Hands Out Vol.25(2007年6月号)掲載インタビュー記事
2001年に能と共に「能楽」として、伝統芸能の中で初めてユネスコの世界文化遺産の指定(第1回人類の口承及び無形遺産の傑作の宣言)を受けた狂言。狂言界初の重要無形文化財(人間国宝)となった善竹彌五郎(本名・久治)氏の曾孫・善竹忠亮さんは、市井に能楽を引き戻した彌五郎氏の遺志を受け継ぎ、善竹家と共に狂言界に新風を吹き込みつつある。
狂言師 善竹忠亮
<プロフィール>
昭和55年生まれ。神戸出身。本姓は茂山、流儀は大蔵流狂言方。4才で祖父、先代・善竹忠一郎に手解きを受け、以降、父・忠重に師事。初舞台(狂言「伊呂波」)は4才の秋。平成8年、(社)大阪能楽養成会入会。平成17年、同・研究科卒業。立命館大学産業社会学部卒業。現在、立命館大学・先端総合学術研究科に在籍、主に京阪神を中心に活動中。
http://www.zenchiku.com
狂言界に新風
Q. 善竹家とは?
善竹 江戸時代の京都の茂山家に遡ります。茂山家は江戸時代に千五郎家と忠三郎家とに分派し、曽祖父・彌五郎は忠三郎家に養子に入った人です。
Q. 彌五郎氏は人間国宝だとか?
善竹 狂言界では初めての人間国宝です。曽祖父は時代感覚に優れた人で、能楽堂以外の場所での演能がご法度だった時代に、大阪の朝日会館ができた時に家元クラスの役者を呼んで演能をしたのです。言わば、プロデューサーの先駆けですね。これはその後30年続いたのですが、能楽堂に封じ込められていたものを外へ引き出したという点、プロデュースしたのが三役(ワキ方、狂言方、囃子方)だったという点で画期的でした。その功労を認められて、金春家から「禅竹」をと言われたのですが、その時点では辞退し、彌五郎という名前をいただき茂山彌五郎と名乗りました。戦後、人間国宝になった時に改めて「禅竹」の字を「善竹」と改め、一家を挙げて苗字を変えました。
Q. 狂言も世襲ですが、疑問を持たれたことは?
善竹 4才から稽古を始めたのですが、父がうまく「飴と鞭」をしていたのでしょうね(笑)、別に狂言を嫌とも思わずにすんなりきています。声変わりの時期は声が出にくくなりますが、発声もうまく教えてもらいました。
Q. 6月下旬の日伊「喜劇の祭典」はどういうものですか?
善竹 これは早稲田大学国際教養学術院・関根勝教授が「2007年国際フォーラム‥狂言とコンメディア・デッラルテ」の中で企画され、イタリアの春の祭典〈Primavera Italiana〉の一環として上演されるもので、日本の古典喜劇・狂言とイタリアの古典喜劇をクロスオーバーさせるものです。関根教授は、元々、観世流の名門の御出身なのですが、学者の道に進まれ、ローマ大学に赴任された折、授業で狂言をとりあげ、学生達と共にローマKyougenを実行した方です。その時の学生も今回、Biloraというイタリア喜劇を翻案した日伊共演の「いたち」で出演します。
Q. この時の狂言・濯(すす)ぎ川は新作ですか?
善竹 明治以降に作られた狂言を新作と呼びますが、濯ぎ川は、コメディ・フランセーズのLe Cuvier(洗濯桶)という作品を劇作家・飯沢匡氏が戯曲として書き下ろし、演出家の武智鉄二氏と茂山家が改めて狂言として翻案したもので、茂山家では何度も演じています。善竹はこれまでほとんど新作を扱ってこなかったので、今回は新たな挑戦となります。
Q. 関根教授の活動は今年だけなのですか?
善竹 今年は1年目で、来年の大きなフォーラムに向けてのプレ公演なんです。来年はシェークスピアの4大悲劇と狂言のクロスオーバーです。狂言の美も伝統の中で、ある意味そぎ落とされ過ぎた感があるので、もう一度狂言に演劇的要素を盛り込みたい、モルモットになってくれないかということで、私も「ハムレット」をやらせていただくことになっています。これまでに違う訳のものを2冊読み、映画もいろいろ観ているんですよ。
Q. 狂言と他国の古典劇とのクロスオーバーも大変興味深いです。現代の若者にとってあまり身近なものではない狂言への入口としても、期待できそうな試みですね。
善竹 ぜひ、ご覧ください。
お知らせ!!
狂言師・善竹忠亮さんが、初めての方にもわかりやすく、「狂言入門講座―お題:狂言のお約束」をやってくださいます。
興味のある方は、ぜひ、いかがでしょう?
狂言入門講座 お題―「狂言のお約束」
2009年9月6日午後4時~5時30分
講師:大蔵流狂言師 善竹忠亮
場所:さくらみかふぇ(JR元町駅から北東へ徒歩1分)
http://www.kcc.zaq.ne.jp/sakurami/
会費:1500円(1ドリンク付)
web magazine Hands Out http://www.handsout.co.jp/
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