「雪冤」 大門 剛明 | 1日1冊読書日記

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極度の活字中毒で、1日1冊は本を読みます。
ですが、2010年に入ってからブログをUPするのが面倒臭くなってきてしまいました。なので、ボチボチ感想を書く気になったものだけ書いていきたいと思います。


テーマ:

雪冤 (角川文庫)


十五年前、まだ大学生であった八木沼慎一は二人の男女を惨殺したとして殺人の罪で逮捕され死刑判決を受けた。慎一の父親悦史は息子の無実を信じ、誹謗中傷を受けながらビラ配りなどを通じて無実を訴える日々を送っていた。しかし息子の手記が雑誌に投稿されるや否や、メロスと名乗る人物が自分が犯人であると名乗り出てきたのです。


被害者側、加害者側、それぞれ思うところがあります。どちらの側からの視点も丁寧に描かれ死刑の是非を問う重い作品進行になっています。

被害者側は大切なものを奪われた立場から死刑を支持するも、メロスと名乗る真犯人の存在により少なからずの動揺を覚えます。

加害者側、慎一の父親は息子が無実だと信じていたのでメロスの登場には歓喜します。怒りはありません。長い年月の間にそういったものは薄れ、ただただ自首したいと名乗る犯人に感謝の気持ちさえ沸いてくるのです。けれど、今すぐに自首できないと言う犯人。


小説の中でメロスは友の為に約束を果たします。しかし、この作品に登場するメロスはどうなのでしょう。死刑を間近に控え、いつ執行されてもおかしくない状態の慎一の為に本当に真実を話してくれるのか。

そして父親と面会しようとしない息子。彼は何を想い日々を生きているのか。

常に綱渡り状態の中、ハラハラとした展開が続きます。

一向に正体の見えないメロス。増え続ける死刑執行人数。再審請求をするべきなのか、静観するべきなのか。父親の立場に立てばたまらない気持ちだと思います。


雪冤とは無実の罪をすすぎ晴らすこと、の意だそうですが、ぐさりとくる言葉なのです。

たくさんの人間が「雪冤」の言葉を胸に閉じ込めているのです。


人間描写がとても巧く登場人物の黒い心情までも余すことなく描かれていました。その中で慎一だけが一点の曇りもなく気高い心を持ち得ていたのが不思議です。彼の起こした行動、心情が理解できません。けれど、人の心に響く歌を歌う人間なのです。あの瞬間、その場にいた人々の心を打ち震わせることができた人間なのです。彼は神だったのでしょうか・・・深い作品でした。

人間の心とはここまで崇高で美しくなれるものなのかとそう感じました。


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