ーあなたに微笑むー



終わりは誰にでもくるわ
どうか泣かないで
私が精一杯伸ばした手を
あなたは握りしめ自分の頬に当てた

どうか一緒に俺も連れて行ってくれ

大粒の涙が私の手に伝い落ちた
どうしてあなたを連れていけるの

・・・また会う日まで

私は・・・あなたに微笑んだ
とても幸せな毎日だった

深い闇が私を覆い、意識が遠く消えていく
あなたの声だけが、私の耳にこだましていた

ウンス、ウンス

私は長い長い夢に落ちた

「先生、もう診察の時間ですよ!起きて下さい」

激しい揺れと大きな声に意識が戻る感覚がする
誰かが私の体を揺さぶり、声をかけている
そして目が覚めた

慌てて立ち上がり周りを見たわ
窓から見える江南の街は、いつもと同じように車が行き交っている
見上げた空は、青く澄み渡っていた
白衣の裾が机の引き出しに挟まって引っ張られる
まるで私を引き止めたあの人のよう

「また、かならず出会えるわよね」

どうして私は、またこの続きを見れるか?と思わなかったのかしら
胸の奥が引き裂かれるような恋しさに
涙が目のふちを濡らし流れ落ちた

私の記憶は、鮮やかにあの人を覚えている

必ず・・・出会えるわ

見下ろした町の街路樹の桜の花が揺れていた