マヨルカ島に住んでいる私が、フィンランドに戻ろうとしていることを知ると、ほとんどのヨーロッパの人たちは冗談だと思うようです。

マヨルカから一時帰国する日、空港までのタクシーの中から撮った景色。12月半ばだけれど、暖かく明るいキラキラ


一方、日本では大人気の北欧。いつまでも終わらない北欧ブームに驚かされます。帰国するたびにフィンランドをはじめとする北欧のインテリア、デザイン特集の雑誌が出ていてびっくり。

また重税の上に成り立っている福祉や教育レベルが高いことは、日本でもよく知られています。国際学力調査PISAでの順位の高さや(近年は順位を下げていますが…)、核廃棄物の処理など、フィンランドへの日本人の関心は幅広いのです。

でも北欧の厳しい気候を知るヨーロッパの人たちは、パラダイスと呼ばれるマヨルカ島からフィンランドに行くのは、死を目指すようにでも見えるらしい。「なんでフィンランドなの?他の国で仕事はないの?」と私を貧乏クジを引いたかのように憐れんでくれる友人たち。この、日本での北欧への印象と、ヨーロッパでの印象のあまりの違いに戸惑うどころか笑ってしまうのです。

飛行機から見えたフィンランド、雪と氷に覆われていました。


午後2時半で夕日。雲で覆われているから、一日中ぼんやりした天気。


一時帰国中、日本人でかつて北欧に住んでいたものの、その後日本の生活に戻った知人たちに会うと、「もうフィンランドには戻れないな。日本は冬だってお日さまが見えるし、寒くてもオシャレができるレベル。食べ物は美味しいし、お酒も安いし。」と声を揃えて言います。

真冬でも空が明るかった東京は多摩動物公園。


そんな中、いまでもたまにフィンランドに来る大変聡明な友人いわく。

「住んでいるとイヤになってくるんだけど、離れると恋しくなるという、不思議な国だよね。marichatoさんも戻るまでにフィンランドの好きなところをまとめておいたらいいよ。そしてつらくなったら見直したらいいよ。」

まさにその通り!住んでいると...

・エンターテイメントが少なく、あっても高い。
・冬の日照時間が少なすぎて、寝ても寝ても疲れがとれない。
・税金が高すぎ。フィンランドの平均月収を下回る私ですが、それでも給与のある一定額からは所得税率38%。これに上乗せして失業保険、社会保険料なども取られるので、身入りが大変少ないガーン➡︎生活に余裕がない。
・外食は高くて美味しくない(でも最近、アジア系ご飯屋さんが増えてきて、ややクオリティ高くなっているような…)。
・お花はほとんど輸入品だから高額で気軽には飾れない。
・お酒も高い。レストランやバーでワインなど注文すると、「12? 16?」と聞かれます。12ml、16mlの意味で、きっちり計量してグラスに注がれるのです。アルコール度数が高め(4,6%だったかな?)だと専売店Alkoでしか買えず、スーパーで買えるアルコール度数低めのビールやチューハイみたいなものも、夜9時には売り場に鍵がかけられてしまう。
・人と人との距離が遠い。
・冬が暗くて長すぎ。それゆえファッションなどは楽しめず、ひたすら防寒対策。
・ファッションやメイクなどがヨーロッパといえど最新のものが入ってこない。ウィンドーショッピングさえ楽しめない。フィンランド人女性がメイクと下着にかけるお金は、EUで一番少ないとのデータあり。。。

などなど、もうとめどなく出てくる不満爆笑

でもね。なんだか不思議に心が落ち着くのも事実で。

人口が少なく自然が豊かだからか、戻ってくると生まれ育った東京よりもホッとするのです。…と、主人に言うと「そりゃあそうだよ。何でもある東京と何もないヘルシンキを比べちゃね。」と大笑い爆笑

そもそも私の長ったらしいブログ名(近々変更予定)、フィンランドの生活に疲れて、海外(フィンランド)生活のいいところを見直していこうと言う意気込みから決めたもので。

この期に見直してみたのです。フィンランド生活、何が好きなのだろう、と。

昨日、かつて通勤路だった道をバスで通った時の窓からの景色。この空と雪と針葉樹しか見えない景色!東京の通勤路とは比べられない穏やかな景色に、心が穏やかになるのです。


降車ドアからも、木しか見えない。ちなみにバスもガラガラ。


雪国出身でもないのに、こういう景色に心が落ち着くのです。空と木と雪しかないから??


一番人が多いであろう、ヘルシンキ中央駅付近も、平日の昼間でもこんな閑散としていて。もちろん観光客が増える真夏はもっと混んでいます。


いたるところがスケートリンクになるのも、スケート好きにはありがたいフィンランドの冬。ただしマイナス20度以下になるとムリ。

そして寒くたって雪が降ったって、電車や飛行機に影響が出ることはあまりないのも、とてもありがたく、フィンランド人を誇らしく思う理由。

さらに首都ヘルシンキでものんびりしていて、ゆっくりくつろげる空間がある。さすがこういうところはデザイン先進国、フィンランド。

ヘルシンキの一番の繁華街、Aleksanterinkatuの本屋さん、Suomalainen kirjakauppaにて。


併設のカフェも、くつろげます。


ミニマリスティックで、静か。自分と向き合える空間。


帰りにフィンランドデザインのカード類を購入するのも、ちょっとした楽しみ。




ここにいると、余計な欲が削ぎ落とされて、自分に必要なものが明確になっていくのです。

でも、自分と向き合える、なんて悠長なことを言っているけれど。必要以上に孤独に陥りやすいのも事実。

自殺率の高さで知られるフィンランド。人同士が距離をとり、気候が暗く、手軽なエンターテイメントが少ないことを反映していると思います。アルコール中毒者も多く、キリスト教の教会で祝福として牧師さんから与えられるパンとワインも、ワインは供されないことがある。

やはり、厳しい国なのです。

つらい時、深みにはまってしまいそうな時に、いつも思い出すフィンランド人の友人の言葉。

「冬につらいことを考えちゃダメよ。春になって太陽が出たら全て上手くいくから。」

そして白夜の夏になると…

「せっかく太陽が出ているのだから、考えごとなんかしていてはもったいない!今の季節を楽しまなくちゃね!」

『自称・生まれた国を間違えてしまったイタリア人』のフィンランド人の彼女。歳をとるごとに、気候の厳しさが心理的にキツくなるという彼女は、定年後にスペイン移住を夢見て、目下スペイン語の勉強中。

そんなスペインのリゾート地に住みながら、フィンランド人にもきついフィンランドに戻ろうとする私。やっぱり変わり者だな宇宙人くん