出産する前、母乳が出なかった時に備えて、大量の人工乳を買っておきました。母乳が出たら出たでよし、でも出なくてもそれはそれでよしと思っていたのです。はじめはあまり出なかったので、買い置きしていた人工乳は活躍してくれましたが、2ヶ月を過ぎる頃には母乳だけで十分になっていました。息子が13ヶ月になった今、ようやく夜中の授乳をやめることに成功し、今度はいつ授乳をやめるか考えているところです。お酒や洋服が好きな私は、以前はすぐにでも卒乳して、ワインや(授乳しやすい前開きの服以外の)おしゃれを早く楽しみたいと思っていましたが、授乳中の安心しきった我が子の顔を見ると、もう少し後でもいいか、と思ったり。

この授乳に関しても、人によって、文化によって、考え方が違うようです。フィンランドで助産師兼ラクテーションコンサルタント(母乳育児指導者)のヨハンナが毎週開いていたMilky morningというセッション。月曜日の朝、夜中の授乳で寝不足ながらも、いつも愛情たっぷりで接してくれるヨハンナの顔を見ると元気が出るので、毎週欠かさずに参加していました。授乳しながら、やはり同じように寝不足の新米ママたちと話したり、ヨハンナのアドバイスをもらったりしていたこのセッションは、私にとって精神的に大きな拠り所になっていました。ある日、そんなセッションに、スラリとした美しいフランス人ママがやってきたのでした。

「私は母乳で育てていないのだけれど、(フィンランド語でなく)英語で他のママたちと話したかったから、ヨハンナに連絡して参加させてもらうことにしたの。」と彼女。ヨハンナは「このセッションは母乳育児のママの集まりだけれど、いろいろな事情で母乳で育てていない人もいるから、それは全くかまわないのよ。あなたが母乳で育てていない理由を聞かせてもらってもいいかしら?」といつも通りの温かい笑顔でたずねました。

フランス人ママは「理由という理由はないのだけれど、パリではほとんどの人が母乳育児はしないから、なんだか当たり前すぎて。私の周りでも、退院と同時に止める人が多かった。一番長い人でも、母乳をあげるのはせいぜい1週間かなぁ。」と答えました。これは『フランスの子どもは夜泣きをしない』という本にも書いてあり知っていたのですが、母乳育児を目指して躍起になっているママがいる中で、そういう選択肢もあるのね、と思わざるをえませんでした。彼女いわく「フランスの産休はフィンランドのように長くないから、職場復帰に備えての準備の一環でもある」とのこと。確かに母乳をあげる癖がついていたら、止めるのに時間もかかるから、すぐに仕事に復帰する人にとっては賢い選択なのかもしれません。

スペイン人の友だちも、「第二子が生まれたら、今度は母乳はあげずに人工乳だけにするなぁ。人工乳だけとか、混合にしている赤ちゃんの方がよく寝るんだもの。夜中の授乳は疲れるしね。」と。確かに人工乳を飲ませている赤ちゃんの方がよく寝るというのは一理あるように思います。母乳だけで育てている赤ちゃんは、朝まで起きずに寝るようになるまでにかなり時間がかかるよう。(周りのママ20人ほどに聞いてみた結果)

最近仲良くしているグループでも、たいてい4ヶ月から半年で母乳をやめたママが多い。赤ちゃんが突然母乳を拒否した、母乳が出なくなった、以外の理由を聞くと、「だって大変なんだもの。特に夜中あんなにしょっちゅう起こされちゃ、こっちの体がもたないじゃない?だから昼間も夜の授乳もやめたの。」と。一歳で夜中の授乳を止めるまで、2、3時間おきに起きる息子に授乳をしていたことを話すと、みんなびっくりを通り越して呆れた表情を隠しきれず。もしかしたら、そんなにがんばらなくてもよかったのかもしれないけれど、なんとか乗り越えた夏、少しは自分を誇りに思ってもいいかな。