静かに吹きすさんでいた風もやみ、月が黒い雲の中から姿を現した。辺りの砂が、サファイアのように青く輝いて見える。先程まで城内にいたランディー王や兵士達も外に出て、若者達のダンスを見ている。
その中でリタだけは、ヨゼフやナンシーと話している。
「そのドレスにティアラ、よく似合ってるわね。流石は《砂龍族の王女様》ね」
ナンシーはリタを褒めた。が、彼女はドレスに馴染めなかった。未成年の彼女にとっては、青いドレスやそれに飾られているルビーが、即位式の雰囲気を醸し出しているようにとれるからだ。というのも王家のしきたりでは、王位継承者となっている女性は必ず即位式の時に、“ルビーが鏤められた青いドレス”に身を包むことになっているからだ。
「陛下、殿下お一人で旅に出しても、大丈夫なのですか?」
「大丈夫だろう。あの子は、自分で自分の運命を切り開こうとしている。それに、旅に出るのはリタだけではない。水龍と火龍も一緒なのだ。何も心配することはない」
「はぁ……。いわゆる、“可愛い子には旅をさせよ”ということですね?」
「ほう。ツーリアン、お前もうまいことを言うようになったな」
ランディー王とツーリアン大臣は話しながら、リタが冒険に出るのを喜んで見送ってあげたい、と思った。
こうして二日目の晩は、楽しい一日となって過ぎて行ったのである。
そして翌朝――
王族父娘や兵士達を始め、他龍族民の二人は朝食をとっていた。
「朝食までご馳走になってしまって……。どうもすみません、陛下」
ナンシーは頭を下げて言った。ランディー王は、気兼ねせずに食べるが良いぞと言いたげに、首を縦に振った。
ヨゼフは場所を弁え、賓のある食べ方をした。それを見て、リタは笑みを浮かべる。
ふと、二人はリタが衣替えをしていることに気がついた。チャイナ服のようなデザインの青色の上着と、下にジーパンを履くという組み合わせのルック。奴隷服は嫌だ、と思ったのだろう。
「リタ、その服……」
「ああ、昨日自分の部屋のクローゼットを開けてみたら、入ってたんだよ。きっと、ジオが用意してくれた物なんだね」
「そうなんだ。それはそうと、荷物は?」
ヨゼフは右の頬を膨らませたまま、リタに聞いた。ちゃんと用意はできていると言いたげに、彼女はショルダーバッグを軽く叩く(この中には、武器の爪も入っている)。
二分後、皆が朝食を終え、城の外に出た。
「リタ、気をつけて行くのだぞ。ヨゼフ、ナンシー、娘をよろしく頼む」
「わかりました。お任せ下さい」
ヨゼフ達は一礼して、リタの後ろに行った。
「行って参ります。キアとの戦いの準備の時が来たら、また戻ります」
リタはそれだけをランディー王達に伝え、ヨゼフやナンシーと共に、龍戦士捜し及び魔道族討伐の旅に出た。