家の近所にお気に入りの焼き肉屋がある。
俺以外にもファンは多く、当日予約は難しかったりする。
土曜日だったら、猶のことだ。
その日は土曜日だった。
しかし、ダメもとで電話をすると、運よく席を予約できた。
店に着くと、案内された席はいつものカウンター席ではなくて、テーブル席だった。
隣のテーブル席には、若い体格の良い青年二人がいて、笑い声が凄まじかった。
丼飯を片手に甘タレのどっぷりついた焼き肉とともにご飯を頬張って、それをビールで洗い流すといった、これまた凄まじい食べっぷりを披露してくれていた。
俺も若い時は、こんなだったかな?
思い出そうとしたが、そんな記憶は、俺が若いころ、フードファイター番組で優勝したことがあるという記憶以上に一切思い出すことはできなかった。
誤解なきように言っておくと、フードファイター番組で優勝した経験も一切ない。
豪快に飲食する二人の脇、ひっそり、細々と、肉を焼いては焼酎を飲んだ。
時々、同席の妻と、ぽつりぽつりと会話をした。
しかしながら、結局のところけっこう食べていた。
タンスジにはじまり、シビレ、ツラミ、センマイ、レバー、ハラミ。
ハラミに至っては2皿も食べていた。
焼酎も一本空いて、また入れた。
隣の勢いが知らぬうちに俺にも乗り移っていたのかしれない。
「ヘイ!ネーチャン、オカイケイオネガイ!」
最後、隣も驚く大声上げて、店の女の子呼んで、お会計。
って、最後の下りは嘘八百です。