砂龍城の中で、リタ達は地下神殿の鍵を見つけた。が、喜んでいられたのも束の間、騒音のように大きな声と共に、突如として現れたキア一味の火系魔道師。
彼の話では、冷酷な領主の命令で、リタ達の行動を阻止することになっている。
それではなぜ、魔道族はリタ達を奴隷にしたのだろう。そして、《闇の大蜘蛛》と戦わせ、自由を与えたのだろう。彼らの目的は、ガルドラに住む龍頭の魔族達を根絶やしにする、ということだけではなさそうだ。
リタは顔をしかめて、火系魔道師に聞いた。
「答えろ、フィアロス。“キアのため、領国のため”って、どういう意味だ? 何を企んでる?」
リタの質問に対して、フィアロスははぐらかすように、
「少しは人の話を最後まで聞いたらどうだ? その秘密を迂闊に明かしたら、俺までリゲリオンと同じ目に遭う。そんなのはごめんだ」
と答えた。
更にフィアロスは、付け加えた。
「だが、もしお前達を倒すことができれば、あの哀れな氷系魔道師の弟を救うこともできる」
はたから見れば、自分勝手にもとれるような理屈を、フィアロスは述べた。
(フィアロスめ、仲間を想ってるのか、想ってないのかどっちだよ! 念のため、“僕のとっておきの罠”を仕掛けてから、会心の一撃といくか)
ヨゼフは意味のない微笑を浮かべながら、一人妄想をしていた。リタは気持ち悪いや、と思った。
巨大な砂龍の爪を象った武器を左手に持ち替え、彼女はフィアロス目掛けて突進した。爪は火系魔道師の右腕を掴んだものの、傷一つついていなかった。それどころか彼女の一撃は、火系魔道師の素手で弾き返されてしまった。
(爪を素手で弾き返しただって? そんな馬鹿な……。この魔道師は一体、何者なんだ)
呆然とするリタを助けるかのように、ヨゼフが槍先で地面に穴を開けた。次に彼は、リュックから水筒を取り出した。それを持って、彼は穴に水を注ぐ。その動作はまるで、花を育てているかのようだ。
(ヨゼフ……? 何をしてるんだ?)
リタは思った。ヨゼフの行動が不思議だったからだ。
全ての穴に水を注ぐとヨゼフは汗を拭き、手を交互に打ち鳴らした。
「ここからが本番さ!」と叫びながら彼は槍を十回転させ、地面に突き刺した。
すると、フィアロスの足元が揺れた。やがて彼の足元は、稲妻の模様を描くように割れ、中から水しぶきをあげた。
「名付けて水系呪文、《円陣水しぶき》さ!」
ヨゼフは叫ぶように言った。
(なるほど。あの時オアシスで水を調達してたのは、呪文を繰り出すのに必要だったからなのね。やるわね、ヨゼフ)
ナンシーは先程ヨゼフがとった行動を見ていて、頼もしいと思った。
「やるな。流石は我が領国で鍛えていただけのことはある。今日はここで撤退だ」
と言い残して、火系魔道師はレザンドニウムに戻った。
(逃げられたか……。でも、砂漠や砂龍城の安全は確保できた。今回は、これで良しとしよう)
リタはしばらく、フィアロスが去った方向を見つめた。
「リタ、地下神殿へ行くよ」
「置いて行くなよ、ヨゼフ、ナンシー」
リタは二人に催促され、慌てて走った。