ありがとう。でもね…







私が話すのを遮って
山本が言った。







夫さん言ってたんです。
夫さんのしていることは
本当にしてはいけないことです。
でも、どの女と居ても
ミサキと比べてしまう。
やっぱり誰もミサキには敵わない。
ミサキならこうした。
ミサキなら、って思うって。
そう言ってました。
これだけは、嘘じゃないです。
だから、夫さんは必ず
ミサキさんの所に戻ってきます。
本心は戻りたいと思うんです。
ただ、何かが戻れなくしているんだと
思うんですが、それが
わからないだけで。
ミサキとお子さんの話
いつもしてました。







今更知りたくなかった。








いま言わないでよ。
聞きたくなかった。
知らないままで良かった。








でも、やっぱり
許すことは出来ない。







涙で言葉が詰まった。
私は、まだこんな言葉でも泣くんだ。
呆れるくらいバカだ。







電話の向こうで
山本も鼻を啜っている。







私は、自分の決意が揺らがぬように
山本に言った。







不安定な息子の心を。
父親を求めても満たされない心を。







どんなに息子が懇願しても
帰っては来ないことを。









そのうち、山本が
ハッキリ泣いているのがわかった。








言葉に詰まる。








電話なのに
バレバレなくらい泣く。









良い奴だな。
そう思った。








気が付けば、また何時間も過ぎていた。






まだ大丈夫ですよ。
だってこんなに長時間、夫さんだけの
話題で話せるんですから。







少し気弱に話す山本に
そうかもしれないね。といい
電話を切った。