フライリールで、
自分が一番秀逸なデザインだと思うのは、STHリールだが、
スピニングリールで、世界一の外観のデザインといえば、
昔の、クラシックなミッチェル408と308だなあ、と思う。

 

ミッチェル408

ホディの赤い「garcia」シールは、アメリカではついていて

ヨーロッパで販売された製品には、ついていなかったらしい。

garciaシールのある方が408らしくてカッコイイ。

(ベールへの糸がらみ防止のため、

 ベールのラインローラー下に、百均のガムテープを巻いてますw)

 

 (自分の中では、フライリールNo.1デザインのSTHリールと

  スピニングNo.1デザインのミッチェル408)

 


そんなことを言ってしまうと、アブのカージナル愛好家の人には
さんざん、ブーイングされるとは思うが
機能、性能の優劣はともかく
デザインだけについては、

カージナルのゲルマン的な質実剛健、質素さと無骨さも男らしいけど、
やっぱり、ミッチェルの方に軍配だなあ、と思う。
自分にとっては、永遠のグッドデザイン。


その良さを、もし自動車にたとえたら、
例えば、いすゞの名車、117クーペみたいな
華やかさは控えめなのに、なぜか惹きつける流麗なデザインというか


そういえば、117クーペは、イタリアのジウジアーロのデザイン。
ミッチェルはフランス、
STHリールは、アルゼンチン、ということで、
ラテン系の白人の奴らが造りだす道具のデザインというものは、
なにか人を惹きつけてやまない魅力をもっているような気がする。


しかし、まてよ、日本にだって


セリカリフトバックや


サバンナRX-7や
240Zがあるじゃないか!!
…って
車の話じゃなかった。

しかし、なんだって、今どきの車は不細工なツラばかりなんだろう。

どうせ、自分はマイカーはもてないから文句つける意味ないのだがw



ミッチェルの408と308の大きな違いは
外観のカラーと、内部のドライブギアのギア比の違い
左408は ネイビーブルー(後期はブラック 中期はスカイブルーもある)

      ギア比が5.5:1

      (ギア比は、ハンドル1回転あたりの、ローターの回転数

       概ね5:1以上から高回転の部類)
右308は ブラック で
      ギア比が古い308は、4.3:1 後期は5:1





408の心臓部のスパイラルベベルギアとプラナマチックギア

プラナマチックギアは、

糸を巻き取る際の、スプールが上下する時の挙動を、

糸噛みが少ないクロス巻きと

飛距離の伸びる平行巻きの、

2つの動きを、交互に繰り返すというスグレもの。

こんな発想を製品化してしまうフランス人はやはりスゴイ!!
見た目は複雑そうだけど
実は、部品の分解と組み立ては

機械オンチの自分でさえ

意外と普通にできる所もニクイ。

しかし、ミッチェル本体の内部もスカスカで

エンジンルームに

SOHCのエンジンがドーンとあるだけの

大昔の車みたいでカッコええなあ。


自分がミッチェルのクラシックタイプの408や308を使いだしたのは
今から、15年前くらいからに過ぎないのだが、
自分は、渓流釣りでは、基本フライでの釣り方がメインで、
ルアーもやりたくても、フライがあまりにもお金がかかるもので
ルアーでそろえることができた道具はチープなモノばかり。
そしてフライでは攻めきれないような渓相の川やポイントでだけ
限定的にルアーにスイッチして釣りするような感じだった。


しかし、「釣りキチ三平」をリアルタイムで週刊少年誌で愛読していた
バリバリ昭和の小僧であった自分には
かつての「ミッチェル」や「アブ」というブランドには
まるで黄門様の印籠ぐらいの権威があり、
あこがれの対象だったので
ミッチェルというブラントについては、
プリビレッジ10という機種のスピニングだけは、
当時約5000円くらいで安く手頃だったので、買ってたまに使っていた。


そして、ある日職場の同僚が、一度渓流でヤマメ釣ってみたいというので
一緒に山梨の渓流に出かけて
その同僚にはルアーを教えて
自分はフライで一緒に釣りあがったのだが、
その同僚が、次から次へと良型ヤマメをフッキングさせては
次から次へと、あえなくバラシてしまうという行為を

延々と繰り返すので
いてもたってもいられず、
自分も速攻でタックルをルアーにチェンジして
一緒にルアーで釣りながら、ルアーのキャストや流し方、
魚をかけた後の取り込みとか、を渓流釣り初心者の同僚に教えていくうちに
ああ、やっぱり、ルアーもいいなあ、と再認識。
そしてその時、久々に使ったミッチェルのプリビレッジ10も
改めていいなと思い、
ルアーロッドには、贅沢できないけど、
リールだけなら、何か個性的なものが欲しいなあと思い、
たまたまその時期は、ミッチェルの308・408が
ヤフオクの中古市場では、デフレ状態で安いのが多く
308だったら、後期の台湾製のものが

5000円+送料ぐらいで入手できたので
早速、購入して渓流でつかってみたら
自分程度のルアーの腕には、これで十二分に使えるのが分かった。


そして、竹中由浩さんのブログでミッチェルの事を調べていくうち
ミッチェルは、使い勝手がいいだけでなく
メンテナンスや改造の点でも奥深くて
いつの間にか、ファンになってしまった。

まだ15年程度しか、自分は使っていないし、
自分はルアーマンでもないので
たいそうなことは言えないと思うが
ミッチェル408・308の
インスプールクラシックタイプのいい点は

1、飽きの来ないデザイン


2、ほとんどがアルミ中心の金属だけでできてるのに
  意外と軽い。(220~240グラム前後)


3、キャスト時に開いたベールは、

  ハンドルさえ回せば、ほぼ100%自動で戻る。
 (ペールスプリングをグリスアップしなかったり
  ベールの形状が歪んでいたりすると、スムースに閉じないことはある。)
  今の釣りのように、ベールを手で戻す動作がなく、
  キャストした後に、すぐにリトリーブの体制に移れる。
  
4、各部品が、別機種との互換性が高く、良心的。
  308と408同士で、
  同じ年代頃に製造されたものなら、その部品を流用できることが多い。

    (★ただし、ハンドルを巻く手が逆になる309と409とは

   互換できないものがあるので注意。)
  308と408との間なら
  スプール、ベール、ベールスプリング、ドライブギア、ピニオンギア、
  ハンドル、ボディ、その他もろもろ
  動作の中心となる部品はスイッチが可能。
  (ただし、中には製造時期がかなりずれている場合、

   サイズが合わずスイッチできない部品もある。)
  ダイワや、シマノは、あれだけたくさんの
  スピニングリールを世間に出していながら
  部品の互換性については無頓着というか
  むしろ他の型品を買わせるために
  あえて、互換性がないようにしてるとしか思えない。
  ★しかし、ミッチェル308・408同士は、互換性があるがゆえに
   中古品では、308に408の部品を組み込んだり
   その逆もあったり
   見た目408なのに、中身は308のスペックだった
   ということが十分ある。
   完全新品の、在庫保存版でない限り
   完全オリジナル商品というのは保証できない。

5,構造がシンプルで、メンテナンス、修理が楽。
  自分は、ラジコンのプラモデルでさえ
  まともに動くように作れたためしのない、

  アナログ人間で、機械オンチだが、
  そんな自分でも、メンテやチューニング、
  改造が比較的、楽にできる。
  本体内部の、ドライブギアやピニオンギアに
  注油する時なんて、本体裏のネジ一つを
  10円玉でさっとこじ開けただけで
  すぐ心臓部にたどり着けるのがすごい!

(左側の、赤いビスを10円玉で開けてカバーをとるだけで

 右側のように、本体内部のメインのドライブギアに到達。

 ドライバなしでこんなこと、今のスピニングリールでは不可能。)


6、ハンドルが、本体ギアに、ねじ込み式でありながら
  ワンタッチハンドルと同じようにたためる便利さもある。
  (ダイワの古いスピニングのワンタッチハンドルだと
   ハンドルの軸の、本体のギアへの差し込みに微妙なぐらつき感があるが
   ミッチェルはねじ込み式でしっかりと固定される。)

左側が正常時のハンドル

右側が、ハンドルを内側に変えた状態。

ハンドルを内側に倒して

 

パックロッドのガイドをに糸を通してセットしスナップをつける

そのまま、側面がフルにジッパー付きのロッドケースに収納し

そのままリュックの側面に収納。

釣り場についたら、すぐに臨戦態勢に入れる。

あるいは、ルアーを最初にやって

別の釣り方をやってからルアーにまた戻るようなときに

こんな収納は効率的。



ミッチェルの悪いところをあげていくと
1、ベールアーム周りで、どうしても糸がらみが、発生しやすい。

  これはミッチェルを現場で使う時に起こる、

  一番の致命的なデメリットで、
  これはインスプールという構造のスピンニングでは
  宿命みたいなもので
  308と408も例外じゃない。
  (カージナルがそうなのかは使ってないので分かりませんw)
  特に308の、後期の、分割型ベールで、
  ベールワイヤーを、ベールアームに固定するためのネジが
  ベールアームから飛び出ているタイプのものは特に絡みやすい。

  糸からみ防止には、いろんなチューニングが必要。


2、開いたベールは、絶対に、

  手で直接つかんで、戻してはいけない。
  これは、今のリールを使いなれている人には注意が必要で
  308・408はインスプールという構造上、
   手で無理やりベールを戻すと
  ベールを、一時的に開いた状態で止めている

  トリップレバーの形が歪んでしまい
  使えなくなってしまう。

  どうしても、手でベールを閉じたいときは
  ベールアームの左下に飛び出ていて、
  ベールを、一時的に開いた状態で固定しているトリップレバーの先端部を
  指で左方向に押せば、

  トリップレバーの、ベールロックは解除されて

  ベールはもとに戻る。
  しかし、この操作は、瞬時にできるものでもないので
  キャストの度に、これをやっていたら、おそらく釣りに集中できない。
 

3、ベールスプリングが折れる。
  替えの品は、入手も簡単でなく、価格も安くはない。
  (けど、安いスプリング素材を買って自作する手段もある。
   自分は、東急ハンズで、スプリング素材を買って
   自作スプリングを作り、現在試用中、
   素人作でも、今のところ十分使えている。)

 

4、古い時期のものはリールフットが大きすぎ、太すぎて
  ロッドによってはセットできない。

  製造時期にもよるが、
  ボディーのミッチェルのロゴが、本体表面に刻印のものは
  フットがでかすぎるのが多い。
  ロゴがプラスチックのバッチでボディーに取り付けられたものは
  フットがほぼノーマルな大きさになっている。

  (それでも少々大き目のものもあるよう。)

  きつすぎる場合、リールフットをやヤスリで削って

  サイズをあわせるというチューニングが必要になり

  フット部のオリジナルの塗装が一部はがれてしまい

  見た目上、ちょっと残念。

 

5、リールを巻いたとき

  ストッパーギアのカリカリ音がするので、

  管理釣り場や複数人で渓流に入るときは
  そのカリカリ音のせいで、他人に気が引ける。
  サイレントのタイプもあるみたいだが、品数はレアなようで、

  ヤフオクなど中古市場で、見かける機会はかなり少ない気がする。
  ギアのストッパーを、OFFにしてしまえばサイレントになるが
  これはローターが逆転した時に
  ゆるんだラインが、ローター下の細い首の部分に
  簡単に巻き付いてしまい、トラブルになるので自分は勧めない。
 
6、古い時期のモデルは、ローターの塗装が弱く、
  特にローターの上部の方が剥げやすくて
  まるでサメがかじったかのようなギザギザ模様で塗装が剥げる。
  とくに408のネイビーブルーのローターは剥げやすい。
  (自分は、ローターの再塗装を模索中。
   アスペンのラッカーと、アクセルのウレタンコートを使って再塗装してみて
   それで傷はついても色までは剥げにくい塗装が今のところできているが

   塗料の色合いをオリジナルに近づけるのは、かなり努力が要る。)


7、メインのドライブギアには、繊細で壊れやすいものか
  ギアのゴロツキ感がひどいものがある。

  308,408のドライブギアは様々な形状とギア比のものがあるが、
  408の最高級の、スパイラルベベルギアは
  回した感じは、ミッチェルの中で一番シルキーでスムーズだが
  いざ大物が掛かったとき、ドラグを閉めっぱなしの状態で魚と戦うと
  ギアが逝ってしまうケースがあるので
  雷魚やナマズ、鯉などと戦うときは注意が必要。
  

  また後期308のギア比5:1のフェースギアと

  後期の黒ボディの408の5.5:1のフェースギアで
  アルミ製のギアは、最悪で、

  リールを巻いた時の、ギアのゴロツキ感がひどい。
  いくら使い込んでもゴロツキ感は消えない。

  グリスを山のように盛ってもダメ。
  (しかし、亜鉛製のフェースギアは、ゴロツキは少ない
   真鍮製は、すこーしゴロツキ感あるが、アルミ製より全然まし。

   ★そして同じアルミ製でも

    形状がベベルギアの、初期308のギア比4.3:1のギアと

    中期308のギア比5:1のものは、ゴロツキ感はないのに

    アルミのフェースギアだけゴロついてしまうのは

    やはりギアの形状のせいなのか…)

左がゴロツキ感がひどいアルミ製のギア比5:1のフェースギア

右はゴロツキは少ない亜鉛製のギア比5:1のフェースギア

亜鉛製のほうが光沢のないくすんだグレーの色合い。

 


8、ローター下の、ボールベアリングが、少し騒々しい音が鳴るものがある。
  ミッチェル308・408は、
  ベアリングが、ローター部に一個だけという潔さなのだが
  そのベアリングが、グルグルと音がなるものがたまにある。
  実釣では、問題ないのだが、気になる人には気になると思う。
  308と408に使われているベアリングは
  自分の素人判断では、耐久性はあるようで、回転に支障はなく
  粗悪な品ではないと思うが
  一度完全にばらして、一から組みなおしてみたが
  ベアリングのグリグリ音は直せなかった。
  ここは専門家でないと解決はムリみたい。
 

9、ギアストッパーのレバーが緩くなりやすい。
  反転防止のストパーのON/OFFのレバーを
  本体内部で圧力をかけている平たいばねのような部分が
  通年劣化していき圧力が弱まると
  レバーの固定自体がかなり甘くなってゆるくなる。
  ミッチェル好きの人の中に

  魚を釣るまではストッパーOFF、釣れたらONにするという
  使い方を推奨する人がいるが
  これを頻繁に、繰り返していると

  ストッパーレバーがすぐグラつくようになるし、
  本体内部の、ストッパーレバーへの圧力ための板バネは

  本体に、リベット止めで完全固定のため
  外して交換するのは、まず容易なことではないので
  メンテナンスの時以外は
  ストッパーは基本ONのままの方が長持ちすると、自分は思う。

 

  また、ストッパーが、ボディ外側下部に位置しているので、

  リールを持ちながら、河原で転んだ時とかに、

  ストッパーが石や岩に当たったら、簡単にはずれてしまい

  どっかに飛んでしまい、無くしてしまう、ということがある。

  ストッパーの位置は、内側のリールフット側にあるように

  設計して作ってくれていたら、

  そういうことがないのになあ、なんて思う。

 

10、ベールワイヤーとベールアーム一体型のベールの

  ラインローラーの固定用のネジが、さびて固着し 

  ベールアームから外せなくなる。

  そうすると古い一体型のベールのラインローラーは

  タングステンカーバイドの固定ローラーで

  ラインの糸溝ができてしまった場合に、

  固定ネジをはずして、

  固定ローラーの糸溝のできてしまった面を

  ラインの当たらない上側にずらすようにセットし直して

  対処すべきなのだが

  それを押さえているネジが固着してしまうと、ほぼどうしようもない。

  一体型のベールで回転式でも、これがおこると

  ラインローラー部の交換ができなくなってしまう。

 

11、同じ個体で、右巻きと左巻きのチェンジができない。

  左手で巻くのが、308と408

  右手で巻くのが、309と409

  とかっちり決まっていて両用タイプはない。

 

12,プラスチック製の浅溝スプールは耐久性に欠ける
  今主流の浅溝スプールを当時からミッチェルはだしていたが

  浅溝タイプスプールは、アルミではなく、樹脂製で、

  通年劣化で、ヒビが入ってしまうものがあるみたい。 

 

13、初期のベールワイヤとアーム一体型でラインローラー固定式のベールは

  銀メッキ塗装が弱く、はがれやすい。

 

14、ローターで、ベールをローターに取り付けするためのネジ穴が

  ベールスプリング側にひとつ、

  その反対側にひとつ、と2か所あるが、

  ネジを差し込む部分の、メス側の内側のネジ山がつぶれやすく

  これをつぶしてしまうと

  ネジがしっかりと完全に閉まらなくなる。

  これも痛い問題で、メンテナンスのため、ベールを脱着する際に

  固定用のネジを、少しでもナナメに傾斜した状態で、ネジを回し込むと

  簡単にメス側のネジ山をナメてしまい、ネジがしっかり閉まらなくなる。

  この現象は、ベールワイヤー&アーム一体型ベールがついていた頃の

  408と308のローターに多い。

  これに関しては、メンテに慣れてくると、

  ついついやってしまう事で、

  こうなった後の対策は今も模索中。

 

15、ルアーをキャストして、リールを巻いているときに

  ラインが、スプールの先端のワンタッチプッシュボタンに

  らせん状にからまってしまい、トラブルになるときがある。

  (特に、308Aのスプールで、円筒状のプッシュボタンの物は

   そうなることが多い。) 

 

 

    
 こうしてみると、欠点の方が、圧倒的に多いように思われるが(笑)
 でも、釣り場に持っていきたくなるのが
 やっぱりミッチェルになってしまう。
 ロッドだって
 フェンウィックの、あのグリップに

 「鷲のマーク」と、クロス巻のあるロッドだと
 道具を見てるだけで魚が釣れそうな気がするし
 道具の外観がもたらす、釣りへのモチベーションの効果って
 意外と馬鹿にできないものだと思う。

 

 さて、今晩は、このグッドデザインリールを手に取って眺めつつ

 酒でも飲もうかな?