直腸がんに対する集学的治療について、今色々な臨床試験の結果が出ており、

そしてこれからも結果がどんどん出てきており、、

正直何が正解かは分からず。

 

ここでいったん整理しようと思います。

最近(3/14)Nature Reviews Gastroenterology & Hepatologynature 

にPublishされたKagawa Yoshinori先生の論文にまとめてありましたので、

それをさらにぎゅっと縮めて、自分のためにまとめてみました。

 

直腸がんに対する治療は再発(局所および遠隔)の抑制とQOLの改善が重要。

局所進行直腸がんに対しては、通常のTMEに加えて、術前CRTと術後補助化学療法が行われてきた。

側方郭清も含めた治療で、局所再発は減少したが、補助療法によるOSの改善は得られていない。

 

そこで、ESMOやNCCNのガイドラインでは、

局所進行直腸がんに対して、TNTが推奨されている

(Short course RT or Long course RTと導入もしくは地固め化学療法)

しかしTNTの最適なレジメン、治療中の再病期分類の適切なタイミング、

cCRを正確に同定するための正確な臨床的・放射線学的基準の開発、

局所再発時のSulvage手術の安全性、TNTによる遅発性毒性(性機能低下、二次がんの発生、

手術を行った場合の肛門機能のさらなる悪化など)の可能性、治療決定の指針となるバイオマーカーの同定、

など、多くの問題が残っている。

 

現在3つの第III相臨床試験の結果が出ている。

①RAPIDO

術前Short course RT+CAPOX or FOLFOX+TME(TNT)群で

Long couse RT+TME+選択的Adjuvant(LCCRT群)に比べて3年disease-related treatment failure 

は減少。ただしOSは同等で局所再発はTNT群で多かった。

TNTでのTMEの質低下とconformalなRTを受けた患者が少なかった影響だろう。

 

②PRODIGE23

FOLFILINOXによるinduction chemo.+Long couse RTを併用するTNT群vs

nCRT(Long course)+TME+ACT(補助療法 選択的ではなく全員)による対照群を比較。

TNTが3年DFS改善(76%vs69%)も、局所無再発生存は差なし。

pCR率はTNT群で高かった。

ASCO2023で7年の長期成績が発表され、遠隔無再発生存、DFS,OSはTNTで有意に改善。

 

③STELLAR

術前Long course CRTと比較してTNTで3年DFSの非劣性示された(64.5%vs 62.3% P<0.001)。

pCRとcCRの合計率は、TNT群が術前LCCRT群より高かった(21.8%vs12.3%;P = 0.002)。

 

これらまとめると

TNTはLong course RTと比較して長期予後改善し、高いpCR率を達成。

しかしUp front surgeryが良い患者もいる。

 

PROSPECT試験では中高位直腸がんcT2-3,N1 or T3N0におけるRTの省略について検証。

FOLFOX群と標準的CRT群との5年DFSを検証し、非劣性が証明された。

放射線やTNTの有効性を予測するバイオマーカーが必要である。

また最適なレジメンとして、induction chemoが良いのか地固めが良いのか、

放射線はLongかShortか、doublet , tripletが良いのか、などわかっていない。

 

解決すべく、現在臨床試験が行われている。

CAO/ARO/AIO-12およびOPRA試験では、induction chemoと地固めchemoを比較し、

長期およびQOLで差がないと。しかし病理学的奏功が悪い集団では術前治療後から手術までの期間が長いほど

OS,DFS悪かった。

しかしinduction chemoでは奏功率が高かった。

最近RAPIDO試験の結果が更新され、Short RT後のinduction chemoの有効性について議論され、

Short 後のConsolidation chemoはLong RTと同等の局所再発率であるとされている。

 

2023年のASCO Gastrointestinal Cancers Sympo-siumで発表された

Memorial Sloan Kettering Cancer Center(MSKCC)の後ろ向き研究では、

LCCRT-TNTの2年臓器温存率は40%(95% CI 35-47%)であり、

SCRT-TNTの2年臓器温存率29%(95% CI 20-42%)よりも高かった。

 

DoubletかTripletの議論は臨床試験の結果は出ておらず、

現在Janus Rectal Cancer試験(NCT05610163)とENSEMBLE試験が走っている。

①Janus Rectal Cancer試験

Long couseRT後にmFOLFOX orCapox vs

Long couse RT後にmFOLFIRINOX

primary EndopointはcCR率。

 

②ENSEMBLE試験

SCRT後にCAPOX 🆚 CAPOXIRIによる地固め群

第III相無作為化試験

主要評価項目はDFS

 

再病期分類の基準はTNTにおいて重要だが決まっていない。

臓器温存について、

OPRAの5年追跡結果ではTNTの半数で長期臓器温存ができていたが、

半数は再増大のためTMEを受けていた、ということ。

そして最初の2年で再増大していたお。

→なのでNOMを選んでも最低2年は経過をきちんと見ることが大事。

またNOMで気を付けることは、再増大後に遠隔リスクが高まること。

より腫瘍がagressiveになる可能性。

 

またQOLについても、NOMの患者で

肛門機能障害25%、性機能障害30%(オペと同じくらいじゃないか)。

TNT後、NOM後の肛門機能障害、性機能障害の比較はまだわかっていない。

 

Presition oncologyではAIを用いた意思決定支援システムであるWatson for Genomicsが、

固形腫瘍に有用であることが報告されている。

日本で進行中のSCRUM-Japan MONSTAR-SCREEN-2試験)は、腫瘍組織を用いたDNA解析、RNA解析、タンパク質解析を行う

分子プロファイリング研究。

治療標的タンパク質解析、腫瘍微小環境の評価、治療前後のctDNAを用いたリキッドバイオプシーによる解析などが行われている。

 

放射線の分野でもAIを用いて治療予測、高リスク因子の同定などの研究がなされている。

 

現在進行中のACO/ARO/AIO-18.1、Janus Rectal CancerおよびENSEMBLE臨床試験の

コラボレーションが行われている。

バイオサンプルを用いて、これまでの予後予測ゲノミクスおよびトランスクリプトミクスの特徴を検証することが目的の1つ。

さらに、マルチオミクスデータを統合し、LARCの治療モデルを開発する、とのこと。

 

結語

PRODIGE 、RAPIDOおよびSTELLAR試験は、TNTのpCR率の改善と長期的な腫瘍学的有用性を検証。

OPRA試験では、NOMの可能性が示された。

患者をより層別化し、転帰を予測することが求められる。

pMMR の局所進行直腸がんについては、Janus Rectal Cancer試験、

ACO/ARO/AIO-18.1試験、

ENSEMBLE試験の共同研究により、よりよい治療法が検討されるだろう。

 

・・内容多すぎですね。