第八話:バデリウスの樹海の悪霊(第四段落目) | マーロールのブログ

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バデリウスの樹海において、葉龍女神ルナの神殿で大冒険をした四人の元奴隷戦士達。無事にヒアの妹を救出し、リタ達は元来た道を辿って村に戻った。そこには薪の準備をする魔族達、立派な服を着ている葉龍族の女性、そして彼女に仕えていると思わしき魔族達がいる。


「クリカ族長、俺達が妹を助けるために神殿に入ったという報告は、もうお聞きになりましたか?」


ヒアの声に反応して、クリカという名前の女性が口を開く。


「ええ、もちろん聞いていますよ。今回のあなたの行動は、妹を想ってしたこと。悪霊退治もしてくださったことですし、今回のことは多目に見ます。それに……」


「それに? 何ですか?」


「これは私の推測ですが、葉龍女神ルナは前からヒアが神殿に来ることを予測していたのではないかと思います。ルナ女神は霊感と共に、優しい感情も司っていると聞いたことがありますから」


「はぁ……」


クリカ族長の言うことは曖昧ではあったけれど、リタ達はなんとか理解しようと努めた。リタはふと、気になったことを族長に聞いた。


「私は砂龍族のリタ。なぜ、薪の準備をしているのですか? 何か特別な行事があるというのですか?」


リタの質問に対し、族長は笑顔で答えた。族長の話では、今日は彼女の三十回目の誕生日で、ヒアの帰省祝いも兼ねた祝杯を開くために薪の準備をしているのだという。


「なるほど。ついでに私達三人も参加してもよろしいでしょうか? それぞれ種族が違いますが……」


「もちろん、良いですよ。止める理由なんて、どこにもありませんからね」


クリカ族長は、あっさりと許可した。リタ達は、葉龍族の魔族達を手伝いながら薪の準備をした。


そして葉龍族の魔族達にとっては、待ちに待った、祝賀会当日の夜。一族の男性や女性が軽やかな身のこなしで踊り、子供達が合唱しているのを、四人は静かに見ていた。その子供達の中には、プレシオと水色の鬣の少女もいた。


「みんな凄く体が柔らかいね。僕もあんな風に踊れたらな……」


「そうかな? ヨゼフも結構、体が柔らかいと思うけど」


ヒアは、奴隷生活を送っていた時のヨゼフの戦闘ぶりを思い出しながら言った。ふとヨゼフは、先程リタに言われたことを思い出し、話を切り出す。


「みんな、ちょっと良いかな? 話したいことがあるんだけど……」


もしかしてさっき私が言ったことについて話すつもりなのか、と想像しながらリタは首を縦に振った。


「あのミントっていう女の子のことなんだけど……。実は九年前に僕を水龍族から引き離し、家族を殺害したのはあの子なんだ。当時の彼女はまだ三つだったから、想像できないだろうけどね」


ヨゼフは簡単に話を終わらせた。先程の彼の話を聴いていて、リタは思った。


(ヨゼフとあの子の間に、そんな過去があったのか。まだ互いに幼い年齢――特にミントは彼より一つ年下だというのに。やっぱり火龍神バイルが言ってたことは、本当のようだ。でなければ、当時三歳だった女の子をいとも簡単に操ることはできないはずさ)


リタはいつの間にか、深刻な顔をしていた。


「どうした、リタ。せっかくのパーティだ。もっと楽しもうよ」


「ヒアの言う通りよ。もっと肩の力を抜かなきゃ、この先、かなり厳しくなるわよ」


ナンシー達に励まされ、リタは少し落ち着く。そこへ、ヒアが急に話を切り出す。


「これは神殿から村に戻る前から決めてたことなんだけど、俺はこの村に残る」


彼の話があまりにも唐突だったので、三人はただ戸惑うばかりだった。同じように戸惑うクリカ族長だったが、ヒアに理由を聞く。


「どうしてですか? あなたは葉龍戦士です。修行するためにも、旅立たれた方が良いと思いますが……」


「俺も本当は旅に出たいと思います。ですが、妹のこともありますし、俺の力で村のみんなを助け、生活を支えてあげたいと思います。ですから、俺はここに残ります」


「そういうことなら、了解。当分の間は私達三人だけで旅をするよ。キアと闇龍の関係性も調べたいからね」


「ありがとう。情報収集、頑張れよ」


三人は、静かに頷く。こうして、樹海での夜は、賑やかな催し物と一緒に締め括られた。


樹海にある村で一夜を沸かした三人は、葉龍族の魔族達と一緒に出入り口に来た。


「リタ、ヨゼフ、ナンシー。気をつけて行けよ」


「ああ。ヒアも頑張りすぎないようにね」


レザンドニウム領主キアによる苦境が続いているとはいえ、四人は笑顔で話し合っている。そこへ、プレシオが三人のためにお菓子を袋に詰めて持ってきた。特に、ヨゼフの分は大きい。


「なんだよ。僕はこんなに食べられないよ」


彼の発言に、四人とも大笑いした。


「それじゃ、ヒア。元気でね」


かつての奴隷仲間に手を振り、三人はバデリウスの樹海を後にする。彼女達は、デラル島の南端に停っている船に向かって、走って行く。