうちの一体だけは、のろのろと歩き出し、リアス達の方に向かっている。


「な、何よ、あなた。ゾンビ?」


ビオラは身震いして、魔道族似の人形に訪ねた。橙色の髪と緑色の目を持つ裸の男性型の人形は、一見無表情のように見えたがむっとした。


「失礼ですね。僕はゾンビなんかじゃありません。僕には《ダブエット》という、立派な名前があるのです」


素直に感情表現をする人形を見て、五人は彼が敵ではないと判断し、武器をしまう。


「あたしは岩龍戦士リアス。こっちはビオラ、ニアロス、ペレデイス、スーザンよ。彼らもみんな、あたしと同じ龍戦士だよ」


リアスは人形に、自分のことや仲間達のことを簡単に紹介した。


「さ、さっきはゾンビって言ってしまって、ごめんね」


ビオラは戸惑い気味に、先程の無礼を謝る。だが、彼は全く気にしていないという表情で、リアス達に話しかける。


「僕は見ての通りの人形です。ですが、ただの人形ではありません。《ダブ》や他の人形達と一緒で、千五百年前にメルディーンの人形屋によって作られ、魔道族の力によって命を吹き込まれた《自律型人形》です。他の仲間達も以前は、自由に動いていました。が、あの闇龍の強い魔力によって生命力を吸い取られ、今では僕と妹型人形の《ダブ》しか動いていません。言ってしまえば僕達はほぼ絶滅の危機にさらされているも同然。言い忘れましたが、僕のことは《エット》と呼んでください」


自律型人形の兄の方《エット》は、長々と自分達の現状を話した。彼の話を聴き、リアス達は切ない気持ちになった。こうしてエットは、一時的にリアス達についていくことになった。


彼女達は、城塞のようなこの遺跡の中を、エットの案内に従って進む。