第十七話:魔道族の領国(第四段落目) | マーロールのブログ

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奴隷部屋の手前の廊下を抜ける前に奴隷となった魔道師を全員釈放し、リタ達は魔道姉弟と共に、城の屋上に通じている階段がある部屋を目指す。だがそこは数々の罠が仕掛けられており、侵入者はおろか、魔道族であってさえも簡単に通れないようになっている。


途中に襲いかかってきた兵士達を倒しながら、五人は難なく進む。


「待って」


ふと、メアリーが四人の足を止めた。


「何だよ、メアリー。今、順調なのに」


ヨゼフは残念そうに言った。


「屋上付近の部屋に行くには、図書室の棚のどこかの隙間に白い本を差し込まなきゃいけないの。でも、その本は図書室にはなかったわ」


メアリーは図書室と屋上に通じる部屋が、深い関わりを持っていることを、三人の龍戦士に言った。ヨゼフは、自分の目の前に落ちている白い本を拾い、魔道姉弟に見せた。


「なあ。その例の白い本っていうのは、これのことか?」


ヨゼフの質問に対し、魔道姉弟は彼が持っている白い本を見る。その時の目からは、意味が深そうな雰囲気が漂っている。


「こ、これは正しく、屋上付近の部屋の扉の鍵! 早速、図書室に行こう」


リゲリオンは白い本を見ると、急に目の色を変えた。慌てて他の四人も、彼の後を追う。リタ達は途中にあった罠を回避して、《図書室》と書かれた看板を見つけた。


「いよいよだね」


リタは呟くように言った。五人は既に開いている扉を潜り、図書室に入る。その中には、複数の魔族の影があった。その影は、七人分と思われる。


リタ達を見るとその影の一人が、バトンのような武器を構え、攻撃態勢に入った。


「待て、私達は敵じゃない。用が済んだら、ここを出るつもりさ」


リタは苦笑して、影を説得した。だが、彼女はあることに気づく。その影が持っているのは、本体が水色をしていて、白い羽のような飾りがついているバトン。そして身につけている服は全体が薄紫色で、袖が黒とピンクの縞模様になっている長袖。その下には、短い丈のデニム地のスカートに、交差するように着けた金の飾りがついている茶色のベルト。それらが、リタの目にはっきりと映った。


「あなたはもしかして、ビオラ?」


うっすらと見える水色の体や赤色の鬣を見てリタは、目の前の影の正体が風龍戦士ビオラだと判断する。ビオラも彼女の声を聞き、手前にいる魔族がリタだと判断し、武器をしまう。


二人が顔を見合わせる頃には、図書室一帯が明るくなっていた。部屋が暗いことに気づいたリゲリオンが、電気をつけてくれたようだ。


「ありがとう、リゲリオン」


リタは当たり障りのない言葉を、リゲリオンに言った。二人の魔道師の姿を見て、ビオラは警戒を強める。それをリタは誤解だと、彼女に注意する。その様子を、他の龍戦士達も見ていた。


「違うんだ、みんな。リゲリオンは魔道族の兵士達に囚われたメアリーを助けたんだ。そして二人は、キアを説得するために同行してもらってる」


リタは、七人の龍戦士に現状を説明した。七人はまだ、魔道姉弟を疑っている部分もあったが、リタの話を聴いてとりあえず二人を信じることにした。


「わかった。でも、もし二人が間違ってるようなら、俺達は止めるからな」


ペレデイスは、半ば意地を張るように言った。リタは九人の龍戦士を集め、次の指示を出す。


「ヒア、あなた達はここ及びここから下の階で、魔道師全員を説得してほしい。彼らがいつ、また私達を襲ってくるか、わからないからね」


そう言ってリタは右の棚に、隙間があるのを確認した。その指示に納得し、ヒアは了解したと言った。


リタはメアリーが言っていた例の白い本を、棚の隙間に差し込む。すると向こうの扉の方から、微かに音が聞こえた。


(おそらく、あれが屋上への出入り口の扉が開いた音。そしてキアは、そこにいる。それも、たった一人で)


リタは深呼吸をして、先のことを七人に言う。


「良いかい? 屋上には、ヨゼフ、ナンシー、魔道姉弟、私の五人だけで行く。あなた達には魔道師達の説得に成功し次第、屋上に来てほしい。以上」


そう言うとリタは、言葉を切る。


「ああ、俺達に任せろ」


「お気を付けて」


ヒアもアイルも自分達の役目を把握したような、誇らしげな眼差しで、五人を見る。ヒアはリタやヨゼフに代わり、他の龍戦士達を纏めた。十人の戦士達は今、グループに分かれて行動を開始した。