『そして父になる』(そしてちちになる)は、2013年制作の日本映画。是枝裕和監督。第66回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品し 審査員賞を受賞。
福山雅治氏が主演なんで、気にはなっていたのですが躊躇してました。
女性誌の人気男性タレントの常連で、結婚発表しただけで騒がれ。
売れっ子歌手ですが歌謡曲でワタシの好みでは全く無く、自称フォトグラファーで俳優業もこなすイケメンマルチタレントさん。
父親役はないやろぉ~、父親役なら緒方直人氏とかのんがはまり役やん~
ですが、鑑賞後は父親役からほど遠い彼がやるからこそ味が出る。
緒方直人氏ならこの映画は撮れないですね。
それでも福山雅治氏はワーカホリックな一流建築士には見えなかったが。。。
唐沢寿明氏がキャスティング マイベストですね。
心を開いて子供とほたえるシーンがあるのですが、ちょっと違和感アリです。
その他の俳優さんは納得です。
特に福山氏の上司役の國村準氏がすばらしい。仕事が出来て頼れる上司役をやらせたらピカイチ。
樹木希林さんのおばあちゃんもド定番。
ストーリーは子供の取り違え。
家族の在り方をテーマにした映画やドラマに取り上げられますね、大映ドラマの「乳姉妹」とか。ちなみに家にDVDセットあります。
この「そして父になる」は「乳姉妹」の様なドタバタ大衆ドラマではない。
カンヌで評価されたのは伊達ではないです。
取り違えられたのは6歳の男の子でまったく同じ歳の男の子を持つワタシとしては、感情移入せざるを得ません。もう、途中で観ていられなくなりましたよ。
方や福山氏演じるスカイツリーを望む高級マンションに住むエリート建築士に従順な大和撫子の妻、行儀よくお受験に挑む息子。
方やリリーフランキー氏演じる、田舎の小さな電器屋を営む粗野なオヤジでええ歳して三人の子持ち、肝っ玉かあさんにわんぱく坊主。
あ、キャスティングの話しでもうひとつ、リリー フランキー氏の奥さん役ですが、福山氏とリリー氏があまりにも対照的なにに対し奥さんはそれ程対称的ではなく、もっとシンメトリーに描くにはリリーの奥さん役はもっとぶさいくで化粧っ気もなく田舎くさい肝っ玉感が欲しい気もします。
たとえば「濱田マリさん」(血と骨で熱演)、リリー氏と子供たちが大阪弁だしぴったしカンカン。
だけど家族全員大阪弁だと前橋で昔ながらのパパママショップの電器屋さん(ちなみに東芝のお店です)を営んでいるのに矛盾する。
それに、奥さん同士は微妙な女性同士の距離感で一見仲良し。お父さん同士は反目しあっている程ではないが、分かち入れ合えない、こんな事でもなければお互い知り合わない感がプンプンしているのに対しママ同士は女性特有のコミュニティ感覚で距離感を保っている。これは現に自分の家内を見ていて実感する。
と現実感のある対照的な家族が描かれているが、ワタシはどちらでも無いですね。
福山氏な一面もあるし(ヴィジュアルはナイです)、リリー氏の一面もある。
でもどちらかと言えばリリー氏かな、そして彼は父親像の正解では無いですが、そうありたいと思う。福山氏もリリー氏に対し父親も色々ある、と反発するシーンがあるが、本心ではないだろう。
福山氏の父親としての未熟さ、それを乗り越えていくストーリーだとすれば、もっと彼と父親、そして継母との関係、特に継母との関係をもっと丁寧に描いて欲しかった。
自身も子供の頃に継母に反発して家出したことがあると言ってたが、ちょっとその辺りの描写が弱い様に感じた、取り違えた看護師と連れ子の件や、実験用森林の件も形式的な描写で、その分の時間を使って福山氏と継母との昔の葛藤から現在に至る関係を木目細やかに描写したら、彼の父親としての成長録やラストシーンの気持ち的な盛り上がりも出る様に思う、極私的ですが。
そして、家内に話しました。
「もしウチの息子が取り違えだったら?」と。
「それはありえない、いくら新生児とはいえ一人一人顔は違う、自分の子供を間違えることなんて考えられない。」
「いや、それはそうかもしれないし、そうやって奥さんが責められるシーンもあるんだけどね。もし。。。」
「ないない。。。」
と会話にならずでした。
そんなことを想像するのは馬鹿な事かもしれないけど、映画を観て想像してみると、ワタシの場合は交換なんぞ出来ません。
実際にそう言う立場に身を置くとどんな答えがでるか分かりませんが、取り違えなんて無かった事にしてこのままこの家族で暮らしていきたいと思いますわ、ある意味 現実逃避してるかもしれんが。
ラストシーン。
色々省きますが両家族がリリー氏の電器屋さんに入ってジエンド。
一旦は血を選び子供の交換をするのですが、結局どちらがどちらの子供を育てていくのかは観客預けとなる終わり方です。
ワタシは骨を選び、取り違えたままで、今までの生活に戻るのだと思う。