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★DNARかフルコースか★

MDS（骨髄異形成症候群）で10年以上も治療を続け、もう効果のある治療はなくなってきたという70代女性患者さん。

これ以上の治療変更は、体力的に難しく、治療によって急変の危険もあります。

本人は、

「十分、悔いなく治療もしたし、やりたいこともやったので、安楽に最期を迎えたい」

と何度も看護師に話していました。

助産師をしている次女さんは、母親の意見を尊重し、DNAR（患者の尊厳を保ち、心配蘇生を行わないこと）を希望されました。

次女さんから、緩和ケア病棟への転棟はできないかと提案がありました。

病棟は、次女さんの考えを尊重し、緩和ケア病棟の面談申し込みを予定しました。

しかし、次女さんから電話連絡があり、緩和ケア病棟転棟を保留にしてほしい…と。

長女さんが、大反対しているので、説得したいとのことでした。

しかも、長女さんから、医師との面談をしたいとご希望もありました。

急いで日程調整を行い、

姉妹が揃った状態で、医師との面談を行いました。

長女さんは、最愛の母親の死が受け入れらないようでした。

長女さんは

「まだ、亡くなるような年齢じゃないですよね？！出来る治療があるなら、リスクが高くても試さないと納得できませんし、治療中に急変しても、全力で命を助けてほしいです。諦めるような発言はやめてほしい。そして、母にも治療を強く勧めて下さい。」

と医師と私に言いました。

そうですよね。

70代って、まだまだ若い。

大切な方には全力で生きてほしいというお気持ちはよく分かります。

でも

次女さんは、お母様の精神的不安を心配し、かわいそうと涙を流すことも多くなりました。

私たち医療者も見ていて辛かったです。

結局、治療途中で寝たきり状態となり、腎機能悪化が著明となり、治療は中断されましたが、長女さんの強い治療で、透析導入となりました。

透析中に体力の限界となり、

お母様の「もうやめたい」のひとことで、長女さんも透析と抗がん剤治療を断念することに納得され、急変時のフルコースもしない方向となりました。

かなり苦しまれた後に、１週間後に息を引き取りました。

長女さんは、医療用麻薬の使用も最期まで拒まれていて、次女さんの説得も困難でした。

親を思う気持ちって、人それぞれ考え方があるんですね。

どんな状態でも生きてさえいてくれれば良いと思うのか

患者の気持ちを尊重して、延命をせずに苦痛を取り除いてあげたいと思うのか。

はやいうちに兄弟姉妹で話し合うことも必要だと思います。

親の命について…兄弟姉妹の争い③