小学2年生のフィンランド留学体験記 第九章 9月 30.お別れ映画観賞会 | フィンランドに1年住んでみる(在外研究)

フィンランドに1年住んでみる(在外研究)

~子連れフィンランド滞在記~
1年間家族でフィンランドに住みました(2022年10月〜2023年10月)。
準備からフィンランド生活について思ったこと、
感じたことの記録
趣味の4コマを投稿中

 

登場人物

ダニエル:大親友

ユハ:悪集団。乱暴なサッカーをする。仲の悪いクラスメイト

サミ:同じクラスの友達

ヘンニ先生:担任

レオ:仲の悪いクラスメイト

 

 

30.お別れ映画観賞会

 

 あぁ、ついにこの日が来てしまった。今日は小学校に行く最後の日だ。前の日にダニエルのお母さんと会って、僕が日本に帰っても、ずっと連絡を取り続けようと約束をした。ダニエルのお母さんと僕のお母さんが電話番号以外にも連絡先を交換して、ダニエルが日本に来る時、または僕がフィンランドに行く時は必ず連絡しあうことにもなった。ダニエルのお母さんとはプレゼントも交換し合った。ダニエルのお母さんは僕に「ダニエルとずっと友達でいてね。」と言ってくれた。ダニエルがどれだけ僕のことを大切に思ってくれているのかが伝わって来る。住むところが遠くなるからって大親友を失うわけにはいかない。僕も日本からダニエルに連絡し続けたいと思った。

 朝はお兄ちゃんと自転車で登校した。この時間にこの通学路を通るのも最後だと思うと、とても特別な時間に感じられた。授業が始まる前にヘンニ先生が今日の時間割を発表した。「今日はさくとのお別れ会です。」と先生が言うと、ほとんどのクラスメイトが一斉に僕を見たから驚いた。僕は一番後ろの席だからクラスメイトの顔がよく見えた。誰も視線をそらさず、じーっと見つめてくるから照れるではないか。「え?さくとはどこに座っている?」とキョロキョロ探していた子も僕を見つけ、ついにクラスメイト全員の顔がこちらを向いた。「さくとは日本に帰るので、小学校に来るのは今日が最後です。」まだ誰も僕から視線をそらさない。「3時間目にみんなで映画を観ましょう!」と先生が言うとみんなはやっと先生の方を向いたのでホッとした。給食はダニエルと一緒に食べた。給食は何時もよりたくさんよそった。最後になるこの味を忘れないでおこうと思った。

 3時間目になった。みんな家から持ってきたおやつを出して、食べながら映画を観た。サミは僕にチョコナッツとグミを渡しに来てくれた。僕はおやつを忘れてしまったダニエルとハリボーのクマグミを半分こすることにした。映画は女の子が主人公のアニメだったけれど、内容はほとんど覚えていない。ただ、隣で笑っているダニエルの顔だけはよく覚えている。一生忘れないだろう。そして今日一番驚く出来事があった。僕に意地悪していたユハがプレゼントをくれたのだ。「さくと、元気でな。」とユハ。あれ?僕のこと嫌いだったんじゃないの?悪い事ばかりするレオも「日本語でさくにメッセージを書いたんだ。間違っているかもしれない。大丈夫かな?」と話しかけてきた。「うん、大丈夫。」と僕が答えると安心したように見えた。

 今日の最後の授業が終わると、僕はヘンニ先生に呼ばれてみんなの前に出た。クラスメイトが1列になり1人ずつ僕とタッチをした。「さようなら。」「元気でね。」と僕は全員に挨拶をした。全員とタッチし終わると今度はみんなが2列になり両手を上げてトンネルを作ってくれた。僕がそのトンネルをくぐり抜けるとヘンニ先生が立っていた。「これはみんなからのプレゼントよ。」そう言ってヘンニ先生は僕に寄せ書きをくれた。クラスメイト全員が僕にメッセージを書いてくれたみたいだ。いつの間に書いていたんだろう!レオが言っていたのはこのことだったのか。レオはひらがなと漢字を使ってメッセージを書いてくれていた。書くの大変だっただろうな。日本語を調べて一生懸命書いてくれているレオを想像するだけで、心が温かくなった。せっかく仲良くなれた友達と離れるのは寂しい。みんなはこれからもフィンランドにいることができていいなとも思った。